やらなきゃいけないことはたくさんあるのに、
思い立ってついついこんな文章を書いてみる。
最近、スラッシュメタルをRevisitしたり、
90年代ヒップホップをRevisitしたり、
ブリットポップをRevisitしたりしていて、
たとえばBlurなんか聴くと、ブリティッシュロックの歴史が総括されていて(イギリスのバンドは総じてそういうものだけれど)、凄いなと感じるけれど
遅ればせながら90年代ヒップホップの代表格であるところの2pacを聴いてみたら、
見事なまでにアメリカのブラックミュージックの歴史の総括であることと(ヒップホップは総じてそういうものだけれど)、
意外なまでの音楽的な豊かさに驚いてみたりした。
そういった決定的な作品というのは、
結構90年代に出ていたりするので世の中的には、
やはり2000年代以降のバンド、アーティストというのは、
なかなか本当の意味で新しいことをするのは難しいのかなと思うけれど。
先日もちらっとどこかで書いたけれど、
それじゃあブリティッシュロックなり、
ブルーズなりファンクなりブラックミュージックなり、
カントリーであったり、
そういう伝統であるとかバックグラウンドやアイデンティティみたいのがある中で、
今の時代に生きている日本人である僕らに
どんな音が鳴らせるのかってことを前から考えていたんだけれど
日本人って言ったって
三味線抱えて生まれてきたわけじゃないし
家族の中にピアノを弾く人間はいたけれど
尺八を吹く人はいなかったし
そういえば母方の祖母は大正琴を弾くけれど
つまりはどうしても僕らは
日本の古い伝統から一定のところで切り離された
第二次大戦後の現代日本の文化の中で育ってきたんだよね
そういう社会の中で、そういう教育を受けて
そういう価値観のもとに。
自分が曲を作ると
どうしても求めてしまう感覚というものがあって
それは自分がほんの幼かった頃の
1歳とか3歳とか5歳とかの感覚なんだろうけれど
1970年代終盤とか
1980年代の前半頃とかの
そういう感覚を求めてしまう
たとえばアメリカの人と話すと
彼らはミリタリーっていうのか
米軍とか、たとえば軍人の人達をすごくリスペクトするじゃない
リスペクトというか尊敬というのか
社会的にそんな感じで
軍隊のことを、すごく尊重というか、誇りにも思ったりとか
自由を守るために戦う的な
それって日本人から見ると
やっぱりちょっと違和感があったりもするんだけれど
じゃあ日本で言うと
平和ってことをすごく言うじゃない
憲法9条とか言って。
一見正反対のようだけど
それって結構、同じ感覚なんじゃないかって。
コインの表と裏というだけで。
日本には平和憲法ってものがあるし第二次大戦後の日本は
そういう国の形のもとでやってきてるし
軍隊は持ちませんよって言ってる
自衛隊ってものがあるのはみんな知ってるけど
世の中ってものを考えれば
世界や人類の歴史や現実を見れば
国ってものに軍備とか国防は必要ですかって聞かれたら
それは必要に決まっているわけで
少なくとも今はまだ
ただ、第二次世界大戦後に日本が
平和憲法を持って
平和国家ですよって言って
そんな無茶なことを言って発展してきたのも
それはそれでそれだけの価値があったと
僕は思う
ただその代償というものは現実には
それなりにたくさんあるわけで
実際のところ必要な軍事力は
みんな知っているとおり米軍さんが
提供してくれているわけなんだけれど
それって占領とどう違うのとか
それを人質にどれだけのあれやこれやの見返りを
支払っているのかとか
現実を知らない僕にはなんにも言えないんだけれど
ただ、そうした犠牲や代償があったにしても
(政治というものはどちらに動いてもどのみち人が死ぬものだと僕は思っている。まるで巨大な車輪のように。)
そうした犠牲や代償があったにしても
第二次大戦後の日本とアメリカの関係は
同盟というよりはほとんど結婚のようなものだったと思うんだけれど
たとえそれが平等な結婚ではなかったにしても
それはそれでそれなりに幸せな婚姻関係だったんじゃないかと僕は思っている
経済的なことや
軍事的なことをギヴアンドテイクして
お互いに第二次世界大戦後の発展は
日本もアメリカも互いの存在を抜きにしては
たぶんこれほど実現しなかった
そして
少なくとも日本はその後数十年間、
平和で
経済的に発展した
平和で
平和で
平和な社会として
世界に存在して暮らしてきた
それだけでも、この無茶きわまりない平和憲法と
いびつな国の形とアメリカとの不平等な婚姻関係に、
一応それだけの価値があったんじゃないかと
僕は思っている
そして
そういう中で僕らは
そういう平和な社会の価値観の中で
そういう教育を受けて
育ってきた
しかし
その価値観は
嘘っぱちなんだということが
わかってしまうわけだ
経済的な発展とか
安定した生活であるとか
終身雇用サラリーマンであるとか
見せかけの平和であるとか
理想からほど遠い社会正義であるとか
そのいびつな社会の裏に
どれだけ矛盾と歪みがあって
嘘の上に成り立っている社会
嘘の上に成り立っている平和と発展
そうしたものが
どれだけ本来の人間性というか
本来の人間の姿に反しているか
ということに
気付いてしまうわけだ
気付くもなにも
僕たちの世代
いわゆるロストジェネレーションに含まれる
は、
90年代を通じて起きた価値観の崩壊を通じて
そういったものから放り出されてしまった
だから僕たちは、
その「戦後日本の価値観」の
その先を探さなくてはならなかった
それをどんなふうにして探すのか
その先に何を見つけるのか
それは、誰が助けてくれるはずもなく
個人個人がそれぞれにやっていったはずだ
僕自身も、人知れず、それなりに旅をして
その先の世界を見つけてきたはずだが
世界の中で自分たちの伝統やアイデンティティというものを
あらためて問いかけたとき
自分が育ってきたのは
その平和な戦後日本の社会の中だったというところに
突き当たった
自分の生まれた国では
平和というものが信じられていた
平和な世界というものが理想とされ信じられていた
(それはそれで、無理もあったかもしれないが)
そのことは、間違いなく自分が世界中に誇れることだ
なぜなら
自分の中から出てくる音やメロディというものを思うとき
たとえば自分は三味線を抱えて生まれたわけでも
琴の演奏ができるわけでもないが
自分は平和な社会の中で育った
そして、平和な国で育った人間にしか
鳴らせない音というものがあるからだ
それは、アメリカの都市部のゲットーで育った人間にしか
鳴らせない音楽があるのと同じだし
たとえばジャマイカの貧民街で育った人間にしか
鳴らせない音楽があるのと同じことだ
ただ、先程も言ったように
その、あるいはハリボテに過ぎなかった
その戦後日本の社会の価値観から放り出されてしまった僕たちは
その先を探さなくてはいけない
だけれども
ひとつ良い事を言えば
国とか社会というものから
放り出された僕たちの中に
すでに「国家」という概念はない
たぶん「民族」という概念もないし
「宗教」という概念もない
(まあ僕はキリスト教徒やってるけれども)
あるのは個人というか
インディヴィジュアルという概念だけだと思う
民族主義も国家宗教も伝統からも切り離された僕らには
それしか残らなかっただろうから
国家とか民族とかそういう概念で言うのであれば
そういう意味で言えばこれから日本はゆっくりじっくり確実に
衰退していくのかもしれない
そう感じ始めてもう20年は経過して
ここまで来るともう避けようがない段階に思えるし
ていうか、無茶な平和の理想を(自発的にせよ押し付けにせよ)
掲げた時点で
国家としては終了する運命だったかもしれない
少なくとも、僕たちの世代の中で
日本、というよりも
自分たちにとっての母国という存在は、国家という概念とともにとっくに終了して滅びているだろう
だけれども、その枠を超えて
生きていく運命がある
民族という概念を捨ててでも
インディヴィジュアルとして
生きていく未来がある
そして、その枠を超えて
世界に対して発するメッセージと
責務がある。
そう思っているんだよ
これはOnce in a lifetimeだと思う
というよりは、千載一遇だと思う
Once in a historyというか
人類史上のうちで
それだけ崇高な精神と魂と
理想と使命を持った民族だと
それでも信じている
美しいものっていうのは
滅びる運命にある
優しすぎる人みたいに
でも、滅びてからも
実は美しいんじゃないかって
そこから実はやれることがあるんじゃないかって
旧い価値観に放り出された
旧い枠組みに放り出された
って意味でいえば
日本だけじゃなく世界中の若い人達に
同じ状況があると思うし
そういった世代が、皆でできることが
あるのかもしれないし
これから日本の国の形も
どう変わっていくかわからないけれど
自分は平和な国に生まれた
平和な時代に生まれた
その事実と誇りは
自分はずっと忘れないだろう
音楽について書きたかっただけなので
歴史とか政治とかについては
これ以上突っ込んで書かない
大して知らないし
絶対もめるし
でも、どうひいきめに見ても
国家に軍隊は必要だということは事実としても
60年以上にわたって平和(平和ぼけ)に
生きてきた現代の日本人と、日本という国家に、
今更強力な軍隊を持ちなさい、と言っても、
すでにそれは現実的に無理なんじゃないかとも思う。
すでに国家というものを失っている僕らが
国家というもののために戦えるのかという根本的な問題もある
たとえば明治維新を戦った英雄たちにしたって
描いていたのは
より平和で
より自由で
より豊かな
「より良い世の中」
だったんじゃないかなあ
その先へ
行きたいと思うんだよね