そんなわけで、
ひとつの区切りである、ある意味では締めくくりと呼べる「ハッピーエンドアルバム」Coming Back Aliveをリリースし、Shinryu師範の脱退もあって、二人編成 “Duo Style”での演奏活動をアナウンスし、心機一転、これから新しいステージに進み、新しい活動を始めようとしている、僕たち伊万里音色。
色々な思いはあるのです。
音楽シーンをめぐる今の世界の状況。ロックミュージックの現在、過去、未来。
キリスト教をめぐる状況。世界の政治的な状況。
でも、ひとつの大きな締めくくりを迎えたことで、僕たちは、またひとつ自由になって、新しい音を鳴らしていこうと考えています。
あれは、2022年。久しぶりに参加したアメリカ西海岸でのThe Extreme Tour。それを終えて、日本に戻り、バンドでミーティングした時に、こういう思いがあり、話し合った記憶があります。
The Extreme Tourで、ロックを通じ、アメリカで市井の人々に、等身大の目線で愛を伝える経験をした。
それは非常に濃密な経験でしたが、同じように、この愛を、日本のオーディエンスにも伝えたい。で、あれば、僕はやはり、自分の本当の気持ち、本当の愛を伝えるためには、日本語の曲をやりたい。僕らが昔、Imari Tonesとして書いた、クリスチャンバンドになる前の、純粋なティーンエイジャーの気持ちを伝える日本語の楽曲を。
僕たちは、クリスチャンバンドになって以来、(厳密には”Japanese Pop”アルバムの制作時に、Yプロデューサーの薫陶を受けて世界を目指した事が理由なのですが)、基本的に海外に向けて、日本のローカルバンドでありつつもインターナショナルなオーディエンスに向けて音楽を作り、活動している背景があります。
でも、ご存じの通り、日本の音楽状況というのは、世界とは違うものなんですね。日本の音楽状況、音楽市場というものは、非常に独特で、世界の他の場所とは違うユニークなものです。リズムやメロディだけでなく、感情的な面、文化の面、そしてやはり言葉というものの違いが大きい。日本語とはそれほどに独特の高度な言語だから。
逆に言えば、欧米のロックミュージックと、日本の独自の音楽シーンの両方を知ることができる日本のロックファンは幸運だとも言えるわけです。僕らもその両方のルーツを知っているからこそ、独自の音楽が作れるのだと思っている。
どちらにしても、海外のオーディエンスを意識してバンドを構築してきた僕たちにとって、本当に日本のオーディエンスに自分たちのメッセージを伝えようとすれば、また別の形を取らなければならない。
もちろん、「海外向けの本格的なハードロック、日本では珍しいクリスチャンヘヴィメタル」といった形態のままでも、お客さんを楽しませることは十分にできるのですが、本当のことを言えば、もう一歩踏み込みたい。
しかし現実には、「インターナショナル向け」のバンドと「日本国内向け」のバンドの両方の体制を、同時に作っていくことは困難でした。現実にはバンド活動をしていく上で、様々なリソースが足りないからです。いったい、バンドを構築し、維持するのに、どれだけの労力がかかると思っているんだ!! (笑)
けれど、今回、Shinryu師範の脱退をきっかけに、”Duo Style”での活動を始めようかと考えた時、それは今までにやれなかった楽曲をやるための良いきっかけでした。
今こそ、ずっと鳴らしたくて鳴らせなかった、若い頃に書いたあの曲を、再び鳴らすべき時だ。あの曲を、また歌う時がやってきた。いや、今だからこそ、やっと歌う時が来たのです。
それは、クリスチャンバンドになる前に書いた曲、作った曲ですから。
じゃあもう、クリスチャンバンドとか、関係ない。
そして、それはヘヴィメタルというスタイルでもない。
もちろん、それは大きな意味で言えば、ハードロックであり、ヘヴィメタルでもあるのだけれど、本来、僕らはあまり形にはまらず、自由なスタイルで楽曲を作っていくバンドだった。
自由にやろうと思うんですよ。
この二人の形に戻ったからには。
もう、「クリスチャン」という枠にもこだわることはない。
ヘヴィメタルにこだわることもない。
そしてまた、バンドという形にもこだわる必要がない。
その方が、より自由に、より本来の姿に近い形で、伊万里音色の音楽を伝えられるんじゃないかと思うんです。
徹頭徹尾、こだわり抜いたクリスチャン・ヘヴィメタルを鳴らした後で、青春時代の音に戻ることは、これらの日本語の楽曲をふたたび演奏することは、ミュージシャンとして死ぬまでに演っておきたいバケットリストの中に入っていた事柄でした。
今、それを始める良い機会ではないか。
そう思ったんです。
そういうわけで、ただのローカルバンドです。
ほのぼのと夫婦漫才をやるだけの、ちょっと変わった音楽を演奏する、お気楽なロックユニット。
(そういえば、麻生キリスト教会で昨年共に活動した「ステリーナガールズ」さんに憧れて、彼らを見習って二人でやってみよう、みたいな気持ちもありますね。)
クリスチャンバンドであることをやめるわけではない。
また、信仰なんてものは、捨てようと思って捨てられるようなものではない。
人は神から目を逸らしたとしても、神が人を見捨てることは決してないからです。
けれど、いわゆるクリスチャンの枠には、もうこだわらなくてもいいかもしれない。
本当に愛を伝えようとするのであれば、なおさら。
人は人生の中で、それぞれ使命を持っている。
何も教会に通って真面目な人生をやることが、使命とは限らない。
自分の人生の旅を自由に、懸命に生きて、自分にしか出来ないことを成し遂げる。
使命というのはそういうものではないか。
僕らに使命があるとすれば、愛を伝えることです。
愛には、形なんてない。
けれど、より本来の形で、より自分たちらしく、本当の自分たちの思いを、届けられる気がするんです。
まあ、ライブの持ち時間は限られているから、あれもこれも全部やるのは難しいけれど、ちょっとずつ、ね。
ヘヴィメタルの楽曲をやったとしても、むしろこれまで以上に、僕たちならではのヘヴィメタルの本質を、伝えられるんじゃないかと思っているんです。
僕たちの本当の音楽、僕たちの本当のメッセージは、ここから始まる気がしています。
(もちろん、良いドラマーさんに出会えたら、またバンドでやりますよ! 心当たりあったら連絡くださいね😀)