またギアトーク。
一応、海外向けに(結果的に、だけど)バンドやってる身としては、日本人のアイデンティティということは意識していることもあり、昔から日本製の楽器や日本製のギアということに関してはこだわりは持っています。
たとえば80/90年代の「共和商会時代」の日本製Jackson/Charvelであったり、
下町が誇るハンドメイドAlbit/Cranetortoiseのペダルがいつも足下にあることであったり、
Van Halenモデルのギターの中でも、日本製のAxis-EXを選んで使っていることとか。
で、2年ほど前にBacchusの愛称「猫ポール」と出会って以来、その「これこそが日本製の最高のものだ」と言いたくなるような楽器としてのクオリティにほとんど衝撃を受けて、それ以来Bacchus/Headway/Deviser社の大ファンになってしまい、自分でDeviser社の楽器を手に入れて演奏することはもとより、周囲の人にもすすめるようになってしまったんですが、
うち(Imari Tones)のはっしー先生もついにBacchus製のベースを手にすることになりました。
とはいえ、もともとLakland USAの最高のベースを所持しているはっしーのことなので、これはサウンド的な特定の目的があって入手したものであります。
つまりは、これから近い将来にImari Tonesがバンドとして取り掛かる、「今度こそ本当に最後になる可能性が高いぜ」的なアルバムというか作品、コードネーム「鍋島」ですね。
その「鍋島」のサウンドを完成させるためにバンドの戦略上の武器の調達であります。
つまりは「鍋島」は言ってしまえば和風ハードロックなので、その和風テイストを表現するために真の意味で日本製の楽器といえる特性を持った楽器が必要だと感じたからです。
そのためにここ数ヶ月、リサーチを重ね、そしてはっしーと一緒に楽器屋をめぐって、エレクトリックベースというものに向き合ってきました。
そしてその中で、エレクトリックベースというものの奥深さ、難しさというものを垣間みると同時に、そこにどんな可能性が詰まっているのか、少しは学んできたつもりです。
さて、ともかくも「鍋島」ですが、
そもそもが現在Imari Tonesは、9月にリリース、発表予定の”Revive The World”の次の作品となるコンセプトアルバム「Jesus Wind」(仮)の楽曲に必死になって取り組んでおります。これも決して簡単な作品ではなく、また今までのImari Tonesの作品の中ではもっともヘヴィメタル色が強いものになる見込みですが、
「鍋島」はその次に作る予定の作品ということになります。
「Jesus Wind」のレコーディング、録音制作もいつになるのかわからないくらいなので、この「鍋島」に取り組んで、形にすることができるのは、いつになるのか、想像もつきません。
なので、このはっしー先生の新しい武器であるBacchusベースも、「対鍋島専用兵器」であることを考えると、人前でお披露目するのは、まだまだずっと先のことになるだろうと思います。
で、これは、BacchusのTwenty-Fourというモデル、それの、レギュラーモデルではなく、限定モデルの、サクラトップという仕様のものです。
つまりは、桜の木をトップ材に使っているものですが、僕が「鍋島」に求める和風のサウンド、たかだか桜の木をトップ材に使ったぐらいで、そういったニュアンスが出るものなのか。そう疑問視していたんですが、結果として、出ちゃったので、まぁ、出るんならそれでいっか、という感じです。
以前にも日記に書いたようにこのTwenty Fourというベース、Bacchusブランドのベースの中ではフラッグシップ的な位置づけのモデルではありましたが、どうやら昨年2014年をもって生産中止になっている様子。
これはバッカスの楽器の中ではギターのDukeにも言えることですが、もともとHandmadeシリーズの楽器は生産数が少ないのか、このTwenty Fourというモデルも、楽器屋さんでもネット探してもなかなか見つからないモデルなので、それの限定モデルということで、かなり貴重なものと言うことができます。
で、先日のImari Tonesのスタジオ練習で、このベースの音を初めて出してバンドで合わせてみて、わかったことがいろいろとありました。
そして、この「エレクトリックベース」というものについて、これまでいろいろリサーチしてきましたが、自分たちのバンドで合わせてみることによって、「ああ、そういうことだったのか」ということが体感できましたので、後学のために書き記しておく次第です。
まずはやはりとても難しい楽器でした。
セッティングも難しいし、曲ごとに音を合わせるのも難しい。
そして演奏の面でもおそらくは難しい。
あれですね、ここは面倒なので結論から書いていきますが、
この楽器は、たとえば車で言うならば、一般の乗用車に対するスポーツカーのようなものだ、ということが言えると思います。
つまり、乗用車というものは、多くの人が乗り、そしてまた安全性が重要なので、その操作、運転は難易度が低く設定されている。つまり、ハンドル、ステアリングの反応であるとか、ブレーキやアクセルの反応とか、遊び、あとはギアとか。
俺はクルマは本当に全然くわしくないんで、うまく書けないんですが、つまり乗用車というのは、それらのものが安全に平易に運転できるよう作られている。
対して、スポーツカーというものは、ステアリングの反応も鋭く、ブレーキやアクセルも反応に遊びというものはなく、鋭く反応する、そしてギアだとかエンジンとのやりとりとか、なんかいろいろたぶんあるんですよね、きっと。それはつまり、普通の人では、なかなか乗りこなせない難易度の乗り物なわけです。
で、ひるがえって、エレクトリックベースという楽器。
まあ、ギターも同様なんだと思いますが、
一般に、市販されているエレクトリックベースというものは、楽器の時点で、それなりに良い感じに問題のない、扱いやすい音にチューンナップされていると思うんですね。
それはつまり、世の中でそれらの楽器を使う人々は、必ずしも自分で音を判断し、作れる人ばかりではないからです。
そして、その「チューンナップ」の内容は、必ずしも楽器を鳴らす方向だけでなく、鳴らないように作る、ということも含まれていると思います。
自分もIbanezの安いベースなど使ったことがありますので、たとえばその安いIbanezとか、安いわりにはぜんぜん使える音なんですが、そういう楽器もおそらくは、本質的に鳴らすという方向性だけでなく、鳴らないようにするという方向性でもって、安くても良い感じの使える音を出すようにデザインされているのだと想像します。
そして、またも自分はクルマに詳しくないので、たとえが適切ではないかもしれませんが、はっしーの愛用してきたLakland USAなどは、たぶん自動車で言うならBMWとか、そういう位置づけだと思われ、それはそれで、高級さと実用性を兼ね備えたポジションに、良い感じにチューンナップされているのだと思います。
それらに対して、このBacchusのHandmade SeriesのTwenty Fourなんですが、なんというかそういう意図的なチューンナップがあまりされていない、めっちゃストレートな鳴りをします。これをもって、一般の自動車ではなく、スポーツカーのようだ、という印象を覚えたのですが、上から下まで、すべての帯域が、鋭い反応でズバっと鳴る。
特に、特徴的なのは上ですね。ハイの部分。
まあ、もちろん、ハイミッドあたりに「桜トップ」ならではの特徴的な倍音?がもりもり乗っているのもポイントなのですが、
これは僕が個人で使っている同じくBacchusのTF-Ashにも言えることではありますが、「ベースって、こんなにハイって出るんだ」みたいな感慨があります。
これは逆で、むしろ本来はベースという楽器は、きちんと作れば、これだけ鋭いハイを発音するものなのだ、ということでしょう。
一般的なエレクトリックベースは、そのハイやハイミッドの部分を抑制して、使いやすい音に仕上げてあるのではないかと想像するわけです。
壁のようなローやタイトなローミッドだけでなく、このハイやハイミッドの部分までも、プレイヤーの側で制御し、デザインし、コントロールしなければならない、と。そのあたりまでプレイヤー側の責任、そして自由度として、任せられていると。
そのかわり、楽器としてはすべての帯域でシャープな反応と最高の鳴りは確保してあるから、あとはそっちでうまく生かして使ってね、と。
これは、めっちゃハードルが高い楽器なんですね。
音作りでも、アンサンブルでも、演奏技術の面でも。
どうハードルが高いのかは、その領域を体験したプレイヤーだけが知っていると思うので、うまく書けないし、書きませんが。
でも、ひとつ例えるならば、一般的な楽器が、たとえば設定によって10種類くらいのサウンドが出せるとすれば、この楽器はたぶん、100種類くらいの音を出すことができるでしょう。それくらい、反応や設定が細かい、というか。
Bacchusのベースの中でもいちばんの売れ線モデルであるWoodlineは、一般的なジャズベタイプの形をしているし、あるいはもう少し平易に作ってあるかもしれませんが、基本的に、Bacchusのベースのデザインの根底にある考え方は、そういう感じなのかもしれない。
つまりは、安心できる乗用車ではなく、反応の鋭いスポーツカーに近いタイプ。
今まで、楽器屋さんで、このTwenty Fourのアッシュ製のレギュラーモデルを試したときに、「反応はソリッドだけど、なんか素のままっていうか、素っ気ない音だな。どういう場面でどういう用途で使えばいいのかいまいちわかんない。」っていう印象を持っていたのだけれど、こうしてバンドで鳴らしてみると、その本質というものがよくわかった。つまりは、鳴りまくるエンジンと、鋭い反応速度の周波数特性のステアリングを持った、「走り重視」のスポーツカーだった、ということだと思う。
もちろん、じゃあ、ベンツとかBMWとかと比べて、スポーツカーがより優れているのかと言われれば、それは違う。特に音楽は速度ではないし、「乗り味」という面で、素っ気ないスポーツカーよりも、高級車の方が優れていることは当然ある。それに、はっしーも言っていたが、「公道でスポーツカー乗ってもギアを2速までしか上げられない」的なパターンになるので、こういう反応速度の鋭い楽器が必要とされるシチュエーションというのは限られている。
だが、前述のように、これから僕らが取り組む「鍋島」はそのスポーツカーの速度と反応が求められる世界なのだ。
とにもかくにも難しい楽器なので、これからのリハーサルで試行錯誤しながら使い方を研究していくことになるだろうし、また、その破壊力もすさまじいので、下手な使い方はできないぶん、すぐにImari Tonesのライヴで使えるかというと、そういうわけにはいかない。
だけれども、「鍋島」へのチャレンジに向けて、うちのベースドライバーに、このモンスターマシンを乗りこなす訓練をしてもらうことになるだろう。桜の色のついたモンスターマシンを。
とにもかくにも、エレクトリックベースというものは、本来、きちんと手加減なしに、ストレートに作れば、これほどに鋭く、タイトで、帯域の広い、またかくもいろいろな種類の音を出すものなのだと、正直驚かされた。
開いた口がふさがらなかった、と言っていい。
でも、アンサンブルの中でこの音を調和させるのは、並大抵じゃないぜ。
だから、HandmadeシリーズのTwenty Four、既に生産中止になっているモデルではあるけれど、誰にでも勧める、というわけには、いかないな。
すごく、難しい楽器だ。
それにこれも前に書いたけど、セパレートブリッジの旧モデルは、もうちょっと音が鈍かったので、そっちのことは、よくわからんぜ。でもやっぱり、そっちもきっとスポーツカータイプなんだと、思う。