練習を始める前に、オレに何分か時間をくれ。
そんで、言いたいことを言わせてくれ。
始める前にやる気をそぐわけじゃないんだけれど、
ツアー前の最後の練習だから、
ちょっと厳しいことを言おうと思う。
厳しいことと、やさしいことを、両方言うから、
聞いてくれ。
さて、これから3度目の遠征に向かうわけだけれど。
とくに、
年があけてからこっち、
俺はこのバンドの未来について、けっこう真剣に考えてたのね。
たぶん、君たちも、それぞれに、考えていたと思うのだけれど。
まず、この大変なバンド活動に、これまで、
はっしーは3年半、ジェイクは2年半、
つきあってくれたことに、お礼を言いたい。
海外遠征だったり、音楽的にも、活動内容としても、
難しい要素のたくさんある、
とても大変なバンド活動に、一緒に取り組んできてくれたことは、
本当に感謝をしたい。
でもね、本当に真剣に成功を目指して取り組む中で、
今日に限って、ひとつだけ、俺もたまには感情的にならせてもらうのであれば、
たぶんそのがんばりは、きっとまだ足りなかったんだと思うんだ。
君たちもそうだし、たぶん俺も足りなかったんだと思う。
前にも言ったことがあるかもしれないけれど、
本当に何かに真剣に取り組むというのは、
自分の殻をやぶって、自分の限界を超えて、
自分を変えていくということなんだよね。
俺は本当のことを言うと、
そこまでのがんばりを、君たちに期待したかった。
でも、この数ヶ月、ツアーに向けて加速する中で、
バンドの中でも、少しずつ、精神的なものが変わっていくのを感じていた。
俺たちは、今、ちょっとずつ、自分の殻をやぶっていっているような気がしている。
だから、このツアーの際して、
少しずつでも、自分たちの限界を超えていけるように、
自分を変えていけるように、ちょっとずつ、努力していこうじゃないか。
で、バンドの現状を言うと、
この3度目のアメリカ遠征にして、
今までで最大のチャンスをつかんでいる。
NashvilleでのThe Objectiveというイベントでの、
売り込みの機会は、まちがいなく千載一遇のものだ。
ここで物事がうまく進めば、
このバンドは成功するかもしれない。
でもね、俺は思っていたのね、
特に年が明けてからずっと。
このバンドは、好むと好まざると、
今、クリスチャンロックのバンドなのね。
このバンドの、クリスチャンという方向性と、アイデンティティは、
俺一人の信仰と、メッセージによるものだけれど、
君たち二人はクリスチャンじゃないでしょ?
今まではなんとかなったんだけれど、
俺はね、このバンドが、このチャンスをつかむにあたって、
この壁を乗り越えるにあたって、
この状態で本当に成功できるのかって、結構悩んでたのね。ここ数ヶ月。
で、ここ数ヶ月、新曲に取り組みながら、
レコーディングやツアー準備に取り組みながら、
何が可能で、何が不可能なのか、それを見極めようとしてた。
でもね、ここへきて、やっぱり手ごたえとして思うんだよね。
やっぱり、心にちゃんと信仰を持ってないとだめなんだよ。
俺だけじゃなくて、メンバー全員、心に信仰がないと。
だからオレが思うには、
たぶんこのバンドは、このままでは、
ていうか、現状として、
たぶんこのハードルを乗り越えることはできないと思う。
なぜか。
真剣さが足りないんだよ。
使命感、
謙虚な姿勢、
人間として成長していこうという姿勢、
そして何のために音を鳴らすのかという目的意識。
クリスチャンバンドとして、神様のために音楽を鳴らすっていうのは、
冗談とか、ジョークじゃないんだぜ、
本気で、真剣に、皆、信仰を持ってやっているんだよ。
インターネットであれ、ライヴであれ、
オレたちのファンになってくれる人たちだって、
みな、信仰を持って聞いてくれているんだ。
オレは、ステージの上で、音楽を通じてしか、自分の本当の気持ちを表現できない人間だから、近くで一緒に演奏をしている君たちに、案外とメッセージが伝わっていないというのは、皮肉ながら仕方のないことかもしれない。
あるいは、いっしょにやっている君たちに、ちゃんと自分の考えてることや、信じてるものを、話したり、伝えたり、うまくできなかった自分の責任かもしれない。
でもね、いろんな意味で、ここ2,3ヶ月、取り組んできて、
やっぱり本格的に、クリスチャンミュージックの世界に飛び込んで、成功するには、今のバンドの状態、つまり、君たち二人が信仰を持っていない、この状態では、これは無理だな、と、演奏していて、手ごたえとして限界を感じてる。
だから、その意味では、もうこれ以上のハードルを越えられないのであれば、
これが限界なのであれば、
ツアーを終えて、バンドの未来は長くないかもしれない。
3度目にして、最後のツアーになるかもしれないし、
そのくらいの覚悟で臨んでほしい。
だから、このバンドの成功の可能性とか、
このバンドの未来については、
現状で、ちょっと俺は、あきらめの境地になっている。
たぶんだめだな、っていうふうに思ってる。
でも、まだ一縷の望みはあるし、
かすかな可能性はあるから、その可能性にかけて、
このツアーに出るわけだけどね。
で、逆にまた、ほめるわけじゃないんだけれど、
よくやってくれたと思う、二人とも、ここまで。
俺のメンバーに対する要求ってのは、
普段、あまり厳しく言っていないと思うかもしれないけど、
実はものすごく高いのね。
いつも言ってるように、頭のカタいクリスチャンの連中とはバンドやりたくないんだよ。
もっと、自由な考えを持ったヤツじゃなきゃ。
自由な考えを持った上で、その上で宗教の枠組みに捉われず、本当に神を信じてる、そういうような人間じゃないと、俺は一緒にやりたくないんだ。
そういう意味では、君たちは二人とも、それぞれの立ち位置で、よくやってくれたと思う。
そして、たとえ、3人のうち、本当にクリスチャンなのは俺だけだとしても、
バンドとして3人集まったときには、クリスチャンの強力なメッセージを放つ、クリスチャンのバンドになるわけよ。
これは、バンドとか音楽のマジックだと思う。
で、そういったバンドという、強力なひとつのチームとして、
俺たちは、この3度目のアメリカ遠征を、成功させなきゃいけない。
そこに、クリスチャンかどうかなんて関係ない。
いったんツアーに出てしまえば、
どんな仕事でも、現場に出てしまえば、クリスチャンか、そうでないかなんて、
人間、関係ないからね。
だから、俺たちにできるベストをぶつけようじゃないか。
アメリカの、クリスチャンの音楽業界の連中に、
教会の連中に、バーで飲んでる連中に、
俺たちのベストの演奏とメッセージを、
ぶつけようじゃないか。
不完全でもかまわない。
俺たちはそれぞれ、3人とも、決して完璧なミュージシャンというわけじゃない。
俺はギターはまだしも、歌はへたくそだし、
ジェイクは音感はいいけれど、リズムが弱いし、
はっしーはサウンドはいいけれど、音感は弱いし、
それぞれに、とても不完全だ。
だから、このツアーに出るにあたって、
ひとつだけ、提案をしたい。
お互いの、ミスであるとか、
足りない部分、
完璧でないところ、
それを、責めるのは、やめようじゃないか。
もちろん、指摘するのは、いいけれど、
感情的になって、お互いを責めるのは、
このツアーでは、やめにしよう。
お互いを、讃えあって、認め合って、感謝をしよう。
だって、ここまで、難しい音楽活動を、一緒にやってきたんじゃないか。
2度の海外ツアーや、難しいレコーディング、国内のさまざまな演奏を、やってきたんじゃないか。
これだけでも、十分に、みんな、賞賛に値するよ。
だから、最後になるかもしれない、このツアー、
いったん、ツアーに出たら、
もうお互いを責めるのはやめにしよう。
お互いを讃え合おう。
楽しいツアーにしようじゃないか。
そして、俺たちのハッピーな音楽のメッセージを、
一人でも多く、出会った人たちに、与えてあげよう。
以上、言いたいことは言った。
もう俺は、文句は言わねえ。
君たちを信頼してる。
やろうぜ。
It’s time to ROCK.