Battle of Ochanomizu – The Guitar of Devil
男なら売られた喧嘩は買わなくてはいけない。
ていうか喧嘩は売らないけど献花は受付けます。
いつでも死にそうなんで(汗)
しかし、どちらにしても
人は、自分の限界以上のものを手に入れることはできない。
なぜなら自分の限界を超えるものは、理解できないから。
そのことは十分わかりつつも、
自分の限界に挑んでみました。
お恥ずかしい限りですが。
レスポールという命題があったわけです。
近頃、というか今年かな。
ギターというものに対して、ずいぶん今まで以上に考えたわけです。
サウンド、音作りについても、
演奏についても、
ギターという楽器そのものに対しても。
おかげで、今年は、ギタープレイヤーとして、
演奏技術以上の部分で、
ギターを鳴らすという本質の部分で、
進歩できた気がしています。
で、ギターについて調べると、
レスポールという命題に突き当たるわけです。
もう、インターネット上にはそういう情報があふれてますんで(笑)
ぶっちゃけ、僕はレスポールはあまり好きなギターではなかったわけです。
で、今思い返してみても、僕はレスポールが好きでなくて良かったと思うわけです。
最近、日本ツアーと前後して、何度か楽器屋(主にお茶の水)に通い、いろいろ試して体験してみた結果として。
レスポール、怖過ぎる。
本当に怖い。
こんな怖いものに今まで手を出さなくて本当に良かった、と心から思っている自分がいます。
しかし、自分のギタリスト人生があと何年あるのかわかりませんが、
男なら、逃げずに挑まなくてはいけない。
何らかの「答え」を見つけた上で、あの世に行かなければ。
そうでなくては、自分のギタリストとしての人生を全うできません。
つまり、レスポールという楽器には、
現代のエレクトリックギターをめぐる状況の、
そしてロックシーン全体をめぐる状況の、
すべてが象徴的に起きている楽器だと思うからです。
レスポールにどういう答えを出すのか、
というのは、
ギタリストとして、
エレクトリックギターという楽器そのものに、
ひいてはロックという音楽そのものに、
どういう答えを、
いちプレイヤー、
いちミュージシャンとして出すのか、
それがかかっているからです。
というわけで、これは僕のささやかな小さな個人的な冒険のメモです。
レスポール、
人気の定番ギターですね。
ていうか、定番すぎて、
人気どうこういう問題ですらないですね。
みんな使ってますね、レスポール。
安価な入門モデルから、
ギブソンのなんとかいう100万円くらいするやつまで。
みんな使ってます。
ライヴハウスでは毎日見るでしょう。
それくらい一番ポピュラーなギターです。
僕はほんと信じられないんです。
よく、こんな怖い楽器を、
みんな平気で使ってるな、って。
レスポールは、魔性の楽器です。
悪魔の楽器と言ってもいいくらいです。
恐ろしい魔性の性質(俺は今腹痛が痛い)と、
抗い難い魔性の魅力を秘めています。
それは、最高級の高価なモデルであっても、
初心者用の安価なコピーモデルであったとしても
変わらないわけです。
たぶんこのレスポールの女性の体のような美しい曲線と、
セットネック構造に、
その魔性の秘密があるのでしょう。
その魅力に魅せられたものは、
二度と抜け出すことができず、
迷宮の中をさまようわけです。
そして、ほとんどの者は、
そこから永久に抜け出すことができない。
答えを見つけることも、つかむこともできないままに。
本当に怖いです。
なぜ怖いのか。
ギターに詳しい人はきっと先刻承知なのでしょうが、
それは、レスポールは、形はみな同じに見えても、
中身はどれもこれも、まったく違うものばかりだからなのです。
見た目はどれも同じレスポールでも、
中身は、真っ白なものもあれば、真っ黒なものもある。
そして、黄色いものもあれば赤いものもあるという感じです。
こんなに怖いことはありません。
まるでおもちゃ屋の店頭にあるガチャガチャ(ガチャポンだっけ)みたいなノリじゃないですか。
コインを入れて、何が出てくるかわからない。
吉か凶か。おみくじじゃないんだから。
こんなギター界の常識を、僕はこの歳になって、やっと知ったわけです。
自分がレスポールを、10代の頃に、
人のものを、何度か弾かせてもらったとき、
「うわ、重い」
「うわ、弾きにくい」
「そして、なんという野暮ったい音」
一切、必要とは思わなかったわけです。
「まあ、ブルーズとか、やるにはいいよね。
でも俺、メタルだから。」
みたいな。
もちろん、ヘヴィメタル、ハードロックの世界にも、
レスポールを使っている有名なギタリストはたくさん居ます。
スラッシュ、ザック・ワイルド、ジョン・サイクス、ゲイリー・ムーア、
数え上げればきりがありません。
けれども、
僕たちが、少なくとも、メタル世代以降の人たちが、思い浮かべるレスポールの音色というのは、
実際には、詳しい年代とか知りませんが、1950年代のオリジナル、ヴィンテージのレスポールではなく、1970年代以降とかの、再生産の後のレスポールの音色なわけです。
で、実際、そういったレスポールが欲しいという人は、それでまったく問題はないと思うわけです。
しかしつまり、上記のとおり、僕はそういった「普通のよくある」レスポールに対しては、
あんまり好きじゃないという感想があるのみなのです。
重い、野暮ったい、使う気にならない。
ところが、無知な僕はレスポールとはそういうものだと思っていたんですが、
なんでもインターネットとか見ると、
その1950年代のオリジナルというのかヴィンテージのレスポールは、まったく違うというじゃないですか。
そしてすなわち、そのヴィンテージのレスポールを指す言葉として、「バースト」という言葉があるそうです。
いわく、そのバーストのヴィンテージレスポールこそが、すべてのエレクトリックギターの至高であり究極である、と。
そして、その代表的な使い手として、ロックの歴史上、かのジミー・ペイジが第一人者である、ということなのです。
しかし、私は、果たして、そうかな、と思うわけです。
このバースト、1950年代のヴィンテージレスポール、というもの。
その歴史や、製作された経緯はギタリスト諸氏なら当然ご存知のことと思いますので私ごときが触れる必要はありませんが、
限られた本数しか製作されなかったその究極のギターは、現在では、なんというかもう家が買えてしまうくらいの金額になっているとか。(実際いくらなのか私は知りません)
と、折しもそんなタイミングもタイミング、
今朝、facebookを開くと、
昨年、アメリカはアイダホ州某所で対バンしたところの、ウクライナ出身のバンドの彼が、「見てくれよ、1959年製のレスポールを手に入れたぜ」といった写真をアップしているじゃないですか。
彼は、ロックバンドで活躍している他、有名なイヤモニ(インナーイヤーモニター)の会社を経営しているらしく、つまりはたぶんお金持ちなのかもしれません。
そんな彼が、伝説のギターを手にしている写真。ひょっとしてジョークかもしれませんが、本当なら、すごく羨ましいところです。
ギタリストなら、誰もが欲しがる、伝説のギターですから。
そして、その伝説のレスポール。
それと同じクオリティを持つ、同じ音がするレスポールは、
「二度と作れない」
らしいんですね。
本当かどうか知りませんけど。
技術的な問題だか、材料の材木の問題だか、
業界やマーケットの問題だか、
知りませんが、
それと同じ品質を持つギターは、
二度と作れない、
みたいなことがインターネットのどこかに
書いてあったわけです。
ほんまかいな。
その真偽のほどはともかく。
そのヴィンテージレスポール、
あるいは「バースト」
その伝説の音にあこがれ、
魅せられてしまった人は。
永久にさまようことになるわけです。
その、家が買えるくらいのギターを
実際に手にするまでは。
(あるいは、実際に手にしたとして、その呪縛から本当に解き放たれるのでしょうか)
(もし、すべてが幻想に過ぎなかったとしたら?)
自分は、基本、安いギターが好きです。
今までも、結構、実際に、安いギターでいろいろやってますし、
少しは良いものも使ってきましたが、
基本、安いギターが好きです。
しかし、良いもののひとつとしては、
某所で安価で入手した、
HamerのUSA製のギターなんかも持っているわけです。
これは、同じくGibsonの、これまた伝説になっているギターと比較して、
勝りはせずとも、おそらくそんなに劣ってはいない、比較対象にはなるだろう、
そんな品だと思っています。
その意味で、少しは、僕も、ギターを聞く耳は持っているつもりなのです。
そして、エレクトリックギターというものの本質を見つめるため、
エレクトリックギターとうものの正体を突き止めるため、
つまりはそれはより良いプレイヤーになるためです、
このレスポールの謎に挑まなくてはなりません。
そして、ここ、世界の楽器の聖地、お茶の水(笑)にやってきました。
どうしてもやはり、お茶の水、の後には(笑)が付いてしまいます。
wマークのひとつもつけないとやってられないからです。
そして、世の中のギターをめぐる状況というのは、やはりそれくらいwが付く状況なのだと思います。
ひとつ不思議だったことがあります。
それは、僕が、そのインターネットでギターについて調べていて、
ふうん、ヴィンテージレスポールかあ、
バーストかあ。
なんて、いって、
その音の伝説的凄さを文章で説明している記事を読むわけです。
あれ、なんだろ、この音、俺、知ってる。
頭の中で、音が鳴ってる。
なぜだ。
記憶の糸をたぐりよせてみました。
さきほど、今朝も、ウクライナ出身のミュージシャンの彼が、1959年製レスポールを持っている写真を見て、
「ああ、いいな。俺には、こんな高い楽器を実際に弾ける機会なんて、たぶん生涯ないだろうな。ましてや、それを使って自分の楽曲をレコーディングするだなんて、そんな夢のような幸運は、きっと無いだろう。」
夢のような幸運、すでにありました。
あの時、ドイツ某所でレコーディングさせてもらった時ですね。
某有名プロデューサーさんのところで。
その有名プロデューサーさんの彼、
「これは究極のレスポールだ」
そういって、そのP-90のついた、金色のレスポールを、私に渡してくれはりました。
英語で言ってたから、なんかよくわかりませんが、
本物のヴィンテージだ、という話をしていたのは覚えています。
ましてや、私、当時、そんなものにまったく興味ありませんでしたので、ふーん、そうなんだ、で終わりましたが。
しかし、その、またしてもこれもヴィンテージだという、ピンスイッチだかの古いマーシャルにつないで出した音、
弾いた感触、弦を押した手触り、
ギターを抱えたときの重さ、
そして金色のボディの塗装の手触りまで、
なぜだか克明に、覚えているのです、俺。
なぜって、それは、そのギターとマーシャルが奏でた音に、
強い感動を覚えたからです。
あたりまえですね。
伝説のヴィンテージレスポールで、
自分の曲、レコーディングしてました、私。
それとはちっとも知らずに。
それは、うちのバンドの、Karma Flowerという曲ですね。
使ったのは。
トラックをいくつか重ねましたが、あの曲のギターの大部分は、この金色のレスポールでやっつけたと記憶しています。
出来上がった作品を聞くと、プロデューサー氏は、かなりポップなサウンドに、仕上げてくれちゃいましたが、そのギターの凄みは、それでも伝わるでしょう。
実際にその曲はうちのバンドの楽曲の中でも今でも人気のあるトラックなのですから。
(うちみたいな無名のバンドでも、という注釈をつけて、です)
いわゆるバースト、と呼ばれる、ヴィンテージレスポール、
しかし、ひょっとして、この、バーストが製作されるもうひとつ前の、
「ゴールドトップ」
これって、もっと凄いんじゃ。
そう、今でも思います。
これを体が記憶しているというのは、
知らないうちに、結構貴重なことなわけです、ギタリストとして。
本当に、ありがたいことです。
大変でしたが。
その意味では、
俺は、「ヴィンテージ」の幻想と亡霊に、
人よりもひとつだけ、捕われなくていいわけです。
一応、ちょっとだけだけれど、
本物を弾いたことがあるのだから。
「ちょっとだけ弾いたことがあるけど、こんなだったよね」
と言えるし、
「これがその時レコーディングした音だよ」
って、いつでも聴かせられるわけですから。
さて、夢のような過去の記憶の話はここまでにして、
時間を現在に向かって進めていくと、
数年後に、僕は、
自分で初めて、「レスポール」と名のつくギターを
うっかり所有してしまうわけです。
これは、本当に、うっかりでした。
レスポールのレの字も知らなかった僕が、
その頃、
ゲイリー・ムーアだか、
ジョン・サイクスだか、
ジョン・ノーラムだか、
そのへんの音を聴いていたせいか、
うっかり、中古で吊るしてあった、
Epiphone Les Paul Studioを、
2万円で(笑)
ゲットしてしまうわけです。
で、これ、今でも正しい選択だったと
思ってます。
それは、Les Paul Studioは、
レスポールの中でも、
いちばんわかりやすいレスポールだと
思うからです。
なぜ、僕が、Les Paul Studioに惹かれたかというと、
それは、Les Paul Studioは、あまりレスポールっぽくないギターだったからです(笑)
しかも、Gibsonではなく、Epiphone。
しかも、その中でも最も安価な、省略塗装のつや消しフィニッシュ。
まさにいちばん安いレスポール。
それがよかった。
自分は、レスポールについて無知だったので
「へえ、レスポールって、スタンダードとかカスタムだけじゃなくて、スタジオ(ストゥーディオ)なんてのもあるんだ」
って感じの暢気な感想でしたが。
実際、Les Paul Studioは、
俺は良い楽器だと思います。
通常のレスポールと違って、
指板やボディのバインディングが無く、
そのぶん値段が下がっているけれど、
扱いやすい。
そして軽い。
ボディが薄いやつなんかもあるし、
「重い、扱いにくい、弾きにくい」
という、僕がレスポールが嫌いな箇所が、
ほぼ改善(?)されているわけです。
バインディングが無いだけで、
なんかちょっと、弾きやすいんですよね、
気のせいかもしれませんが。
見た目は、「作りかけのレスポール」といった感じですが、
その、飾りなんていらないぜ、という態度も潔い。
今回も、何本かのGibsonのStudioを、試奏しましたが、
俺、このLes Paul Studioは、音の傾向としても、
決して、いわゆるレスポールの音そのまま、
ではないですが、
多少、軽めの音になるんですが、
しかし用途というか方向性の定まった音がしていて、
俺はありだと思います。
そして、扱いやすく、価格も良心的な中に、
きちんと
「天下のギブソンレスポールだぜ」
という主張のある音がする。
こと、今回俺がいろいろ見た中で、
俺は、レスポールに関しては、
価格が安く、また、見た目に飾りがないほど、
嘘のない音がする、
という法則があるような気がするわけです。
その意味では、
扱いやすさと、音の用途が合うのであれば、
Les Paul Studioは、僕は人に勧めることのできる楽器です。
Les Paul Studioには、あまり嘘がないからです。
身近にも、今まで、Les Paul Studioを使っている人、
いましたが、
思えば、今回、The Extreme Tour Japanを一緒に回った、
The LacksのScott Lackも、
ずっとGibson Les Paul Studioを愛用しています。
彼のサウンドの方向性、
バンドの音楽性とアンサンブル、
楽器の取り回しと過酷なツアーの内容を考えると、
彼がこの”Studio”を使っているというのは、
ものすごく納得がいきます。
すごく彼に合っている楽器だからです。
きちんとアメリカンロックのサウンドが出て、
ちゃんとクラシックギブソンの主張があって、
なおかつ飾りすぎないで素朴。
決して高級ではないが、ちゃんと伝統はある。
彼のパーソナリティに合致します。
しかしながら、
僕が手に入れたEpiphoneのつや消し塗装のStudioは、
それに輪をかけてチープで安価なものでした。
しかし、それが良かったのです。
いわゆる、レスポールの音では、決してありません。
ボディはマホガニーだけ、
マホガニーバック、マホガニートップ、
バックも決してワンピースではないと思います。
どちらかというと、
単にレスポールの形をしただけの
セットネック構造になっているだけの、
マホガニーでできた木の固まり、
といったギターです。
しかし、そのぶん、
まったく音に飾りの余地がない。
なんというか、
ただのマホガニーの木の固まり、
といった感じの音がします。
かなりダイレクトです。
しかし、それが良かった。
少なくとも、嘘の無い、
素直な楽器だからです。
まったく素の音といった感じの。
だから、上手い人が弾けば、
きちんと上手いプレイになります。
YouTubeなんか覗いてみても、
この安価なEpiphone Les Paul Studioで、
すごい演奏をしている人、結構います。
それはすごいかっこいいと、俺は思います。
そして、俺自身も、この安価なEpiphone Les Paul Studioで、
いくつもの、結構いけてる演奏を、してきたつもりです。
正直、このギターで、大きなステージに立っても、
俺は恥ずかしくありません。
高級な楽器ではなくても、
素直な、信頼のおけるギターだということを知っているから。
俺は、この間のツアーで、
石巻にいる友人のR氏に、
このEpiphoneのLes Paul Studioをあげてしまいました。
それは決して、
チープだからではありません。
大事な友人にプレゼントするギターとして、
ふさわしい品質と、
嘘の無い音楽性と、
幅の広い可能性を持った楽器だから、
プレゼントしたのです。
そして、安価であっても、
いくつもの演奏を共にした愛用の楽器だからこそ、
プレゼントしたのです。
というわけで、
魔性のレスポール、
嘘ばかりが蔓延するこのレスポールというジャンルにおいて、
EpiphoneのLes Paul Studioは、
俺はお勧めできるものです。
安価かもしれませんが、意外と誠実な楽器だからです。
しかし個体差はあるかもしれませんので気をつけて。
それが、俺が自分で初めて買って所有したレスポールでした。
そしてそれは、上記のように、「まったくレスポールらしくない」レスポールだったのです。
セットネックで、レスポールの形をしているという意外は、ほぼレスポールじゃありません。
しかし、それでも、一度、このレスポールの形をしたギターを所有してしまった以上、
私にもレスポールの魔性の力は迫ってきていたのです。
それはつまり、ギタリストであるならば、
ある程度、本気のギタープレイヤーであるならば、
避けては通れない、
それくらい、レスポールという存在は、
本能的にギタープレイヤーを惹き付けて止まない。
そんな恐ろしい楽器なのです。
そんな恐ろしい魅力を持ったギターだからこそ、
そこには、本当もあれば、嘘もあり、
妖怪変化や魑魅魍魎が奇々怪々と跳梁跋扈する、
少しも油断のできない世界が、
待ち構えているのです。
さて、バックグラウンドの前置きのお話は、
それくらいで、
ここからは、つまらない、
楽器屋さんに通って実際に弾いてみた感触の感想なのです。
果たして、答えは出たのか。
レスポールという無限の迷宮に、
私はギタープレイヤーとして、
なんらかの出口を見つけることができたのか。
結論が出るのは、
もっと後のことでしょうが、
ひとまず、楽器屋でちょこちょこっと、
限られた本数を弾いてきただけの、
個人的な感想の記録なのです。
Epiphoneは、先述したように、
俺は良いと思うんです。
安いし、バカにする人もいるかもしれませんが、
俺はなかなかバカにできません。
確かに、Les Paul Standardとか、
本家のGibsonと比較すると、
Gibsonの方がやはり本物っぽい
ゴージャスな音がしますが、
果たしてそればかりが答えだろうか。
楽器として、素直なのは、
案外Epiphoneの方かもしれない、
ということもあります。
今まで、他人のEpiphoneとか、
リハスタのレンタルとかで、
Epiphoneのレスポールを
弾いたときに、
悪い印象を持ったことは無いのです。
すべてのモデルを弾いたわけではありませんが、
価格の良心的な部分や、
本家の傘下ブランドであるという理由からくる余裕なのか
楽器として、比較的まともというか、
悪意をあまり感じません。
また、自分が所有していたつや消し塗装のStudioのように、
本家にないようなモデル、バリエーションもあったりします。
これ、結論から先に書いちゃいますが、
身も蓋もないんですが、
Epiphoneをちゃんと鳴らせないんだったら、
Gibson買ったってどうせ鳴らせない、
という結論になっちゃいます。
だから、ギターをちゃんと鳴らせる奴だったら、
Epiphone持ったって、
まったく問題はないように、俺は思います。
それは絶対に、良い演奏になるからです。
そこにちょこっと、
ゴージャスな艶を乗っけたい、
という、
それだけのことかもしれません、
Gibsonを使うというのは。
で、Gibsonです。
そんなに何本も弾いてませんし、
高いし、
ぶっちゃけ知りません。
でも、何本かは試奏しました。
基準は、もちろん、
自分の記憶に刻まれた、
あの「ゴールドトップ」の音です。
先述したように、
Gibson Les Paul Studio、
俺は良いと思います。
価格も良心的だし。
中古のやつを3本試してみました。
きちんと音の方向性が定まっています。
限界はあるかもしれませんが、
この音が演奏する音楽の方向性に合うのであれば、
良い選択だと俺は思いました。
しかし、Epiphoneの安価なStudioはめっちゃ素直で飾りのない「素」の音でしたので、
そのぶん可能性の幅は広く思いましたが、
このGibsonは、やはり「Gibsonだぜー」という味付けの音が多分にするので、
ぶっちゃけ、音楽性の幅は、俺はEpiphoneのつや消しStudioの方が広いと思います。
そう思うと、いちばん価格の安いEpiphoneつや消しStudio、ほんとに大穴のすごい楽器だと思います。
で、1989年のGibson Les Paul Standardがあったので、
弾きましたが、
ぴんと来ません。
ザックワイルドごっことか、
Teslaのコピーバンドとか、
やるには、良いと思いますが、
俺の記憶にある「ゴールドトップ」の音とは
似ても似つきません。
確かに楽器としては立派に成立しているんですが。
Gibsonという印がついているのに….
やはりレスポールというのは、非常に難しい命題なのです。
で、2008年くらいの、Standardもありました。
これも、なんか、どうでもいい感じ。
激しく普通です。
で、弾かせてもらったのが、
Gibson Custom Shopの、ヒストリックコレクション58年型モデル。
「これを弾いちゃったらもう安いのは弾けなくなりますよ!」
と店員さんに脅されての試奏。
しかし、うん、
こんなもんなのか、
というのが正直な感想。
いや、悪くないんですよ。
低音ちゃんと出るし。
楽器としては、よく出来てるし。
でも、これになんで30万とか40万とか払うの、
って言われたら、
うまく回答できない感じ。
後で再度弾かせてもらって、
思ったのが、
ああこれ、アメリカンな外人さんだったら
もっと豪快で、体の大きな外人さんだったら、
合う音が出せるかもね、っていうこと。
でもそういうのは、
体の大きな外人さんにまかせておけばいいよね、
って口に出して言ったら、そこで話が終わっちゃった。
どちらにしても自分には合わない。
言い方が気に入らないのであれば、
自分には弾きこなせない、
と言ってもいいです。
しかし、俺の脳裏には、
多少記憶補正があっても、
伝説のゴールドトップを弾いた
あの感触と音が、
今でも残っているわけです。
同じか、違うかと、
言われれば、
「まったく違う」
としか言えない。
もうひとつ、
Gibson Les Paul LPJ
というやつがありました。
これは、最近出たモデルで、
Gibsonなんだけど、
すごい安いやつですね。
5万円ちょいくらいで買えてしまうくらいの。
すごい画期的なモデル。
で、これも弾いてみて、
わりと好印象を持ちました。
というのは、Les Paul Studioと同じように
この安価なGibsonも、
方向性が定まっている。
はっきり言って音は作ってます。
でも、嘘はついていないし、
楽器として破綻していない。
ネックがメイプルだったりするせいか
ピックアップのせいか
いわゆる伝統的なレスポールの音よりは、
より現代的な、モダンな音を狙っているように
思えました。
若いプレイヤーや、
より新しいいまどきのロックを鳴らしたい人には
きっと合うのだろうと思う。
音は作っているけれど、
「どうだ、ギブソンだぜ」
という主張(ちょっとうざい)はちゃんとあって
そのあたりが、Gibsonの凄みなのか。
ちゃんと、Gibsonに期待されるニーズを、わかっているのか。
Les Paulは、安くて、飾りのないものほど、
嘘がなくて、かといって方向性はちゃんと持っている
この法則は、ここでも当てはまりそうで。
しかし、いわゆる高級なレスポールの音では
まったくないです。
レスポールが良いけれど、
でももうちょっとモダンで若い音が出したいという
この方向性が合うのであれば
悪くない選択かもしれません。
でも俺は、
ちょっと音を作りすぎていると思うので、
個人的にはパスです。
友人に勧めるつもりも、
あまりありません。
今回、何度か通う中で、
またHamerの安いやつがあったんです。
XT seriesっていう、アジア製のやつ。
俺、何年か前から、このHamer XT seriesの
フライングVを、使ってるんですね。
使ってるというか、愛用してる。
インドネシア製のやつ。
すっげー良かったから。
最初良くなかったんだけど、
これピックアップ替えたら化けるなって、
ピンと来た。
それで、とある企業秘密なピックアップに変えたら
本当に自分にぴったりのギターになった。
だから、XTのVectorは、良いと思うんですけど、
Sunburstっていうダブルカッタウェイのセットネックのやつがあって、
それのXTを弾いたら、
ひどかった。
煮ても焼いても食えない感じ。
同じHamerのXTなのに。
用途というか、狙いがわからない。
ターゲット層もわからない。
俺としては、これは企画のミスとしか思えない。
これは、Hamer、評判落とすわけですよ。
Hamerは、Fenderの傘下になって久しく、
2013年初頭に、ブランドの打ち切りが決定、
消滅してしまった、
「既にこの世にない」ブランドなんですが、
これは、このFender社のXTシリーズの企画ミスが、
Hamerを殺したのかもしれない、
と、
なんとなく納得。
悲しいけれど。
んで、レスポールといえば、
国産ブランド(笑)
というわけで
(これもwマークを付けないとやってられない)
作りの良い、高品質なw
国産ブランド、
というわけで、
しかし、F社に関していえば、
今回、あまりフェアな評価ができたとは言い難いんですよ。
一本しか弾いてないし、
それも試奏したときに、店員さんが、あまりにも感じわるくて、
もう試す気なくなっちゃった。
あまりぴんと来なかったし。
単純に縁がなかったのかな。
でもどうだろう、
代表的な国産ブランドのF社、
評判は良いし、
知人のR氏(さきほどのR氏とは別のR氏)が
演奏しているのを見たことがあって、
レスポールらしいつややかな音がしていたけれど。
一本弾いて、違うな、
と、
どこが違うのかを結論出すまでいかなかった。
なんだろう、作りが良い、というのの方向性が、
ちょっと違うところにある、と感じたのかな。
いわゆるヴィンテージレスポールの音を狙う気は
あまりないみたい。
それよりも皆が聞き慣れた、リイシュー後のレスポールの音の市場を狙う感じの。
それもひとつの選択なのか。
いわゆるリイシュー後のレスポールのコピーモデルとしては、
クオリティ高いのかな。
そっちの音が好きなのであればかな。
でも楽器として面白いかと言えば、どうかな。
ごめん。
今度またちゃんと試してくる。
いつかまた。
本当に難しいんだねレスポール。
で、国産、B社、
いやこれは、D社というのかな。
ここのブランドのギターは、
以前、うちのバンドのバンドとしての結成時期に、
一瞬だけ在籍してくれたベーシストが
そこのSGを持っていて、
それを弾いたことがある。
彼女はギターは比較的に初心者だったが
いわく、
店員さんに、
このブランドは価格は安いけどしっかりしてるんですよ、
と言われたとのこと。
弾いてみると、
なんの変哲もないごくありふれたSG。
とりたてて特徴もない。
しかし、今となっては、
その「ごくありふれたギター」
というのが、かなり貴重なことであるのがよくわかる。
ここのレスポールタイプのオリジナルギターである
Duke Lightというのを試してみた。
オールマホガニーのセットネックである。
ボディは、普通のレスポールより薄い。
だからLightという名前なのだろう。
なんというのか、
俺も、マホガニーがどういう音がするのかとか、
自信はないが、
所有していたEpiphone Les Paul Studioもオールマホガニーだった。
だから、雰囲気くらいは知っているつもりだ。
まさに、マホガニーの音を聴かせたいのです、
といわんばかりのギター。
まったりとした、ウォームでいて、
それでいてくせのないレンジの広さ。
鳴らしたい音の狙いははっきりしている。
それでいて応用範囲は広そうだ。
言いたいことはよくわかる。
しかし、特筆すべき箇所があるかと問われれば、
あんまりないかもしれない。
素直なギターだ。
こちらを1ミリもびっくりさせてくれない。
なんの変哲もないギターだ。
これは俺の予想だが、
このB社ブランドは、
たぶん、どのモデルも、
なんの変哲もないありふれた音がするような気がする。
そこは、正直なところ
俺は好感を持った。
そして、このB社の
いわゆるレスポールスタンダードの、
フレイムメイプルのモデルを試してみた。
「すごく素直な、エレキギターの原点の音がするんですよ」
「ジャンルに特化する前の、昔のレスポールの音です」
つまり、ヴィンテージレスポールの音を狙っているのだな。
店員さんの言葉に期待がふくらむ。
確かに、素直な音だ。
そして、たぶんこのギターは、
その「ヴィンテージレスポール」の音に取り組んでいる。
しかし。
全力で白旗をあげている。
「ごめんなさい。今の私たちの、今の国産ギターの技術力では、これが限界です」
ギターからそういう声が聞こえてくる。
ギターから謝罪の声が聞こえたのは初めてだ。
今回、どのブランドのギターを試奏しても、
「どうだ、うちのギターはすごいだろう」
という声ばかり聞こえのだけれど、
試奏した先から詫びが入るとは、
なんという謙虚なブランドだ、B社(正確にはD社か)。
いや、悪くない、悪くないんだよ。
かなり、いいせん行ってる。
正直に言おう、
俺、その前に弾いた、Gibson Custom Shopの、30万だか40万するやつよりも、
こっちのが好きだった。
少なくとも、やりたいことはわかるもん。
でも、やっぱり、日本人の限界なのか。
スケールが、すべてにおいて小さい。
思い出してみよう。
記憶の中にあるあのゴールドトップの音を。
確かに、このB社のモデルは、
素直な反応で、ヴィンテージのような演奏製をもたらしている。
しかし、あのゴールドトップのような、
圧倒的な鳴りや、押しの強さ、
巨大な鐘の音のような匂い立つ説得力、
そういったものは、感じられない。
そこは、やはり、品よく収まってしまう日本国民の限界なのだろうか。
しかし、そこに嘘は少なくともない。
これは、値段ばかり高くて、
「どうだ!これが世界のギブソンだぜ!」
という主張が鼻につく
(とはいえ楽器として破綻してないのはさすがだけど)
Gibson社や、
その他、はったりとごまかしばかりで、
なんだかなー、
といういろいろを見た後だと、
正直、悪い印象は持たなかった。
面白い楽器とはいえないが、
友人にすすめることはできる。
たぶんこのブランドの楽器は。
そして、問題の国産T社だ。
これが、本当にショックだった。
これのショックを伝えたいがために、
わざわざこの長いレポートを書いていると
いってもいいくらいだ。
国産レスポールとしては、高い評価のある、
海外でも高い評価があるらしい、
このT社。
先週、2本ほど試奏して、
今週、一本、とっておきのやつを弾いてみたんだよ。
先週弾いた2本は、どれも、あまりぴんと来ず。
今週弾いたのは、
店員さんに、
「これはすごいですよ、ボディが3層になっていて、T社の特許技術で、すごい鳴りなんですよー!」
なんでもSEB構造という独自の技術らしい(今調べた)。
言われるがままにギターを持つ。
鳴らす。
ぐわーん。
うおお、確かに凄い鳴りだ!!!!
これを弾いた印象だと、
T社は、たぶん間違いなく、その伝説のヴィンテージレスポールというものを意識した製品作りをしている。
そして、このT社の技術ならば、その伝説を再現することができるということなのか。
この鳴りは。
この音は。
この鐘の音のように響き渡る
太く輝かしい音は。
確かに、俺があの時ドイツで弾いた、
あのゴールドトップの音。
これが世間で評価が高い理由なのか、
恐るべしT社。
そう、確かに恐るべしなのである。
この音が、どんな理由であれ、
この音が出るということは、
凄いのだと俺は思う。
しかし。
5分も弾いていると、
おかしな違和感に気付く。
おい、
ちょっと待て。
おかしいだろ、
このギター。
正直、
ここに気付かない人も多いのだと思う。
あるいは気付かずに一生終わる人もいるのかもしれない。
わからん、
単に俺が未熟で勘違いしているだけかもしれん。
俺が間違っていて、本当はこれは良いギターなのかもしれん。
しかし、俺は思ったのだ。
これ、ギターじゃないじゃん。
ていうか、楽器ですらないじゃん。
ていうかこれ、
ギターの形したただのサンプラーだろ!!!
(Wave音源方式のキーボードと言ってもいい)
これ以上の説明は勘弁してほしい。
辛過ぎるから。
あまりにも辛い。
情けなさ過ぎて。
いや、良いギターなのかもしれないよ。
とにかくも、てっとりばやくヴィンテージレスポールの音が体験したいのであれば、
それでもいいのかもしれない。
でも、この楽器で音楽は演奏できない。
だって、楽器じゃないもん。
少なくとも、俺はこの楽器で演奏された音楽は聴きたくない。
少なくとも、事実として、
この楽器を5分も演奏していたら、
俺はつまんなくなってしまった。
そういうものを、楽器と呼ばないと俺は思う。
要するに、偉大な偽物だ。
わからんよ。
T社でも、本当に楽器として良いモデルもあるのかもわからんし、
たまたま俺が試したモデルがそうだっただけかもしれない。
でも、少なくとも、
いやしくも、音楽というか、
音楽を演奏する楽器を売るメーカーが、
こんな品物を世間に出して売っていること自体、
俺は、ショックというか、
それだけで、俺はこのT社に対する信頼を
失ったと思う。
思うのは、
「それだけ厳しい世界なのか」
「競争、激しいんだね」
そして
「それほどまでに偽物が横行し闊歩する世界なのか」
ということ。
百歩譲っても事実なのは
レスポールという世界が
それだけ難しいものなのだということ。
結論から言って、
俺が、実質、ほんの数日かけて、
お茶の水を中心に、楽器屋をめぐって
探しただけの結果からすれば、
「本物」のレスポールは、
見つからなかった。
あたりまえか。
だから、「本物」のヴィンテージレスポールは、
家が買えるくらいの値段がついているのだ。
本家Gibsonでさえも、
格好のついた、多少ましなもの、
という感じだった。
(その手の音が必要な場合は全然オッケー)
だが、果たして、
そんな「本物」が
本当に必要だろうか。
音楽とは、
ロックとは、
そんな高価な「本物」の楽器がないと
鳴らせないものだろうか。
俺が最後に思ったことは、
これだ。
「鳴らないんなら、鳴らせばいい」
鳴るギターなんて必要ない。
鳴らす腕だけ、あればいいんだ。
ギタリストとしての、
自分の答えと、
自分のアイデンティティを賭けての、
レスポールの迷宮探検。
俺の答えは。
もちろん内緒。
今回、触れてみた楽器の中で、
レスポールというくくりの中で
もし友人に、勧めるのであれば、
Gibson社
(お金があれば。ニーズがはっきりしているし、メーカーもそれにきちんと答えている。そしてやはり楽器としてはまとも。)
Epiphone社
(有象無象の恐怖のレスポールの迷宮に迷い込むよりは、楽器として素直な正統ブランドを選んだ方がいい)
Deviser社 (Bacchus)
(つまらないかもしれないが、今回、もっとも嘘を感じない楽器だった)
これらの中から勧めるだろう。
後のブランドは、試してないし、
世の中には数限りないブランドがレスポールモデルを出してるけれど、
怖くて勧められない。
そして、自分自身、これ以上、試す気にもならない。
怖いから。
これ以上、怖い世界を覗く勇気がない。
レスポール、怖過ぎる。
こんな怖い世界が、現実にあるなんて。
冗談みたい。
笑い話みたい。
悪い夢でも見てるみたい。
ていうか本当に悪夢。
でも、これでギタリストとして、
もう一歩前に進めそうです。
でも皆さんには忠告しておきたい。
触らない方がいいよ、レスポール。