月曜日は+/-{plus/minus}の来日ライヴを渋谷O-Nestに見に行った。
今、この文章は自宅でRushのDVDを見ながら書いている。
ロックバンドには、
たとえば3人なり4人のメンバーで何ができるかという命題が、
それなりにあると思う。
それはたとえばこの代表的なビッグネームであるRushなんか、典型的な例で、
Geddy Leeがベースとヴォーカルとキーボードとペダルと兼任するライヴは有名だけれど、
それはこのplus/minusにもいえる。
で、昨夜のライヴなんだけれど、
まずは前座のYomoyaさん。
そもそもプラマイのライヴは、昨年の10月に見た際にも、
同じくYomoyaさんが前座で、
一年以上ぶりに見たんだけれど、
結構曲を覚えていてびっくりした。
あー、この曲、去年も聴いたなあ、つって。
YOMOYAさんは、
どちらかというと、
オシャレ系というのか、
ポストロックオルタナ系というのか、
たとえば僕がすれ違って以来、
なんとなく贔屓に見守っている
Mothercoatさんなんかと、
同じようなフィールド、ジャンルで
やっている人達だと思うんだけれど、
去年見たときよりは、印象よく、少し理解できた。
去年、プラマイを二晩連続で見たんだけれど、
O-Westでやったときに、
Band Apartさんと、nhmbaseさんを一緒に見たんだけれど、
そのふたつは、
もう、3秒もたたずに、
無理、っていうくらい、笑ってしまうくらい、
僕には無理だったので、
特に僕はこの手のジャンルの音楽は、
あまり信用はしてないんですが、
今回のYOMOYAさんは、
昨年見たときよりも、
少しだけ好感を持ってみることができた。
こうした、オシャレ系ロックであっても、
その限定されたフィールドで表現して勝負することの、
大変さが、なんとなく感じ取れたからかもしれない。
しかし、曲が進むにつれて、
だんだん、やはり、無理、って感じになってきてしまった。
これはたぶん予想だけれど、
Mothercoatさんのステージを見たら、
たぶん僕はこれほど、「無理」とは思わないだろう。
その違いは何なのか。
そして、プラマイも、
基本的には、ポストロック、オルタナ、シューゲイザーとか
そっちに分類されるけれど、
YOMOYAさんが無理でプラマイは全然オッケーな、
その違いは何なのか。
その違いは、
そのへんは面倒なので書かない。
しかし、何が大変かと思ったかというと、
下北沢あたりのライヴハウスでも、よく見られる、
日本のオーディエンスの、特有の、
とてもさめた反応、
たとえば、これが、
もっとバカ丸出しの王道のインディーズロックだったり、
あるいは、メタルだったりしたら、
日本のライヴハウスであっても、
お客さんの反応はもっと熱いのだ。
そんで、演者の方も、もっとバカ丸出しで熱いのだ。
この手のジャンルの人達は、
基本的に、そういうバカ丸出しのパフォーマンスができない。
言い訳のようなコミュニケーションしか存在しない。
その中で、表現して勝負していかなければいけない大変さを、
ちらっと、少しだけ、思った。
で、プラスマイナス。
プラマイのライヴを見るのは、
3度目、というか、4本目だ。(昨年2本見た)
以前にも、いつも書いているけれど、
プラマイとの出会いは、ちょっと自慢げに書くと、
2007年の、オースティン、テキサスで行われたSXSWでのライヴだった。
僕はbloodthirsty butchersが好きだったから、
ブッチャーズと、何度か共演しているプラスマイナスのことは、
名前だけは聞いていたのだけれど、音はチェックしてなかった。
で、米持師匠と一緒に行った、2007年のサウスバイサウスウェストで、
僕は、プラマイを、まったく予備知識なく、見たのだった。
それは、もう、とんでもない衝撃だった。
もうそれなりに結構歳ではあるけれど、
その2007年3月に体験した、プラスマイナスとの出会いは、
米持師匠との旅路の最終章で見た啓示として、
SXSWというイベントで見たものと相まって、
やっぱり、それなりに、僕の人生を変えてしまった。
だって、
やつらのいるところに、僕も行ってみたい、って
そう思うよな、やっぱ、普通。
で、プラマイに関しては、
昨年、2008年の秋に、来日してくれたので、
東京のショウを二度、見て、
そんで、今年も、また来日してくれた。
実際、今、プラマイを、一番頻繁に見れるのは、
世界の中で日本がいちばんだと思う。
そう思うと、日本というのはやっぱなかなか恵まれた環境だ。
今回、プラマイは、
本来、メンバー3人にサポートベース1人、という編成のところ、
ギター&サブヴォーカル担当のPatrick Ramosが来れないということで、
メンバー2人とサポートベースという、少し足りない編成でやってきた。
だから、いったい、どういうステージ、どういう演奏になるのか、
興味深かった。
Patrickが居ないということは、
MegalomaniacやOne Day You’ll Be Thereをはじめとする、
必殺曲のほとんどが、できないということを意味するからだ。
僕自身の事前の予想では、
Patrickがあまり絡む必要のない、
1stアルバムの曲をたくさんやるのではないかという予想と、
あるいは、しょせんB級インディバンドの悲しさで、
普通に足りないパーツの、足りない音になるのではないかという予想
(それはそれで、音の秘密が見れて、興味深い)
の、両方があったが、
結果的に言うと、
その予想は両方とも当たっていた。
オープニングは1stからの”All I Do”だったし(感激)
1度目のアンコールでQueen Of Detroitをやってくれたのも感激だった。
記憶が定かでないがBevery Roadをやってくれたような、いや気のせいか。
えっと
4thからは、
Snowblindと、Unsungをやったでしょ、あとMarinaもやったか。
3thからは、
Fadeout、Steal The Blueprints、
二度目のアンコールでIgroing All The Detoursをやったでしょ、
2ndからは、
She’s got your eyes
Trapped Under Ice Floes
をやったでしょ、
それから、既発のEPからは、
僕の大好きな(たぶんやるんじゃないかと思った)
Far Into The Fieldsをやってくれたのが嬉しかったし、
あとは本編の最後ではI’ve Been Lostもやってくれた。
カバーアルバムに入っている、
ブッチャーズの「ゴキゲンイカガ」をやってくれたり、
Moolsの「いるいらない」をやってくれたり。
あとは今回の来日記念EPに入っているやつをいくつかやったり、
していたのかな。
あれだ、2ndのアメリカ盤/ドイツ盤に入っているCutting Outとかやってくれたんだ。
そういう感じの、予想どおり、レアな曲を結構やってくれました。
一部の曲では、Patrickがいなくとも、
ものすごい破壊力を依然として持っていて、
このバンドの底力を感じた。
それは、Fadeout、Steal The Blueprints、I’ve Been Lostなどで顕著だった。
そして、一部の曲では、やはり、Patrickが居ないことによる、まるで未完成の製品を見せられているような感覚もあった。
もちろん、それでも、十分に凄かったし、それに、Patrick抜きのアンサンブルだとこうなるというのが見れたのは、とても興味深いことだった。
Patrick不在の穴を埋めるため、
やはり、それなりにサンプリングの音が使われていた。
本来の3+1の体制のときも、
サンプリングは多少使っていると思うんだけれど、
やはり、僕は個人的には、こうしたサンプルやあらかじめ録音されたトラックは、あまり使いたくないなと思う。
しかしレアな曲をたくさんやってくれたので、レア感のとてもある貴重なライヴだった。
初めて見たときも、この日見たときも、強く思ったのは、
やはり、
James Baluyutのギターの音の良さ。
JazzmasterをFenderにつなぐという、よくある組み合わせなんだけれど、
嘘みたいに音がいい。
このギターサウンドで、僕は8割がた、もう全部もってかれてしまう感じだ。
僕にとっては、+/-の真骨頂は、このJames Baluyutのサウンドに尽きる。
後で足元をチェックすると、
どうやらFulltoneのOCDが肝になっているようだ。
あとは同じくFulltoneのDistortion Pro、歪みとしてRAT、あとはアナログディレイが二台、Reverbもあったけど覚えてない。
しかし、2007年にはFulltoneのOCDはまだ持っていないはずなので、機材云々ではなく、やはり、生まれ持った音なのだと思う。
そして、見るたびに思うが、Chris Deanerのドラムが、もう凄いなんてもんじゃない。
昨年のツアーブログで、台湾公演の際に、日本のレーベルのブログに「ハイハットが裏返った。ありえない。」と書かれていた。
ハイハットが裏返る?
なんというか、言っている意味がわからない。
しかし、それくらいパワフルなドラミングなのだ。
そして今回も、序盤にして、ハイハットがぶっ壊れて必死に修復していた。
この熱すぎるドラミングを、うちのジェイクにも見てほしいと、思う。
ていうか見せればよかったな。
YouTubeに無いかな。
プラマイは変拍子をかなり多用する。
その変拍子を、とんでもないパワフルなこのChris Deanerのドラミングで、ありえないレベルと熱さで演奏する。
変拍子ゆえに、客席を見ても、踊ってる人はほとんどいない。たぶん踊れないんだと思う。
頭の中で変拍子をカウントして踊っている僕のようなやつ以外は(笑)
しかし、僕にとってだけれど、
今回のPatrickの居ない、3人編成のplus/minus、
さすがのプラマイといえども、
Patrick抜きでは、やはりところどころに、
サンプルの使用、音の厚み、音の不足、コーラスの厚みなど、
限界を見ることができた。
これに、僕は、逆に触発された。
ここからは自分のことだけれど、
僕は伊万里音色で、
今までも何度かあったように、
先日もRushと比較されたけれど、
3人でやれるロックの限界の極みにたどりつきたいのだと、
ここ2年くらい、正直、僕は作る曲は、
結構それなりに、+/-{plus/minus}に影響されている。
Welcome To The Schoolの曲は、実際にはもっと前に書いた曲もあるから、全部ではないけれど、
Rockn’Roll is the proof God loves usとか、
First Pop、Freedoom、たぶんOnly One Wishとかにも、
さりげない変拍子や構成など、
たぶん影響を受けている。
もちろん、彼らを知る前からあった要素ではあるけれど。
その影響は、今作っているGod Rocksには、もっと顕著であろうと思う。
また僕は、
バート・バカラック、熊谷幸子の信者であるから、
変拍子や転調にしろ、
Dream Theaterみたいにわざとらしくは入れたくはない。
あくまで、言われないと気付かないような自然な変拍子が理想だ。
ロックを、高度な技術と音楽性で
心技体ともにそろったバンドが、
なによりも理想だとするなら。
たとえばRushはひとつ、理想の形だし、
このplus/minusもほとんど究極だ。
でも、その先を見ると、
僕らにしかできないことがあるのに気付く。
これは大事なことで、
つまり僕は、
彼ら+/-{plus/minus}がやっていることを、
高度な技術とメッセージ性と熱さを伴って、
ハードロックの文脈でやりたいのだと気付く。
Rushのやったことを、
21世紀のポストロック精神と、
インディーズ文脈の中でやりたいのだと気付く。
終演後、
去年と同じように、
James Baluyutをつかまえて話した。
彼は僕のことを覚えていてくれた。
バンド名まで覚えていてくれた
「Imari Tonesの人だろ」って(笑)
実は4月にバンドでニューヨークに行った際に、
facebookで彼にメールを投げていた。
そのときは、彼は都合がつかなかったのだけれど、
「あのときはごめん、住んでるところから近かったから、ぜひ行きたかったんだけれど」
などと言っている。
ショウの最後があまりにもセンチメンタルな文脈だったため、気になって、
「次のレコードはいつだい」と聞いてみたが、
I’m not sure. Maybe 1 year after thisみたいにはぐらかされた。
まあインディーズの制作なんてそんなものだろう、けど。
(また、アルバムの色合いが、昨年の4枚目で、春夏秋冬、と揃っていたので)
また2月に行くんだよ、ペンシルバニアのカンファレンスに出るんだ、ところでニューヨークでブッキングできそうなハコないかい、もう2ヶ月しかないから、なかなかてこずっててさ、
と聞くと、
「そうだね普通は4ヶ月前にする必要があるから、難しいと思うけれど、やれるところはあるかもしれない。手を貸すよ。詳細をメールしてくれ」
と、非常に親切な言葉をくれた。
うーん、いい人だ。嬉しいね。
(しかし、今日、ちょうどメールを開くと、ニューヨークの、4月にやった同じクラブでブッキングOKのメールが来ていた。)
僕らはクリスチャンバンドで、2月にはR牧師の教会でワーシップもする予定だよというと、
「え、日本人なのにクリスチャンなのかい? 日本のクリスチャンバンド? Wow it’s so strange!」
とひたすらびっくりしていた(笑)
Jamesは、両親がカトリックの家庭で(フィリピン系だからだろう)、だから自分も一応クリスチャンだけれど、と言ってたけれど、教会には行ってない、て言ってたし、いわゆる「普通の人」なんだろう。日本人の仏教徒、みたいなもん。
というわけで、
今日はさすがに体が悲鳴をあげており、
休んでいろいろやってます。