「鍋島」を考えての不遜なマイクプリトーク

不遜、というのは、オーディオ、音について語る、なんて、分かってもいないのに身の程知らずであることが前提で。
本職のエンジニアの人が見たらきっと笑われるだろうな、という前提の下に(笑)

 

こんなこと書いてる場合じゃないとは言いつつも、心身の調子があんまり良くないので。

「鍋島」を作るにあたってのマイクプリってことを考えている。

もちろん「鍋島」の制作に取り掛かるのはまだ当面、先のことだし、どのような形で、どのような状況で作るのかも、まだわからない。

だから、今考えているのは、手近な環境で、これまでのように、自主録音で作ることを前提としての考察だ。

 

前に書いたみたいに、「鍋島」作るにあたって、「オーバードライブ」「アンプ」「インターフェイス」「マイクプリ」この4箇所は考えてみる必要があると思っている。

オーバードライブのペダルに関しては、これは僕にとってはアンプをブーストするためのものだが、Shoalsで問題ないとは思いつつも、より汎用性の高い王道なものも考えており、先日からチューブスクリーマーのMOD品が気になっているのは先述の通りだ。

アンプ、ギターアンプのことだけど、これは本当にややこしい話だから、今は書くまい。

また、インターフェイス、つまりパソコンにつなぐところのオーディオインターフェイス。これも本当は見直すべきなのだけれど、予算の問題とかバージョンの問題もあるし、実際のところ、これは些細な微妙なポイントでもあるので、そのままでも構わないと言えば構わない。

 

ただ、マイクプリっていうのはそれ以上にやっぱり影響が大きい、基本的なサウンドの色付けを行うことが可能な箇所であるから、そこについて考えてしまうことの方が多い。

 

で、ここから先は、貧乏人の考察だ。

つまり、お金をかけずに、常に少ない予算で、しかもほとんどのリッチなバンドマンさんに比べたら、本当に笑っちゃうくらい少ない予算で、ここまでずっと制作をしてきた、売れないインディーバンドの、偏屈な価値観を持つ人間の話である。

 

だから、これまで使ってきた機材も、とても安くてありふれたものばかりである。

(しかも、最新のものとかはあんまり使っていない)

 

– つまり、僕がこうやって自分の弱小インディーバンドの録音制作について、いろいろ考えたり、書いたりするってことは、
つまりは、いつだって、前提として本当にいつでもそうなのだが、
現代における状況として、
予算がちゃんとあり、優れた一流のスタジオと、優れた環境で、技術と経験を持った人々とともに、本来の意味で優れたレコーディングが出来るのであれば、それが一番良いに決まっているが、

僕は無名のしがないバンドマンであって、そういったことも不可能であるからして、
どのように貧乏録音をしていくか、と考えているのである。

ロックの黄金時代に、いや、もちろん現代にだって、どの時代にだって才能を持った優れたミュージシャン、アーティストの方々は存在するだろうけれども、

そういった一流の人間が集まり、一流の技術と潤沢な予算、人類の英知の結晶とも言える機材を使用して作り上げた、人類の財産とも言えるようなロックの名盤たち。
そういった録音が出来れば、素晴らしいのだが、そして、そんな録音に取り組む人たちを大いに尊敬しているが、
そうではない今の僕のリアリティで素人なりに語るのである。

 

これは、前提であるが、一応、書いておかないと恥ずかしいことだから、誤解の無いために書いておくのだ。

 

で、本題だが、「鍋島」は基本的に、レトロ趣味の作品であるので。

もちろん、うちのバンドの作品は今までも全部レトロ趣味だったではないか、と言われるとその通りなのだが、より一層、レトロ趣味に走らなくてはいけない作品なのである。

そんで、そのぶん、レトロな「品位」みたいなのが欲しいわけだ。

 

で、一番、てっとりばやいのは、Calling Recordsの仲間であるところのXieさんのスタジオにVintechがあるので、それを使わせてもらっちゃうことである。

Vintechと言えば、世の中にあまた存在する「Neveトリビュート」というのかNeveクローンというのかNeve系のマイクプリ、アウトボード、の中でも、最高の部類に入るものであろう。

そんなものが、目の前にあるのだから、普通に考えれば、それを使うのが一番良いというふうに考えるのが自然であろう。

(ただ、その前提として、あの場所、Xieさんの所有スタジオで、僕がギターを鳴らすにあたってはいくつかの問題があるので、それらを解決できたらの話である。)

 

だが、ここまで色々考えてきて、ちょっと皮肉な感じもするが、

僕は本当にその「Neve系」の音が好きなのだろうか、という疑問があるのだ。

 

僕が「鍋島」において、レトロ、ヴィンテージな方向性の音作りを指向しているのは間違いない。

だが、それは果たしてNeve系の音なのか。

違うものなのか。

 

改めて書くが、貧乏録音をしてきたインディーのバンドマンなので、じゃあ実機のNeveのコンソールなりアウトボードなり、さわったことあるんですかと言われたら、無いので、憶測で書くしかないのだが。

でも、たとえばパソコンの中のプラグインで、Neveのシミュレートみたいなのはいっぱいあるじゃん。それらを触ってみたり。あとは、Xieさんのレコードもそうだが、これもCalling Recordsの仲間であるソルフェイのオオハラ氏が使用しているFocusriteの定番機材であるISA ONEなんかもNeve系じゃん。

で、それらのNeve系のプラグインを、ITBのミックスの中で、色付けに使うのは僕も非常に好きなのだけれども、

マイクプリ、音の入口として考えた時に、どうも僕はこのNeve系の音が、あんまり好きじゃないように思うのだ。

 

それこそ、たかだがYouTubeだが、YouTubeのデモ映像の音なんかを聞いても、やっぱり、「違うな」と感じることがほとんどな訳である。

もちろん、それは単に僕の耳が悪いとか、僕の趣味が悪いだけかもしれない。

> Neve系といっても、いろいろあり、本当に良い状態の本物は、きっと違うのだろう。

 

Neve系にも、モダンなもの、古いもの、色々あると思うので、一概に言えないのだろうが、

基本的にNeve系は、中域とか低域とか、太く張り出してくると言われるが、
基本的には「引っ込む音」であると思う。

たぶんこれは非難、批判、否定のコメントがいっぱいつくだろう、という感じであるが(笑)

もちろん太いミッドの張り出しは、ミックスの中で「出てくる」要素ではあるが、全体の音としては、Neve系の音というのは「引っ込む音」なのではないかという認識が、僕の中にはある。

そんで、ハイエンドに独特の曇り感がある、という印象がある。これも間違っているかもしれん。

>> いろいろな音源を聴くと、実機のNeve系マイクプリには倍音ともなんとも言えない独特の「重み」があるらしく、その重みこそが、ミックスの中で「前に出てくる」効果を生むような、気はする、と推測するが、たとえそうであったとしても。

 

では、そのNeve系の音が、録音とか、レコーディング業界で重宝されているのは、その音のキャラクターが、「演出効果」として有効なものであり、また「武器」となり得るからだと思う。

Classyで雰囲気のあるハイクラスな音、という意味で演出となり、武器となるのだ。

そして、これに関しては、「聞いたことのある音」「おなじみの音」という要素も大きいと思う。

 

逆に、SSLの音が、

なんて言ったら、それこそSSLなんて実機のコンソールとか触ったことあるのか云々、以下省略であるが、

逆にSSLの音は、「太いけどクリアで、ハリのあるパワフルな音」といったものだと思う。

Neveの音がどちらかと言えば「引っ込む」特性なのに対して、SSLはたぶん「クリアかつパワフルに前に出てくる」音なのではないかと認識している。相対的にNeve系の音よりも「ハイファイ」であると思われる。

そして、これも同様に、その特性が録音の中で、ビッグなロックサウンドを演出するための「武器」として有効だったから、SSLは定番となり世界を席巻したのだと思う。

 

Neve対SSLみたいな議論はオーディオの世界であれ、僕らへなちょこバンドマンの間であれ、これまでに一千万回くらい議論されていると思うが、

事実上の勝者はSSLであり、アナログコンソールの王者はSSLっていうのが、たぶんこれまでのところ、歴史の証明するところだと思う。

 

じゃあ、今の僕にSSL系の音が必要なのかと言われれば、それはたぶんノーだ。

超メジャー級のワールドクラスのビッグな音を作りたいわけじゃないから。

僕らは、インディーの貧乏くさい音を作っていく方向性で、ずっとやってきたわけなので。

 

録音、オーディオ制作ってのは不思議なもので、

そして、歌詞ってことについても同じことを僕は言うのだけれど、

歌詞で、言葉にして「愛してます」っていうのは簡単なことで。

でも、実際にサウンドの方が「愛してます」って言っているかというと、必ずしもそうではなくて、その逆のことも多々ある。

 

けれど、言葉とか、看板に書かれた「愛してます」っていう言葉は強調されて、誰にでもわかるけれども、

音、サウンドの上で、(言葉を介さずに)表現された「愛してます」っていうメッセージは、誰にでも聴き取れるものじゃない。

これは、とても遺憾なことだけれども、残念ながら事実だ。

 

それと同じことで、録音制作の音作りにしても、

この機材を使い、この方向性の音作りをすることが、「どんなメッセージ」を持つことになるのか、
それをわかる人間は、たぶんあまり多くない。

 

バンドマンが録音制作をする時に、よくある考え方のひとつは、

「憧れの誰々みたいな音にしたい」というものだが、

もうひとつよくある考え方は、

服を着る時と同じように、
見栄えの良いものにしたい、というものではないかと思う。

つまり、しょぼい音にはしたくない、立派な音にしたい、ゴージャスな音にしたい、派手な音にしたい、そしてできることなら「今っぽい」音にしたい、とか。

それはどちらかといえば、社会的に、人の目を気にする考え方である。

(否定はしない。音楽というものが、コミュニケーションであることを鑑みれば、当然のことでもある。)

 

だが、そういう考え方は、僕にとっては、自分の伝えたい音楽表現をするためには、だいたいの場合、邪魔になってくる。

だから、SSLであれ、Neve系であれ、「着飾る」ための演出であるのなら、僕は必要ない、と言っているのである。

そして、アウトボードの実機であれ、コンピュータの中のプラグインであれ、現代の世の中には、そうした「着飾る」ためのツールが溢れているだろうと思う。

(それは、デジタル録音が普及し、「レコーディング」というものが、プロのエンジニア向けのものではなく、一般の消費者向けの市場になったからである。)

 

さて、そうしたオーディオ録音機材の世界においては、「ニーヴ、ニーヴ、Neve」というのも売り文句として盛んに言われていることだと思うが、

近年よく言われていることとして、「トランスフォーマー、トランス」ということがあると思う。

そして、10年くらい前までは、これは「チューブ、チューブ、チューブ、真空管」みたいな感じだったと記憶している。

みんながチューブチューブ言っていた時代から、トレンドが変わり、トランス、つまり、電気の知識ないけど、オーディオ回路の中にある、トランスフォーマーっていうのが、音作りにおいて重要だ、との認識が、広まったらしい。広めたのは誰なのかは知らない。アウトプットトランスが、どうとか、Cinemagとか、そういうのみたい。

 

これって、オペアンプにも似たような議論というか、crazeというかハイプがあると思う。艶があるだのないだの、bur brownだのtexasだのマレーシアだの。ちなみに、電気的な知識がないので、オペアンプというものがどういうものなのか、これも僕は知らん。

 

チューブもそうだが、本当にそんなもんが必要なのかしらん、と、僕は敢えて考える。

そもそもが、ハイファイ、クリアな音質、ありのままを録音する、という意味においては、デジタル録音はある意味、理想であり、僕たちはその理想を、とっくの昔に手に入れているはずだ。

だから、アナログだの、チューブだの、トランスだの、どっちにしても、それは音を汚すための試みなのだと、思う。

 

そのまんまのありのままの音をトランスペアレントに正直に録音するのであれば、たぶん、すごく安いコストで、技術的には出来るはずだ。

だけれども、不思議なもので、僕たちは物事をどうしてもお金の数字で測ることもあり、また資本主義社会においては高いものを売ること、買う事、が正義であり美徳であるから、僕たちは高いお金を払って音を汚すことを、高級であり崇高であると考えるようになる。

 

もちろん、その汚し方の中にこそアート(技術)があるので、それはもちろん、間違いではない。

でも、そこをいっぺん疑ってみることは、決して悪いことでは無いはずだ。

 

もいっこ言えば、録音制作とは、全体的な戦略のことである。

これが、素晴らしく環境の整った、つまり音響がきちんと計算された部屋と、電源や配線まで細心の注意を払って構築されたシステムと、きちんとしたモニターシステムが整った、一流のスタジオで録音する場合と、

貧乏バンドマンが、身近な環境の中で作る場合には、そもそもの戦略が変わってくるということだ。

 

だから、一流のスタジオで有効な機材や、手法が、同じことを貧乏バンドマンが自分の環境の中で行っても、たぶん結果は違ってくる。

そこを考えた上で、機材の選択であれ、録音の手法なり、考えなければいけない。

そもそもの方向性や、狙いの部分から、考え直した方がいい、ということだ。

 

今の時代には技術的、機材的な選択肢はたくさんあるのだから、では、メジャーなスタジオの手法、方向性ではなく、貧乏バンドマンだからこそ可能な手法、方向性とは何だろう、ということを考えなくてはいけない。

だから、「高級だから」ということで下手に音を汚すよりは、素直に録った方がいいかもしれない。

一流のスタジオでは、そもそもめっちゃクリーンに録れる環境だからこそ、汚すことも有効な手法となるわけで。

逆に思いっきり汚すことも出来るけどね。

戦略もなしに中途半端な手法を取ることが、いちばん良く無い、かもしれない。

 

で、ちょっと話がそれたけれども、

もういっこ、逸れたついでに、とりとめもない、実体の無い話をすれば、

サウンドを語る時によく使われる言葉として「アメリカン」「ブリティッシュ」という言葉があると思う。

これもかなり信用ならない、曖昧な言葉だ。

たぶん人によって、定義は曖昧に違いない。

 

だけれども、敢えて使うとすれば、
うちのバンドの立ち位置っていうのは、何につけても独特、というよりは、微妙なところで。

もともとが、僕は、Van Halenに憧れてやっている人だから、アメリカンハードロック、アメリカンサウンド、っていう方向性が、いちばん憧れる。

けれども、ヘヴィメタルという音楽、ジャンルについて、僕が複雑な、LoveとHateの交錯した、メタルなんか好きじゃないぜ、とか言いつつ、しょせんヘヴィメタルというものを愛している、僕の心情からすれば、

そして、メタルなんて嫌いと言いつつ、僕が本当に好きな「ヘヴィメタル」とは、実はJudas Priest「だけ」だった、という事実を鑑みれば。(最近のは、一定の評価をしつつ、それほど評価していないけれど。)

僕が本当は、その「ブリティッシュサウンド」というものにも、心情はともあれ、体質的にはすごく憧れている、というのも事実で。

 

で、日本のバンドならではのサウンドって何だろう、って考える時に、ジャパメタの歴史とか鑑みて、いろいろ考えるんだけれども、

その中のひとつとして、BritishとAmericanのいいとこ取りをすればいいんじゃないか、という方向性がある。

そしてこれは、何につけても微妙な中途半端な立ち位置であり、(メタルなのか、メタルじゃないのか、そこすらも定かではない位置にいる)、「日本のクリスチャンメタルバンド」なんていう、やっぱり微妙な立ち位置にいる僕らとしては、

文化の橋渡し、cultureのgapを埋めるbridgeとしての役割が、僕らの存在の本質であると考えれば、

このブリティッシュとアメリカンのいいとこ取り、というのは、日本のバンドならではの役割であるとも言えると思う。

 

まぁ、薄味になるんだけどね、どうしても。

日本食って薄味だし。

日本は電圧も100Vと低い設定だし。

 

そんな方向性でやってきたけれど、

自分たちの作品で振り返るならば、

リリースした中では前々作にあたる”Revive The World”に関しては、

あれは録音について適当に考えていた時期の作品で、

「古いM-Audioのインターフェイスで」その「古いM-Audioについていたマイクプリをそのまま使って」作ってしまった作品だ。

本当に安価なものだ。

ただ、そんなに「クリスタルクリア」ではないものの、その古いM-AudioのインターフェイスのAD/DAのキャラクターは、結構気に入っている。USBの部分はダメな時代のものであったから、インターフェイスのアップデートを考えているのはそのUSB接続うんぬんの部分なのだけれど。AD/DAの部分については、良い時期だったようで、そのキャラクターは結構好きだ、ということだ。

で、これは、さらに昔に使っていたEcho社のデバイスと同様のチップを使っているらしい、と、Sound on Soundか何かの記事に書いてあった。そのEcho社のデバイスは、僕は「Kodomo Metal」とか「Entering The New World」の頃に、ずっと使っていたのである。だから、違和感なかったのかもしれない。

 

で、そんな安い機材の、内蔵マイクプリで作ってしまった「Revive The World」のサウンドがダメだったかというと、そんなことは無くて、

マイクプリのレンジの狭さが幸いして、そして、何も考えずに使っていたリハスタのレンタルのRode NT-1Aのマイクのキャラクターも幸いして、

うまい具合にレンジの狭いのがはまって、良い具合の音におさまったのである。

それは、聴いてもらえばわかると思う。

 

ジャンクなデジタル時代の、安価なジャンク機材を使ったが、結果的に、レトロ趣味なサウンドを作り出すことが出来たわけである。

ラッキーな偶然と言えばそうかもしれないが、これって、意外と、デジタル時代の録音の真実を、ちょっとだけ突いているようにも思える。

 

だから、なんだかんだ、あの古いM-Audioは、ある意味名機だった、というのが、僕の認識だ。作品でいえば、「Japan Metal Jesus」も、そのM-Audioを全面的に使った作品である。ダラス、テキサスで録音の機会をいただいた2曲は別にしても。(2000年代初期の製品であり、その後のM-Audioについては知らん。)

では、そのダラス、テキサスできちんとしたスタジオで録音させてもらった2曲は、その安いM-Audioで自主録音したものに比べて、それほど違いがあるかと言えば、結論から言えば、大きな違いは無いのである。これには、色々な要素があるので、長い話になるが、ダラスで録音させてもらったその価値は十分にあったけれども、録音というものは、決して単純なものではなく、そしてやはり、とても難しいものだ、ということは言えると思う。

 

ただ、意欲作である”Jesus Wind”の録音にあたっては、さすがにもうちょっとマシなものを使おうということで、久々に自前のマイクを用意したし、マイクプリも用意した。

で、またまた、安物で、しかも古いもので申し訳ないのだが、この”Jesus Wind”のメインの音を作っているのが、JoeMeekの3Q(ThreeQ)っていう製品なのである。

昔から決して評判の悪くない、安いけれども評価の高い機材ではある。

だが、値段はたかが知れている。

ちなみに、その「トランス」なるものは積んでいない。

JoeMeekの製品でも、もういっこ高い「6Q」(SixQ)になると、トランスを積んでいるのだが、このThreeQはいちばん安い製品であるので、無いのである。

 

だが、このJoeMeek ThreeQという製品、どう考えても、かなり悪くない。

僕は、その昔、やはり同等の製品のいっこ前のバージョンであるJoeMeek VC3というやつを使っていたことがあるので、それが良い感じに結構「濃い目」のキャラクターを持っていることを知っていた。

アップデートバージョンであるThreeQは、VC3とくらべてちょっとハイファイになっているので、そのぶん「濃さ」は感じなくなっている気がするが、かといってやっぱり、十分な味付けがあるように思う。

そして、その音の方向性は「ブリティッシュ」だと言われている。

かなり曖昧な、信用ならない言葉である。

だが、昔から、もともと硬めの音を作る傾向がある僕としては、
比較的柔らかい音を持つJoeMeekは、貴重な選択肢だったのは事実だったのだ。

 

もいっこ、使ったのは、Eventide MixingLinkだったんだよね。

これは、一般には、マイクプリアンプとしても選択肢に入らないだろうし、そもそも録音機材としても認知されていないと思う。

というか、かなりニッチな、そもそも認知すらされていない製品だと思う。

たぶん、推測ではMackieとかとおんなじような方向性の使い方になる製品ではないかと思うが、音としては。

これが結構、悪くなくて、実際にハイファイ、クリア、フラットという意味では、JoeMeek 3Qよりもハイファイであって、リハスタに機材を抱えて行って自主録音する僕の立場としては、究極のモバイルツールとしての回答であったわけだ。

で、これは主にオフマイク用に使っていた。

でも、オンマイクでメインの音に使ったのはJoeMeekだったわけ。

 

で、JoeMeek 3Qが、機材の立ち位置として偉いと思うのは、

トランスも、真空管も積んでいないけれど、
素直にハイファイな中で、それでもしっかりと味付けがあるところ。
その、誤解を恐れずに言えば、「ブリティッシュ系」の、味付けが。

それが、たぶんうちの環境にはちょうど良かったんだと思う。

「トランス」なんて言ってもね、

それが、音が落ち着く、収まる、とか、サチュレーション、なり、実体感なり、色々言葉はあると思うんだけれども、

それをシミュレートするプラグインは今ではいくらでもあると思うけれど、

色々使った中で、「これはあなどれないな」というのが、同じくEventideのUltraChannelだったんだよね。

これって、あんまりそういう見た目でもないし、そういう売り方もされていないけれど、アナログ感と言ってしまうと語弊があるのだろうけれども、実体感を出す効果はかなりあった。だから、”Jesus Wind”のギターサウンドは、かなりこのUltraChannelの効果であると思う。

 

で、今度発表するところの、半年前(2017年年末)にレコーディングした日本語アルバム”Overture”についても、Jesus Windとほとんど同じ機材で録音して。

ただ、その手法とか方向性、音楽性はぜんぜん違うので。

“Jesus Wind”では、主にJoeMeek ThreeQはShure SM57のオンマイクで使ったのに対して、(ギターの話ね)、

“Overture”では、CADのコンデンサーマイクにつないで、そっちをギター収音のメインに使ったということ。

つまり、”Jesus WInd”のギターはSM57のダイナミックマイクの音だけれども、
“Overture”はのギターはCADのコンデンサーマイクの音だ、ということ。(曲にもよるが)

だから、単純な比較はあんまり意味はない。

 

けれども、ThreeQの音は、決してフラットではないんだけれども、素直だけどね、
MixingLinkの音と比較すると、MixingLinkの方がハイファイでフラットなんだけれど、

ミックスしてみると、やっぱり3Qの方が前に出てくる。これは、中音域が前に出ていて元気の良い音だ、ということだと思う。

 

“Overture”については、かなり急ぎ足で手を抜いて作ってしまったので、ミックスを失敗している曲もいくつかあるけれども、そうはいっても、その中で理想的なギターサウンドを録れた曲もいくつかある。

そして、その意味では、「鍋島」を作る前のテスト、青写真、としては十分な成果が得られた。

ギターを左チャンネルの一本だけ、っていうのも、久しぶりだったしね。

で、その中で、やはりこのJoeMeek 3Qの性能の高さを思い知らされるような場面も、いくつかあった。

 

この3Qがもうひとつ偉いのは、ブリティッシュ、とか言っても、それは、Neveとも違うし、もちろんSSLとも違う、ってところ。

WavesのNLSのプラグインを前から使っているけれど、(プラグインに関しても、もはや古いものしか所有していない、これは予算もあるが、MacOSのバージョンの関係で。)

そのNLSに内蔵されている3つのコンソールの種類の中では、このJoeMeekの音は、EMIの音に比較的キャラクターが近いように思う。

もっと言えば、2004とか2005年頃に、JoeMeekの製品のリニューアルに関わったエンジニアは、オリジナルのTridentコンソールを作った人であったらしい(と、これも確かSound on Soundか何かの記事に書いてあった)。

じゃあ、Tridentコンソールの音なんて知ってるのか、と言われたら、僕は全然知らん。

 

でも、僕が求めている「ブリティッシュ」の音は、Neveでは無いとしたら、このJoeMeekの音の方が、求めている音に近いのかもしれない、なんてことも思う。

かといって、JoeMeekも既に、あんまり現行で生きてないブランドだろうから、入手は難しいだろうし、そもそも、大きなラック機材を、僕の環境で使えるかどうかはわからない。

モバイルできる、コンパクトで軽い機材、という、すごく限られた選択肢の中で、どうやって音を作るか、という話である。

しかし、それも、最初に書いたように、Xieさんのところのスタジオを利用させてもらうのであれば、あるいはラック機材も選択肢に入れていいのかもしれないが。

 

だから、もういっそのこと「鍋島」も、この手元にあるスーパー安物でチューブもトランスフォーマーも積んでいないところのJoeMeek 3Qで作っちゃおうか、という気も、ちょっとだけしている。

音質とかハイファイという意味ではぜんぜん申し分ない。

どちらかといえば、もっと汚したい方向性なのだから。

 

音の品位という意味でも決して不足があるとは思わない。

“Overture”の音は、コンデンサーマイクで録ったギターの音だから、ちょっと軽い音になっている場面もあるが、

“Jesus Wind”のギターの音をあらためて聴くと、十分に「理想的な音」になっている。もちろん、色々のアナログを演出するプラグインの効果もあるが。

そう思うと、ThreeQが、シリアスなレコーディングに決して不足のある製品ではないことがわかると思う。

 

そんでもって、上に書いた「アメリカンとブリティッシュのいいとこ取り」みたいな方向性。これって、ギターから、ペダルから、色々な場面にも当てはまる話であるのだけれども、「Neveとは違うBritish」という意味でも、確かにこのJoeMeekは僕の理想に近い。そんで、トランスを積んでいないせいで、素直にハイファイなので、その明るさが、「アメリカン寄り」の効果を生んでいるかもしれない。あとは、「貧乏インディー」ならの距離の近いハイファイも。

が、もっとさらにやっぱり味付けをしたいと思うと、色々選択肢を考える。

 

それはね、スタジオにラック機材置けるのなら、選択肢いっぱいあるんだろうけれど、
くどいようだけど、持ち運びできるモバイル環境での機材のことですよ。

 

まっさきに気になったのはUniversal Audioの製品。

で、Universal Audioを見ると、現行品で610っていうのと、710っていうのがあるじゃない、なんかモバイルっぽいマイクプリアンプ。

で、610っていうのは伝説の製品らしく。

 

もちろん、Van Halenの大ファンの僕としては、気になるのは、これはVan Halenが、かのヒットアルバムである「1984」を作るのに使ったものだ、ということ。

というのは、あちこちで宣伝されていて、UAのウェブサイトにも、「この製品を使って、数々の伝説的なレコードが作られました」のリストの中に、誇らしげにVan Halenの名前が書かれているけれども。

けれど、今では、インターネット上でインタビュー記事とかたくさんあるから、エディ・ヴァン・ヘイレンのインタビュー記事なんか読むと。

つまり、これはEddieが、5150スタジオを建設する際に、当初は、本当に「臨時」って感じの簡易スタジオだったらしいんだけれども、

コンソールはどうしよう、って時に、そんな高いコンソールを買う予算はないぞ、ってなって、

そこで、パートナーとして一緒に仕事をしていた天才エンジニアであるDonn Landeeが、見つけてきたらしいんだよね、どこかのスタジオで、もう使われてなくて、壊れていて、廃棄される寸前の、古いコンソールを。

で、それがUniversal Audioのコンソールだった。

 

Donn Landeeは、二束三文でそれを買い取り、それを自分で修理して、使えるようにして5150スタジオに設置した、と。

だから、結果はどうあれ、別にエディは、「このコンソールの音が気に入った」と思ってUAのコンソールを選んだわけじゃなくって、ただの成り行きだったわけだ。

ファンとしては、そこのところは覚えておく必要がある。

 

で、インターネットでちょっと見た限りでは、エディはその後、1980年代を通じて、このコンソールを使い続けたはずだ。

もちろん、実際のギターやヴォーカルの収音の際に、別のプリアンプを使った可能性だってあるけれども、Van Halenのアルバムで言えば、「1984」「5150」「OU812」は、このコンソールで作られているのではないかと思う。

 

そして、1990年代に入ってからは5150のコンソールはAPIのものになったみたい。インターネットのフォーラムとか読む限りでは。

だから、「F.U.C.K.」「Balance」「3」の音は、たぶんAPIのコンソールなんだと思う。

 

ちなみに1stから、5枚目のDiverDownまでは、Sunset Sound Studioでレコーディングされているみたいだから、全部がそうかはわからないけれど、1stの録音についての記事を読む限りは、使われたのはカスタムコンソールらしいんだけど、そこに積まれていたのはAPIのモジュールだったらしいから、他のアルバムもそのコンソールを使ったのかどうか、もちろんわからないけれども、基本的にはやっぱりAPIの音なんだと思う、初期Van Halenは。

やっぱりそれは、アメリカンサウンド、っていうことになるのだろう。

 

まあ、経緯はどうあれ、1984アルバムの、たとえば「Panama」の、あのぱりっとした、暖かみのあるディストーションのギターサウンドは、やっぱりこのUniversal Audioの音なんだと考えていいはずだ。

そういう意味で、クラシックなアメリカンサウンドと思うと、やっぱりこのUniversal Audioは魅力的な選択肢になってくる。

 

んだけれども、では本当に僕はその伝説の610の音が必要なのか。

かなりの確率で、僕にとってはローファイ、ないしはダーク過ぎるように予想している。

ようするに、たとえヴィンテージとか言っても、しょせん僕は、ハイがしゃっきっと出てくれないと、ダメだと思うのよね。

 

伝説の音とは言うが、じゃあVan Halenで言えば、ヒットアルバムである1984のサウンドはともかくとして、「OU812」なんかは、もちろん人気の無いアルバムではないが、皆が異口同音に「サウンドが最低」とか言っているではないか。そしてこれは、エディ本人も、あのレコードのサウンドは最低だった、と言っているし。

(もっとも、エディが、自分のアルバムのサウンドを「良かった」と言ってる記事って見たことないけど。いつも、あれは最低だった、と言っている気がする。)

 

あとはすごく笑える話なんだけれども、楽器屋さんで Solo 610の実機を見たら、思ったよりも大きくて(笑)

切ない話なんだけれども、車で移動ならともかく、カート引きずって電車で移動している貧乏バンドマンとしては、これでも大き過ぎる、重過ぎるくらいでね。

 

同じUniversal Audioだと、僕はどちらかといえば710の方が気になっている。

見る限り、いわゆる典型的なヴィンテージの音ではなくて、どちらかというとハイファイで、典型的な真空管の古い音、みたいな音では無いらしい。そして、やっぱりアウトプットトランスは積んでいない。

が、ということは、自分の用途には合うかもしれない、という予感が、610よりはこっちの方がする。

別にトランスがあろうとなかろうと、狙い通りの音がしてくれればどっちでも良いのであって。そして、トランスを積んでいないせいなのか何なのか、こっちの方が軽いみたいだ。なんとか持ち運びが出来るかもしれない。

店頭で試すことが出来ればいいんだけどね。

 

その他にコンパクトなモバイル用途で、安価だけどトランスを積んでいる、ってことで言えば、Warm Audioの製品が目についた。

で、このWarm Audioは、APIを基にしているらしい。

上記のとおり、Van Halenの歴代の作品でも、APIはいっぱい使われている。

特に、90年代のVHの音を意識するのなら、APIしかない、みたいな感じがする。

 

でも、これも、ネットでデモ映像とか見てみると、あんまり好みの音じゃないような気がしていてね。

APIと言えば、これも偏見とか推測というかただのイメージだけど、
太くてパワフルだけど、くっきり感もある、みたいな、でも乾いた音、みたいな。

言葉のボキャブラリーが貧弱で上手く言えないが。

言葉にするとSSLに似ているように思えるけど、もっと押し出しとガッツがあるような。

でも、なんかローが豊富過ぎるように思うのよ、僕の用途だと。

どちらかといえばモダンな音になってしまうような気がして。

 

Van Halenの歴代の作品はもとより、

2012年のアルバムの際にも、これもインタビュー記事によれば、Eddie Van Halenのギターには、API 310のマイクプリが使われているらしい。

2000年代以降は、5150スタジオのコンソールはSSLになったらしいから、卓はそっちでも、ギター録りにはAPIを使う、っていうんだから、これは、エディ本人が、音で選んで、これがベストと判断してAPIを使っている、ということになるかと思う。

その、エディが自分のギターサウンドに選んだAPI、の、コピーモデルだけど、それを使って「鍋島」を作る、というのも、素敵な話ではあるが、

なんかやっぱり違う気がする(笑)

 

ただ、しょせんVan Halenサウンドを求めるのであれば、きっと合うんだろうし、なんだかんだトランス積んでないと嫌っていうんだったら、これはコスパが良いし、

また、アメリカン寄りの太い音、って意味では、パレットの選択肢を増やすことにはなる。

 

ただ、上に書いた、トランスを積んでいないところの「貧乏インディーならではのハイファイ」というのが、実は「高級なアナログのローファイ」よりも、ひょっとすると価値のあるものだという可能性もあるのだ。

そこの盲点については、ちょっとみんなが考えてみるべき問題ではないか、と僕はいつも思っている。

 

どっちにしても、それは録音うんぬん言う前に、ギターであれ何であれ、ちゃんと音を鳴らせるミュージシャンである、という前提での話なのは、もちろんのことだ。

 

コンパクトで安い製品、という意味では、かのSummit Audioからもそういった製品が出ているようだ。これも真空管搭載。しかし、やっぱりトランスは積んでいない。

Summit Audioと言えば、昔から評判の良いブランドだと思うが。しかし、そのわりにブランドイメージがぱっとしない感じだが。

きっと、すごく良いんだと思うんだけれど、音が聴ければいいんだけどね。ネット上にも情報もなければデモ音源もない。

 

ただ、僕のイメージでSummit Audioって言うと、なんかイングヴェイのインタビュー記事で、自分でプロデュースするようになって「音が悪い」と悪評が立つようになってからのイングヴェイが、Summit Audioを使っている、という記事を読んだことがあって、

そのせいであまりイメージが良く無いんだよね。

実際、僕はその「音が悪くなってからのイングヴェイ」の作品も、決して嫌いでは無いんだけれども、かなり極端な音作りをしているのも事実。

だからそれはSummit Audioが悪いんじゃなくて、きっとイングヴェイが悪いんだろうけど。

なんか、必要以上にローファイでレトロになってしまうんじゃないかという心配が(笑)

 

ちなみに、僕が昔、使っていたDBX 576っていう製品。

一時期、ずっとギターに使っていたのだけれども。
あれは、僕の求めるアメリカンの乾いた質感、太さ、がどんぴしゃであったし、良い機材だった。

ネットで回路図とか探してみると、アウトプットトランスは積んでいたみたい。

しかし、だからどうという訳ではないだろうから、全体的な設計で、その機材自体がどんなサウンドを持っているのか、大事なのはそこだから。

 

それこそ、もっと昔に使っていた、安物の定番であるART TubeMPだって、すごく良かったですよ。昔の話で、今はどうだか知らないけれど。

でも、それを今使うかと言われたら、きっと使わないんだろうから。

 

ギターサウンドを録音するのって、難しい話でね。

ギターサウンドを作る、鳴らす、ってだけでも難しいのに、
それを録音して、作品を作る、なんて言ったら、もっと果てしなく難しい話で。

たとえば、Van Halenの話題を中心に書いているから、

その2012年のアルバムである”A Different Kind of Truth”を聴いても、あらためて聴いてみると、ギターの録音が、必ずしも成功しているとは思えない。

もちろん、素晴らしいサウンドなんだけれど、Eddieはきっと、もっと素晴らしい音を現場では鳴らしていたはずだ、と思える。

たとえば、これがアナログ時代だったら、とか、思ってしまう。

 

そう、特にデジタル時代になってから、ギターの録音は、果てしない無限地獄というか、無限の迷路みたいな話になってしまった。

要するに80年代のメタルのギターサウンド、ディストーションサウンドは、半分くらいはアナログのテープというメディアによって作られていた、ということだと思う。

 

“A Different Kind of Truth”の制作にあたっても、エディは、外部のプロデューサーに録音を依頼したものの、自宅で自分たちで作っていたデモの方がもっと音が良かった、と発言していたのを覚えているが、真実、きっとその通りなのだと思う。

ただ、イングヴェイの例と同様に、それが完成品として、一般に伝わるものになったかどうかは、怪しいところだけれども。

エディが自分の頭の中にあるギターサウンドを、録音の上で突き詰めたサウンドとしては、むしろ2004年のベスト盤に入っているサミーとの3曲の方が近いんじゃないかと思う。(“It’s About Time”とか、あと2曲。)

ただ、とてもピュアでオーガニックなギターサウンドではあっても、作品としての完成度は、少なくとも商業的な面から見れば、必ずしも高くは無かったからね。。。

そんな中で、馬鹿みたいに自主録音でドンキホーテみたいに大口を叩いている僕が、これからどのような手法と戦略で、人生の究極の到達地点である「鍋島」の音作りに向き合っていくのか。

とりあえず、論より証拠、やってみないとわからないから、素直にXieさんのスタジオにあるVintechで、いっぺんギターを録ってみようと思っていますよ。機会を見てね。

それで納得できれば、それで良いのだし。

 

実際のところ、「鍋島デモ」のギターは、Brainworxのギターアンプのプラグインを使っているけれど、あれはNeve VXSの音らしいんだよね、収音は。

その出来は、決して、満足している訳ではないけれど、方向性は確かに、合っていたからね。

だから、プラグインではなくて、VintechだけれどもそのNeve系の実機で、良い結果が出るのであれば。

 

もし、安物のJoeMeekの方が結果が良い、っていうんであれば、それでも構わない。

同じ道具を使っても、ギターの録音の仕方には色々な方法がある。このJoeMeekにしたってまだまだ性能をすべて引き出したとは言えない。
使い慣れた機材を使って、安物であっても120パーセント性能を生かす方が、結果は良いかもしれないのだから。

でも、もうひとつくらい、音の選択肢は増やしておきたいなあ。

 

なんにせよ、今日書いたのは、基本的にギターの話、エレクトリックギターを録る話、なんだけど、ドラムやヴォーカルについてはまたぜんぜん違うことを言い出すかもしれない。それは当然のことだと思う。

そんでまた、どんなマイクやマイクプリアンプを使うにせよ、録音の前にギターの音を作る段階で、いろいろな選択肢や、味付けの方法があるので、そっちの方が重要であることは言うまでもない。

その意味では、別にマイクプリに何を使おうとも、作品は作れる。

 

パソコンの中のプラグインよりは、入口のアウトボード。

入口のアウトボードよりは、マイク。

マイクよりは、アンプ。

アンプよりは、ペダル。

ペダルよりは、ギターそのもの。

ギターそのものよりも、腕、または手。

手、でもないのだとしたら、その人の魂。

というふうに、上流のさかのぼって処理する方が、

根本的な解決に近づくのは、普遍的な法則なのであって。

 

じゃあ、魂をどのように鳴らすのか。

それは知らん。

つって、だからクリスチャンロックとかやってるんだろ、

っていう話。

飾りじゃないのよ信仰は。

良い音鳴らすためなのよ。

 

あとは、レトロなんて言っても、

じゃあ単純にローファイにして、よかったね、ちゃんちゃん、
ではもちろん無く、だったらカセットMTRでも使えばいいのだから、

つまりうちは、いつだって微妙な立ち位置、ギャップを橋渡しする役割のバンドであったのだから、

キリスト教と日本、ヘヴィメタルとインディロック、SacredとSecular、ブリティッシュとアメリカン、それらと同様に、
ローファイの古代と未だ見ぬ未来を橋渡しする、そんな「レトロ」を作り出さなくてはいけない。

だから、最新、流行、最高級、ではなかったとしても、
できれば新しい価値観の道具と手法を用いて、
今、ここでしか出来ないレトロを、作り上げたいものだと思う。

それがどんな音なのか、こうして必死で考えているところだ。

 

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