前にホットソースについての記事を書いたんだけれど、コメントが付いている、っていうことは、検索なんかを辿ってくる人が居る、っていうことだよね。
自分はアクセス分析とか、そういうの見ないし、一応プラグインは入れているけれど、ほとんど見ない。そういうの見ちゃうと気を病んじゃってなにも出来なくなっちゃうから(笑)
バンドについてもエゴサーチとかほとんど無理。
普通に考えたら、そういうことはやるのが普通だと思うけれど、僕は無理。
音楽作ってる限りは無理だと思う。
そういうのは曲を作ってる人とかシンガーじゃなくて、ベーシストとかバンマスとかマネージャーとか営業担当とかそういう立場の人がやるべきだ。
ニーズを見極めて商売で音楽やっている人はそういうのやると思うんだけれど、僕はインスピレーションに正直でありたいから、とても無理。
でも時折、気になる事柄とか、たとえば楽器や機材などのトピックを検索してみて、それでたまに自分の書いたブログ等とかが検索の上位に出て来ると、とても恥ずかしくなる。なんか、すみません、みたいな。僕なんかが適当に書いた、それほど正確でもない、いつも書き直したいと思っているような記事が、検索でわりと上の方に来てしまうと、それを見て参考にする人もいるかもしれないから、とても不安になる。
楽器屋さんのレビューなんかでも、たまにあるからね。
安くて狙い目の機材だな、と思って、買って使ってみて、良かったから善意でレビュー書くじゃん。
そしたら、2、3ヶ月後に見てみたらいつの間にかベストセラーになってたりする。
結局、インターネット時代の人間の購買行動なんて、そういうちょっとした口コミで大きく左右されたりするから、ちょっと怖くなると同時に、なんか、大丈夫かな、って。
けれども、話はそれたけれどもまたホットソースのレビューを書いてみたい。
僕は別にマニアではなく、ちょっとずつしか消費しないから、レビューも生活の中でちょっとずつ食べてみたものしか書けない。
けれども、前に書いたとおり、ホットソースをめぐる事情というものは深刻なのだ。日本国内で普通に手に入るホットソースというのは、なかなか選択肢がなく、だからこそ書いて記録しておきたいのだ。
で、某楽天で見つけたから、注文してみたんだよね。
その名も、”Brother Bru-Bru’s African Hot Pepper Sauce”
これって読み方は「ブラザー・ブルブル」でいいのだろうか。
販売してたショップの説明には、
「気ままなライフスタイルを生きていたブラザーが、ある時病気になって医者に塩分を取らないように言われた。ショックを受けたブラザーは食べる楽しみを取り戻すためにこのソースを作った」
みたいなストーリーが書いてあった。
そういうのって、いかにも、みたいな、たぶんショップ側が作った話だろうって思った。
なぜって、「陽気で気ままなライフスタイル」みたいのって、日本人には縁のないものだから、映画の中にだけ存在する、そういうライフスタイルには、皆、憧れるので、海外の商品を翻訳して販売する時によくある宣伝文句だろうと思った。
けれども実際にソースが届いて、そこに書いてあるポエトリーみたいな文章を見て、なおかつ製造元のウェブサイトなど見てみると、その話はおおむね本当だっただけでなく、実際はもっと大きな話だった。
このBrother Bru-Bruというのは、Bruce Langhorneというミュージシャンのことだった。
ギタリストであり、ずばり言うと、かのBob Dylanの隣でギターを弾いていた人だ。
そして、そのBob Dylanの名曲であるところの”Mr. Tambourine Man”のモデルと言われている人だそうだ。
日本語のショップのウェブサイトには、そんなことは一言も書かれていなかった。
僕は恥ずかしながらフォークは疎い。
ボブ・ディランも正直、ちゃんと聴いたことは無かった。
Mr. Tambourine Manという曲についても、The Birdsのバージョンは聴いたことがあったけれど、Bob Dylanのは聴いたことが無かった。
Calling Records / Soul of Faith等で活動を共にしていたオオハラ君が、フォーク畑の人だから、彼に日本のフォークとか、少し聴かせてもらったことがあるくらいで、本当に全然知らない。
もっともBob Dylanと言えば、「その後」のボブ・ディランはクリスチャンアーティストでもあり、キリスト教的な曲もたくさん作っているから、それらの曲を聴いたことは何度かある。なんかの動画で見て、ばっちり泣いてしまったこともある。
でも僕の中ではボブ・ディランと言えば、ミュージシャンというよりも詩人としての印象の方が強い。
で、そう思って、「この時代の」Bob Dylanを聴いてみると。
つまり1960年代の、有名なフォークやってるBob Dylanを聴いてみると。
いいじゃないか。
素晴らしい。
というか、まさに最高だ。
(それでも、僕の中ではミュージシャンというよりは詩人だけれど)
そう思って、なんだか自分もこういうのやってみたくなって、「ソースが届いたその日のうちに」僕は、オオハラ君がやっているようなフォークな楽曲を1曲、書いてしまったのである。
うちのバンドは、今年、完成させた”Nabeshima”のリリースはまだ先だし、ベストアルバムを出す計画も年内には出来なかったので、
そのかわりに年内に4曲入りのアコースティックEPを出そうと計画している。
けれども、そんなふうに「アコースティックEPを作ろう」なんて思った直接のきっかけは、実はこの”Brother Bru-Bru’s”のソースだったりするわけだ。
ソースが届いた日に作ったその曲の他にも、アコースティックアレンジでいけそうな曲とか、それっぽい賛美(ワーシップ)の曲とかが、すでにあったからだ。
そんなわけで、楽天のショップで見つけたいかにもうさんくさいホットソースは、実は1992年に創業された、わりと由緒正しいロングセラーな、そしてBruce Langhorneというれっきとしたギタリスト/ミュージシャンによって作られたものだった。
今では、ロックミュージシャンが自分の名前の入ったホットソースを出すことって、わりとちょくちょくあると思う。(たとえばVan HalenのMichale Anthonyもそうだよね。AerosmithのJoe Perryもやってたように思う。)
でも、このBrother Bru-Bru’sは、あるいはそのはしりだったのかもしれないね。
で、そんなバックグラウンドストーリーはともかくとして、肝心の味の方がどうだったのか。
手元にあるのは、Very Hotと書かれている、ハバネロが入っているやつ。
原材料には、”Habanero & Japones peppers”と書かれている。このJaponesっていうのは、いわゆる日本の普通の唐辛子のことなのだろうか?
そんでもって、ビネガー、水、唐辛子、ガーリックの他に、”Domestic & African Spices”と書かれている。
この「アフリカン・スパイス」っていうのが、ちょっと不安だった。
エスニック系のスパイスは、合う人には合うが、苦手な人には苦手なことも結構あるからだ。
感想を書いてみよう。
結論から言うと、僕はこのホットソース、すごく好きだ。
ひょっとすると今までで一番好きかもしれない、っていうくらいに気に入った。
辛さは、あんまり辛くない。
辛いのが苦手な人からすると、十分に辛いと思うけれど、激辛が好きですよ、っていう人の基準からすれば、「それほど辛くない」という辺りに位置するだろうと思う。
僕もそんなに知らないし、明確な基準じゃないんだけれど、他の製品との比較からすると、いわゆるスコヴィル値は「一万前後」くらいの感覚じゃないか、という印象。(ただの印象です。正確ではないかもしれません。)
つまり、「普通のタバスコよりは辛いけれど、その他のハバネロやジョロキア等を使った激辛ソースに比べればかなりマイルドな方」といった程度。
これは、ハバネロに加えて、そのJaponesだかハポネスだか普通の唐辛子を使ってるからだと思う。
でも、僕は別に激辛を求めるマニアではないし、日々の食生活の中での胃腸への負担を考えると、これくらいが案外ちょうどいい。
で、ビネガーの味が結構強い。
これも僕にとっては歓迎すべきことで。
また前提の話だけれど、ホットソースに関しては、この「ビネガー」つまり酢の味があった方がいい、という人もいれば、酢の味はなるべくしない方がいい、という人もいる。
いわゆる普通のタバスコはビネガーの味が結構効いている。
そのビネガーの味を良いと思う人もいれば、料理の味を邪魔するから良くない、と思う人もいる。
で、僕はホットソースに関しては、ビネガーの味がして欲しい、と思っている方だ。
そんな僕みたいな人間からしてみると、このBruce Langhorneのソースは、ビネガーが十分に効いていて、食感もさらっとしているので、とても良い感じだ。
で、不安材料であったアフリカンスパイス、ってやつ。
これは、いったい何なのか、よくわからない。
けれども、食べてみてこれは言える。
このホットソース、かなり味付けが濃い。
ただ辛いだけのソースではなくて、かなり味が付いている。
たぶん、これがそのアフリカンスパイスの味なんだと思う。
このソースは塩分をまったく使っていない、と書かれている。
塩分がまったく入っていないのに、これほどしっかり味が付いているというのは、驚きだ。
で、それがどんな味かと言うと、それは、とても陳腐な言い方であり、日本語としては身も蓋もない表現となるが、
ずばり、なんだかウスターソースみたいな味わいだ。
ウスターソース。
といえば、そうだ。正式にはウスターシャソース。
英語で書くとWorcestershire Sauceとなる、あれだ。
日本人にとってはおなじみの、ありふれたやつだ。
似たような経験をした人はきっとたくさんいるだろう。
アメリカの家庭でお世話になった時、僕はバンドの関係でアメリカに行った時だったが、滞在先のお家で、「これはとっておきのソースなのよ」と言われて、なんかいい感じの瓶に入ったソースを渡され、そこに”Worcetershire Sauce”と書かれていた時の絶望を、どう表現したらいいだろう。
ウスターシャーソースが悪いと言っているのではない。
ウスターシャーソースは非常に美味しいものなのだ。たしかにとっておきだ。
だが、ウスターソースは日本ではおなじみの調味料であり、もはや日本食の一部となって、とんかつソースやお好みソースなど独自の進化を遂げているほどの状況なのだと、その事実と、この自分が置かれた状況を、どのように説明し、どのように伝えたらいいのか、それを思う時、私は絶望せずにはいられなかったのだ。
きっと日本人であるあなたには、この気持ちがわかってもらえるに違いない。
ちなみにカナダ人の友人にこの話をしたら、カナダでもウスターシャーソースはありふれたものだ、と言われた。アメリカにもいろいろあるんだろうし、ウスターソースにもいろいろあるのだろうから、正確なところはわからないが、しかし、あの時、僕が味わった絶望は確かに本物だった。なんにせよ、僕は何も言及することなく、無言でポテトにウスターソースをふりかけ、美味いと言って食べることを選択したのだった。
話は逸れたが、このBrother Bru-Bruのソースの味わいは、そのウスターソースに似たニュアンスがあると感じた。
その上で、さわやかな唐辛子の辛味がプラスされている、と思ってもらっていいかもしれない。
塩分が入っていないのに、これほどのしっかりした味わいがある、というのは、あるいは製法的にもやはりウスターソースと似たような手法が使われているのかもしれない。
味付けが結構濃い、ということで、料理によっては合わないものもあると思うのだが、今のところ、ソース自体がさらっとしているせいもあってか、予想以上にいろんな料理に違和感なく合わせていけるという印象を持っている。これはちょっと意外だが、嬉しい誤算である。
そして、前述のとおり、ビネガーぽくてさらっとしているので、しかもそれほど辛くないので、わりとどばどばとかけてしまう傾向があり、そのぶん、若干減りの早さは感じるが、手元の瓶にも149mlとたっぷり入っているし、値段も(今のところ)べらぼうに高いわけではないので、コスパは決して悪くない。
そういったわけで、僕としては、これはかなり好みのホットソースなのである。
あんまり辛くないし、hot sauceというよりは調味料、condimentといった感じだが、これは良いものに出会ったと感じている。
前にホットソースの記事を書いた時に、気に入ったと書いていたFynbosのソースも、その後、案の定、見かけなくなってしまったし。
美味しいなと思っていたものが、手に入らなくなってしまうのは、とても悲しいんですが。
今にして思うと、Fynbosのソースは、原材料の中に砂糖が入っていて、それが味わいや、辛さを引き立てていたんだね。ああ、もう手に入らないと思うと、残念だな。
でも、このBrother Bru-Bru’s、僕はFynbosよりももうちょっと余計に好きかもしれないぜ。
いかしたミュージシャンが作った、という事実がそう思わせるのかもしれないけどね!
日本向けに販売しているショップさんが、販売を続けてくれることを祈ります!