連続でオーバードライブについてのポストになっちゃいますが。
Shoalsを修理しました。
Gainのつまみが壊れていた1号機。
Heavy Lid Effects Shoals Overdriveのことです。
前の記事からの繰り返しですが、
2016年以降愛用してきたこのShoals Overdrive。
どこかの時点で(たぶん2016年の後半あたりですでに)、Gainのツマミが壊れてしまっており、
Gainが正常に動作せず、またノイズも増えて、音抜けも悪くなった状態だった。
そんな状態で、ライヴに使ったり、練習に使ったり、また”Overture”アルバムの録音に使ったりしてしまった。
もっとも、音抜けが悪くなったかわりに、妙に音が太くなっていたので、そのキャラクターは、それはそれで気に入っていたのも事実だ。
だから、正常に動作する2号機を(中古で)手に入れた今、この1号機を修理するのか、それともこの状態のままでキープするのか、それはちょっと迷っていた。
修理できるものなら、したいな、という気持ちはあった。
けれども、修理をするにしても、誰に頼めばいいのだ。
どこにお願いすればいいのだ。
僕は、2、3年前に、一度、手元にある古いMarshall Shred Masterを、都内の某お店に修理に出したことがある。(まぁ、もはや殆ど使わないんだけどね。ノスタルジーと愛着だけで所有している)
だが、結構値段もかかったし、期間もかかったし、そして結果も、あまり良いものでは無かった。
楽器店には時々、そういうのあるけれども、エフェクターのお店って、ブティック系だかなんだか、「スノッブ」な空気があり、あまり好きになれない。
エフェクターを夢中になって買っている人は、そういう「スノッブ」な何かのためにお金を出している、なんて言ったらいい過ぎか。Just to join the club, you know.
信頼できる楽器屋さん、ないしはリペア屋さん。
エフェクターやアンプのお店。
自分の身の回りでも、ひとつふたつ、心当たりが無いではない。
けれども、そういうお店は、大抵、とても人気で、忙しそうだ。
修理を受け付けてくれるかどうかわからないし、受けてくれたとしても、とても時間がかかりそうだ。
また、修理をお願いするにしても、こちらの望んでいることが、相手に伝わるかどうか。
自信がない。
また、Shoalsはあまり一般的でないマイナーなペダルだということもある。
ということで、ある日、つい先日、思い立った。
「自分で修理しちゃえ」
きっとそんなに難しい修理ではない。
技術的なことには詳しくないから、わからないが、
(文系だし、ただの無知なギタリストだし)
おそくらきっと、Gainのポットが壊れているだけだろう。
このポット(potentiometer)を一個、交換すりゃあ、いいんだろう?
それくらいなら、自分でも出来そうだ。
で、ね。
ここ何年か、オーバードライブという事については、多少追求したので、安いものがほとんどだけれど、手元にいくつか、(自分にとっては)良いペダルがある。
それらと比較して、また世間に出回っている優秀な今時のペダルと比較して、Shoalsは決して、抜群に音抜けがいい、ってわけじゃない。むしろ、音抜けは多少犠牲にして、味のある音を狙っているペダルだと思う。
だから、Shoalsの音やキャラクター、機能性や使い勝手は非常に気に入っているんだけれども、「あとほんのちょっとだけ、音抜けが良ければなぁ」なんて、ずっと思っていた。
だから、もし信頼できるエフェクター屋さんに出会えたのなら、修理のついでに、そこのところの願いを聞いてもらって、
つまり、「キャラクターは気に入ってるけれど、もうちょっとだけ、音抜けが良くなったらいいな、って思ってるんですけど、そういう改造出来ませんかね?」って、言おうと思っていた。
で、つい先日。
ていうか昨日。
パーツが届いたから、自分ではんだごて持って修理してみたんだけど。
結論から言えば、修理は成功してちゃんとGainのつまみも正常に戻り、ノイズもなくなり、音抜けも良くなり、
そして、元の状態、ストックの状態よりも、ばっちりと音抜けも良くなった。
もちろん、キャラクターは失わずに、だ。
だから、結果を言えば、僕の願いは全部実現してしまった。
ほとんど費用をかけずに。
夢のようである。
サンキュージーザス。
何をやったか。
オペアンプ交換だ。
壊れていたGainのポットを交換するとともに、オペアンプを違うものに交換してみたのである。
Shoalsは、中を覗いてみると、その回路の心臓部であるところの「オペアンプ」は、ソケットの上に乗っていた。その事は前から知っていた。
つまり、「とりあえず定番の4558Dを載っけとくから、もし気に入らなければ、ユーザーの方で好きなものに取り替えてね」という、ビルダーからのメッセージである。
エフェクターのマニアの人たちの間では、Tube Screamerのヴィンテージとか、オペアンプの「艶あり」だとか、色々言われているのだろうけれども、もちろん、僕は、そういうのは、あまりどうでもいい。
だが、ここへ来て、この「オペアンプがソケットに載っている」ことが、意味を持った。これなら、簡単に交換出来るんじゃないか、と思うことが出来たからだ。
そして、デジマートさんにこういう記事があった。
「オペアンプを替えるとオーバードライブの音はどう変わるのか?」
https://www.digimart.net/magazine/article/2017110102849.html
こういうわかりやすい記事があったから、「よし、じゃあ変えてみようか」と思うことが出来た。感謝である。
で、僕は全然詳しくないので、候補のオペアンプについても、この記事に出て来たやつを、そのまま鵜呑みにして取り寄せてみた。といっても、ほんの数点だけどね。
そして実は、「マイクプリアンプ」のためのオペアンプも、同時に2、3点、取り寄せたのだけれども、それはまた、別の話題。まだ、これから試してみるところだし。
というわけで、
インスタやFacebookにも写真をのっけたりしてたんだけど、
それを元に、修理の様子を説明しよう。
こう言っては何だが、このブログは決して、アクセスを集めるためのものではない。
ただの無名のバンドマンが自分のために記録しているだけだ。
だから、読みにくい文章かもしれないが、
そして、ただ単にポット交換とオペアンプ交換をしただけで、そんな大した修理ではないのだけれども、
それでもやっぱり書いてみよう。
オーバードライブ修理!!
まずは、異常をきたしている壊れたポットを外すところから。
これは、僕は今まで知らなかったのだが、「はんだ吸い取り線」(desoldering wick ウィック)というものを使うらしく、「へー、そんなものを使うんだぁ」って、無知丸出しなんだけど、その「ウィック」なるものを一緒に取り寄せてやってみた。
ぐぐれば説明とか動画とかあるだろうし、いちいち僕が説明するまでもないだろうけれども、
やってみると、最初、表面に見えてるハンダの塊とか、わりとすぐに吸い取れたんだけど、その後、かなりしつこく何度も何度も吸い取りを繰り返さないと、ポットは外れてくれなかった。
初めてで勝手がわからず下手なので、ちょっとずつやってたら、ポットひとつ外すのにウィックを結局20センチくらい使っちゃったよ。
そうやってはんだごてをずっと当てたりしてたので、熱で部品を壊しちゃうんじゃないか、とか、色々心配だったけど。
なんだかんだしつこくやってるうちに、そのうちはずれてくれた。
この場面の写真は残ってません。あしからず。
写真一枚目。
Gainのポットが壊れていて動作せず、そのせいでノイズが乗って音抜けが悪い状態だった。その壊れたポット(potentiometer)を交換するのが今回の主な目的。
しかしこのエフェクターには、なんかやたら足(ツメ)の長いポットが使われている。ネットで探しても、爪の長いポットはほとんど見つからなかった。(ぐぐり方が下手なのか) だがなんとか見つけて、これだと思って注文したのだが、まだ長さが足りない。どんだけ。
苦肉の策で、予備のポットの足を切り、はんだでつなげて足を延長した。こういう事態を見越して余計に注文しておいて良かった。涙ぐましい努力がわかるだろうか(笑)
写真二枚目。
オペアンプオーディション。君に決めた!!
修理するだけでなく、音質を変えてしまおうという話。あとちょっとだけ抜けが良ければ、という「こうだったらいいな」を実現するのに、一番簡単な方法がオペアンプ交換だと思ったからだ。
なんつって、いくつか取り寄せた中から、本当はまだ二個しか試してない。でもなんか、ペンチでつまんでぐいぐい取り外したり取り付けたりしてると、壊しちゃいそうで怖くなって。ふたつめに試したコレがいい感じだったので、これでいいや、って。LT1498。やたらモダンな音です。低音弦は若干ダブつくかもしれんが、元より抜けの良い音にするのが今回のテーマなので、そこは気にしない。
> 上記のデジマートの記事によると、このLT1498は、Leqtiqueのエフェクターとかに使われているらしい。ぐぐってみると、有名なエフェクタービルダーさんであるところのShun Nokina氏は、このLinear Technologyのオペアンプを気に入って多用しているようだ。
Leqtiqueなんて言えば、僕ももちろん、楽器屋さんで2、3度試したことはあるんだけれども、僕はその度に、「うわw これは合わないw 明らかにこれは僕以外の人間のために作られたものだww」くらいのインパクトで気に入らなかったので(汗)
そんなLeqtiqueに使われているオペアンプを「良いと思った」のは、不思議と言えば不思議だが、興味深いと言えば興味深い。
もっとも、上記のように、取り寄せたオペアンプを全部試したわけじゃなく、ふたつめの時点で、もうオペアンプ交換が怖く(めんどく)なって、「なんかしっくりきてるからこれでいいや」って思っただけなんだけれども。
でも、今回自分が狙っていた方向性に、合っていたんだよね。
写真三枚目。
4本のポットのうち、左手前のA500Kが、壊れていたポット、を交換したもの。
アースの線をものすごい強引に取り付ける。なぜものすごい強引かというと、もともとのアースの線、筐体の材質のせいですぐにハンダが取れてしまい困ったので、以前、スケーターの必殺技シューグーで固定した。だが、そもそもアースの線が短過ぎて、電池入れるときとか、こういうふうにちょっと分解したい時に不便。なので、延長して、シューグーで固定した線をぶっちぎって無理やりつなげた。試してみたが、ちゃんとアースは取れているっぽい。
写真四枚目。
中身を筐体に入れようとしたところ、なんか色々とあやしい。Gainのツマミだけが傾いているのがわかるだろうか。
これはつまり、パーツの位置だか、設計だか、筐体の穴開けの位置だか、何かが間違っていて、無理があるため、Gainのつまみが傾いてしまうのだ。そういえば、この個体は前からそうだった。そのへんは大雑把なアメリカ人の個人ビルダー作によるペダルの限界だろう。だからそれが原因で、Gainのツマミに無理がかかり、いつしか故障したのだと思う。なので、ここはワッシャーおよびナットを締めず、傾いたままで使用することにする。曲がっているのが気に食わないからまっすぐに直す、そしたら無理がかかって壊れたり、別のところがおかしくなる。機械でも人間でもよくある話だ。
写真五枚目。
修理完了。Gainつまみの動作も正常になり、発生していたノイズや音抜け悪化の問題も無くなった。そしてオペアンプ交換の結果、やたら分離の良いハイファイでパワフルな音に生まれ変わってパワーアップした。これは、現在手元に正常に動作するストックのままの2号機があるから踏み切ることの出来た改造だ。違うキャラクターを追求出来るし、最悪壊してもいいや、と思えたのだ。
もし気に入らなければまたオペアンプを交換してみるかもしれないが、筐体の状態とか、力ずくでオペアンプをソケットから引っこ抜くこととかを考えると、もうやりたくない。電池すら使わず、このまま二度とケースを開けずに使っていきたい、というのが本音だ。
さあ、これからも一緒に旅して行こう!!
こんなに自分にぴったりなオーバードライヴには、たぶん二度と出会えないだろうから・・・
と、こんな感じの作業でした。
ほんと、大したことをやったわけじゃない。
素人なりにやってみた、っていうだけ。
でも、1号機が、もともとなんか色々筐体だかパーツ配置だか問題あって、それが遠因となって壊れた、ということはなんとなく理解した。
なんとか修理して、このまま使い続けることが出来ればいいのだが。
壊れずに使っていけることを願っている。
で、修理が終わって、アンプにつないで(つってもそこから先はダミーロード、パソコン、キャビのインパルスレスポンスだけど)、音を出してみると、
ストックのままの2号機と比較すると、オペアンプ交換でキャラクターが変わった、といいつつも、やっぱりおんなじ音だね(笑) ShoalsはやっぱりShoalsだ。ぼーっとしてたら区別つかないんじゃないかな。
でも、よく聴くと、間違いなく抜けは良くなっているし、音の立体感や解像度も増している。
2号機はストックのNJM4558Dのまま(のはず)なので、その音は、あたたかみとか、まとまり感、かたまり感、はあるけれども、どちらが良いか、は、状況によるだろう。でも、ことライヴの場においては、抜けとスピード感、パワー感のある「改造1号機」の方が、きっと有利だろう。
とにかく、よりモダンな高性能な音になって、ご機嫌である。
こうだったらいいな、が実現した。夢が叶ったー、みたいな。
で、手持ちのODペダルの中ではいちばん音抜けが良いところのMaxon OD808Xとも比較してみた。例のExtremeな赤いやつ。(もちろん、Albit/Cranetortoiseの真空管のやつの方がさらに音抜けは良い、が、厳密に言ってあればオーバードライブでは無いので)
そもそも、このExtremeな赤いやつ、OD808Xは、相当に音抜けがいいので、やっぱりそれと比べると、若干劣る、けれど、そうはいっても、いい勝負してる。セッティングによっては、まったく同じくらいの音抜けになる。
こうして比較してみると、オペアンプ交換したShoals1号機のパワーアップも感動だけれど、OD808X(赤)の素晴らしさに改めて気付く。
つまり、Shoalsはセッティングによって色々な音を出すことが出来て、レコーディングにおいては間違いなく、こいつを一番多用することになるだろう。
けれども、OD808X(赤)は、音のキャラクターこそ一種類だが、その音の中に、音抜けも、反応も、分離も、パワーも、ゲインも、エッジも、全部の要素が備わっている。だから、ほとんどの曲はこの音で対応できるわけだ。もちろん全部完璧ってわけにはいかないが、およそ全方位に向けて、非常に高いレベルで作られた音だってことだ。
だからあらためてこの808X(赤)の凄さがわかる。セッティングが楽だから、やっぱライヴはこっちを使おうかな・・・
そんでもって、やはり手持ちのODペダルの中では音抜けがかなり良い方であるところのT-Rex Diva (破産申請したT-Rexの可哀相な低価格ペダル)とも比較したところ、全然負けてなかったよ。むしろ、かなりの場面で勝っていたかもしれない、音抜け。改造後のShoals1号機の話ね。
なので、修理、改造を経たShoals1号機は、この前書いたオーバードライブ比較チャートにおいて、「音抜け」のパラメーターが、ノーマルの「6-8」(セッティングで可変)から、「7-9」にアップした。
その他のパラメータは変わらず。つまり、キャラクターを変えずに、ほとんど失うもの無しに、音抜けがアップした、ということ。やったね。(敢えて失うものがあったとすれば、定番のあたたかみ、まとまり、低音の締まり、等だろう。しかし、ほとんど問題にならないレベルだと言える)
というわけで、先日の記事のチャートを、オペアンプ交換後のShoals1号機について少し更新しておきました。
夢のような理想のペダルになったかもしれない。
やったぜ1号機。
でも実用上は、これから808Xとバチバチ競わせるぜ!!
こんなところかな。
まとまりのない記事でごめんね。
ありがとう!!