久しぶりに、ちょっとした遠征を計画している。
こういうのは、うちのドラマーのShinryu師範がいちばん情報が早い。
Shinryu師範のソーシャルメディアを見ている人は、「さてツアーに行くよ」みたいな投稿をすでに見ているかもしれない。
バンドとしては色々の関係で、オフィシャルに発表するタイミングをもう少し見計らっているけれども。
遠征にはたぶんフライングVを持っていく。
ギターの話だ。
昔から、遠征とかツアーみたいな折にはいつもフライングVを選んでいた。
それは見た目とか、キャラクター作りとか、プレイヤビリティとか、取り回しの良さ、そして重量の軽さなどの理由からだ。
今、僕の手元にはいわゆるちゃんとしたフライングVは一本しか無い。
もちろん、古い日本製JacksonのRandy Rhoads モデル、いわゆるランディVはまだ持っているが、(売っちゃおうかなという誘惑もあるが、貴重なものだからなるべく手元に残しておきたい)、いわゆるGibsonスタイルのVっていうのは一本だけだ。
それはUSA製のHamerのVectorというやつである。1997年製、コリーナウッドのやつだ。コリーナVという呼び方でいいのかわからないが、1958年スタイルのやつだ。
ちょっといいことを言えば、これはアースシェイカーのSharaさんが1990年代から使っているのと同モデルだ。シャラさんと「おそろい」なんてあまりにも素敵である。(すみませんすみません)
僕はこのギターを、2013年に中古で入手して以来、おもにライヴ用として愛用してきた。
ライヴ用と言うのは、このギターは非常に素晴らしいギターで、ライヴ用としては申し分ないものの、レコーディングで使用すると、僕のスタイル、僕のセッティングでは、ハイミッドの鳴りが強過ぎて、音が軽くなってしまう傾向があり、その結果「レスポールの方がいいよね」となってしまい、出番があまり無いのである。
それは、この1958年スタイルの特徴であるコリーナの木材が、素晴らしく鳴る材ではあるものの、ハイミッドの強調された軽い鳴り方という特徴を持っているためだ。
見た目はフライングVで、音はレスポール。
そんなギターは無いものか、といつも思っている。
いや、探せばあるのかもしれない。
たぶんあるんだろうなという気はしている。
たとえば、このHamerはコリーナ製だが、同じHamerのフライングVでも、マホガニー製のやつだったら、もう少しレスポール寄りの音がするかもしれない。
だが、見た目にもしっくりきて、僕のフィーリングに合っていて、なおかつ、僕みたいな無名のインディミュージシャンでも手の届くもの、となると、やっぱり探すのは非常に難しい、と言わざるを得ないだろう。
僕はこのmade in USAのHamerを手に入れる前に、廉価版であるところの、Hamer XTのインドネシア製のフライングV(Vector)を所有していたことがあった。
それは、ある意味において、「見た目はフライングV、音はレスポール」という命題に、かなり近いギターだった。
Hamerブランドの末期、おそらくはFender傘下となった後の2000年代の後半に作られたインポートものの廉価版で、ボディ材は確かカタログ上はアルダーだったと記憶しているが、ラミネートされたフレームメイプルトップの見た目や、チェリーサンバーストの塗装も含めて、見た目にもレスポールっぽさを漂わせていたし、肝心の音も結構いい線を行っていた。
僕はそのギターを、2010年から2012年の間、3度のアメリカ遠征に持っていって、ライヴの現場で使い倒した。
それは振り返れば、自分にとって非常によい武者修行であったと言える、自分にとっても、Imari Tonesにとっても、アイデンティティを確立していくための重要なフェイズだったが、だからこそその時期を共にしたその廉価版のインドネシア製Vectorには、結構な愛着があった。
やっぱり仮にもツアーを回るわけだから、その間に何箇所かぶっこわれたり、補修したりしながら、共に戦ってきたわけだし。
だが、僕はそのギターをその後、結局手放してしまった。
それはBacchusをはじめとした日本製のレスポール系ギターに惚れ込んで以来、また本物のUSA Hamerを弾くようになったこともあり、その廉価版のインドネシア製Vectorの鳴り方に、次第に物足りなさを感じるようになってしまったからだ。
振り返れば、その廉価版Vectorは、モダンとヴィンテージというか、僕がメタル系からトラディショナル系のギターへと移行していくちょうど中間の橋渡しをしてくれたギターだと言える。
音のキャラクター、セットネックならではの甘いアタック音の鳴き方など、トラディショナルなセットネック系のギターのキャラクターは持っていつつも、ほどよくモダンな仕様のその廉価版Hamer XTは、当時の自分にとってはちょうどよかったのである。
レスポールっぽいフライングVという意味でも、本当の意味でのバカ鳴りではなかったものの、「ちょっといいレスポールカスタム」くらいの鳴り方はしてくれていたので、ハードロック系の音楽をやるにはむしろ合っていた。
だが、本当の意味で鳴るギターではなかったので、より良い、もっと鳴るギターを手に入れた後では、次第に物足りなくなっていった。
自分のバンドであるImari Tonesの作品でいえば、”Revive The World”の楽曲をやるようになった頃から、その廉価版Hamer XTでは、「ちょっと弱いな」という感じになっていった。
思い出と愛着のあるギターだったから、今でも手元にあったら、と思う時もあるが、そうやって振り返ると、やっぱりきちんとした音楽上の理由があって、僕はあのギターを手放した。
そう思えば、自分は順当にあのギターを卒業したという言い方も出来る。
(その頃の映像もYouTube等にあるとは思うが、自分のバンドImari Tonesの作品で言えば、その廉価版Hamer XT Vectorの音は、”Heroes EP”で聴くことが出来る。あとは”Japan Metal Jesus”の中の”The Concept”と”You Key”の2曲もそのギターだ。)
ビデオで持っているギターは違うかもしれないが、レコーディングはこのHamer XTだ。
そして手元に残ったのが、廉価版ではない、件の本物のUSA製のHamerのフライングVだ。
残念ながらこのギターは、「レスポールっぽいフライングV」ではない。
おもいっきり、フライングVらしいフライングVだ。
だが、フライングVと一口に言っても、人が思い浮かべるものにはいくつか種類がある。
ハードロックやメタルの分野において、フライングVと言った時に人々が思い浮かべるのは、一般的にはマイケル・シェンカーのような1967年スタイルのものだろう。
ボディ材がコリーナではなくてマホガニーとなり、塗装も透明な木目ではなくて一色に塗りつぶされた、ピックガードの面積が広くなったものだ。
フライングVというのは、そのボディシェイプ、形の関係で、どうしてもミッドレンジに音が寄ると言われている。
その、より一般的な1967年スタイルのFlying Vのサウンドは、まさにその典型で、ある意味で細く、シャープなサウンドは、攻撃的なヘヴィメタルのディストーションサウンドと相性がよく、ヘヴィメタルの世界では定番となっていったわけだけれど。
僕が使っている1958年スタイルの、いわゆるコリーナVは、ミッド寄りの音ではあるものの、もうちょっとレンジが広く、特にハイミッドや、ハイの成分が強調された、ある意味でもうちょっとテレキャスターっぽい、シャキっとした音のキャラクターを持っている。
それが、僕の音楽スタイルには、結構ぴったり来た。
僕は、最初からフライングVにこだわりがあったわけではない。
別にフライングVに対する思い入れも、憧れもなかった。
けれどもある時、たぶん2006年のことだったと思うが、(たぶん、当時お世話になっていたYプロデューサーにすすめられて)、楽器屋さんでEpiphoneのコリーナVを試したところ、これがしっくりと来たのである。
当時の僕にとって、しっくりくるギターってなかなか無かった。
時代的にも、(特に安い価格帯においては)、ちゃんと鳴るギターというものは今と比べても少なかったと思う。
メタル系のギターでは、多様性を求める自分のスタイルには足りなかったし、かといってトラディショナルなストラトやレスポールは弾きづらかった。
それに僕には、ストラトもレスポールも、絶望的なくらいに似合わなかった(笑)
もう少し脚が長ければね、笑。
また、ハムバッカー系のパワーと、クリアなサウンドを両立させたギターというものは、現実にはなかなか存在しなかった。
僕が長いこと、Musicman Axis-EXを使っていたのは、それがVan Halenモデルであることもひとつの理由ではあったけれど、僕が「これならやれる」と思うギターが、それくらいしか市場に無かったから、というのも本音だった。
僕はスタイル的にも、もろにメタル、という感じではなく、どこかレトロ感や、クラシック感を漂わせたものを必要としていたのも、理由のひとつだろう。
だけれども、その時、僕が弾いたEpiphoneのコリーナVは、コリーナ特有のトレブリーなサウンドが分離の良さにつながって、多様なプレイをする必要のある僕のスタイルにぴったり来たし、またいわゆるメタルっぽいフライングVと違って、クラシカルな雰囲気を漂わせる1958年スタイルの見た目が、僕の感性にもぴったり来た。
「あれ、やれるじゃん」と思った。
僕にとっては、長らく使っていたMusicman Axis (Van Halenスタイル)以外で、初めて「やれる」と思えるギターだったわけだ。
(ここでいいことを言えば、かのEddie Van Halenも、そのキャリアの中でいくつかの名曲を、本物の1958年のGibsonのコリーナVを使ってレコーディングしている。”Hot For Teacher”, “5150”, “Top Of The World”等がそうだと言われている。)
今ではもっと選択肢があるのかもしれないが、当時はコリーナ製のフライングVは、結構見つけるのが難しく、現実的にはEpiphoneは唯一の選択肢だった。少なくとも、気軽に手の届く範囲では。
Epiphoneは廉価版のギターブランドというイメージはあるが、製品としてのクオリティは結構ちゃんとしているのは、たぶん広く知られていることだと思う。ものにもよるが。
だからこのEpiphoneのコリーナVも、十分に使えるものだった。
コリーナ材だって、どこまで「本物」かはわかんないし、セットネックだって本当の意味できちんとしたものでは無かったと思うが、廉価版なりに正直に作られていたので、むしろ現場で使い倒すには馬鹿高いGibsonよりもいいかもしれないと、今でもちょっと思う。
このEpiphone製コリーナV、確か韓国製のものだったと記憶しているが、このギターの音は、自分のバンドであるImari Tonesの作品では、”Victory In Christ”は95パーセントはこのギターだし、”Japan Metal Jesus”でも何曲か使っているはずだ。Jesus TrainとかTruthとか。
ビデオで持ってるギターは違うかもしれないが、レコーディングはEpiphoneのFlying Vである。
そんな理由で、僕は1958年スタイルのフライングVを使うようになった。
でも、今書いたように、それは「よっしゃ、これだ」と思ったからではなく、どちらかといえば消去法で「これならやれる」となった結果だった。
僕は別にフライングVに憧れがあったわけではない。
考えてみれば、僕はギターに憧れがあったことはあまり無い。
ストラトに憧れた、とか、レスポールに憧れた、ということも無い。
唯一あったのは、ヒーローであるEddie Van Halenが持っていたギターくらいだろう。
それも憧れという感じでは無かった。
それは自分はEddie Van Halenとは違うということを、最初からわかっていたからだろう。
Musicman Axis-EXを使っていたのは、それがスタイル的に「やれる」楽器だったからだ。
ああでも、本当のことを言おう。
13歳の頃、ロックを聴き始めた頃に、僕は古いJudas Priestが大好きだった。
そして、Judas PriestのGlenn TiptonとK.K.Downingは、Hamerを使っていたじゃないか。
写真の中でHamerのギターを持っているグレンとKKを見て、やっぱり僕は、それに憧れた。
だから、あるいはHamerは、そういった憧れのひとつだったかもしれない。
だけど、日本の楽器屋さんで、本物のHamerを見かけることなんて、そうそう無いじゃないか。
たぶんそういったいくつもの過程を経て、
僕はこの、1997年製のHamerのコリーナVを手に入れたのだろう。
その意味では、このギターは、憧れのブランドの、自分に合ったスタイルの、貴重なギターと言える。
だが、僕はこのHamerのフライングVに、感情的な思い入れはまったくない。
信頼はあるが、過剰な愛着はない。
使い倒すためだけに持っている。
ツアー先でぶっこわしたとしても、まったく悔いはない。
むしろ、ぶっこわすために持っていると言っても過言ではない。
過去に僕は、名古屋で野外ライブの機会を頂いた時に、このHamerのフライングVを持ったままスケートボードに乗るという事をやった。
このギターが日本に輸入販売された1997年当時の定価を知っていたら、普通はやらないことだ。
その時に学んだのは、フライングVというのは、ボディの羽の部分がスケートボードの蹴り足である右足に当たるため、スケートボードには向かないということだった。
「フライングVは、スケートボードには向かない」
なかなか知る機会のない事であると思うから、皆に共有しておきたいと思う。
だからギターを弾きながらスケートボードをする時には、ストラト系の方がいいだろう。あれなら、足の動きが自由になる。たとえ転んでも、メイプル製のデタッチャブルネックなら、そうそう折れることはないだろうし。
(skate, sk8, スケボー, 検索タグ, 笑)
その際に、スケートボードのデッキが当たってついた傷が、今でも僕のHamerには残っているが、僕にとってこのギターはそういう扱いである。(中古価格ぐぬぬ)
このビデオに、その時の様子がちょっと映っていると思う。
先述したように、このHamer Vector Korinaは、素晴らしい楽器であるが、コリーナという材の特性上、どうしても音がハイミッドに集中する。
その結果、ライヴでは弾き易いのだが、レコーディングにおいては、どうしても音が軽く感じる。
だから、少なくともレコーディング制作においては、メインはどうしてもレスポール系になる。
僕は今、日本製のレスポールを3本所有している。
ひとつはBacchusの2011年製のClassic Seriesのレスポール。通称「猫ポール」と呼んでいるやつだ。
もうひとつは、2014年製のBacchus Duke Standard。愛称ショコラ。”Nabeshima”アルバムでもメインで使った、恐ろしく反応のいい楽器だ。
そして2016年製の、STRブランドの、LJ-2っていうフロイドローズの付いたやつ。通称Rabid Cat。これは僕にとっては自分の我儘をすべて現実にしたような楽器だ。
そのどれもが、自分にとっては本気のギターであり、それぞれにサウンドの特色は違うが、それぞれに不満はまったく無い。
猫ポール
ショコラ
Rabid Cat
もし、ツアーみたいな場にこれらの楽器を持っていって、盗まれでもしようものなら、やっぱり僕はショックを受けるだろう。これらは国産のギターであり、市場価格としては必ずしも高いギターというわけではない。だが、わからない人にはわからないかもしれないが、こういった楽器というものは、たとえお金があったとしても、替えが効くものではないからだ。
だからこそ僕は、これから計画している遠征にも、フライングVを持っていく。
ただひとつ思うのは、このHamer製のフライングVが、楽器としては最上級で申し分ないものの、もうちょっと、メインにしているレスポールに近い音が出てくれたらなあ、ということだ。
コリーナウッド、そしてフライングVの宿命で、音が軽い。
アンプのBASSのつまみを上げればいいじゃん、と思うかもしれない。
確かに、それも事実だ。
このギターには、遠征用という位置づけの関係もあり、細いゲージの弦を張っているので、そのせいもあるだろう。
あるいは単にギターのToneを絞っても、対処法になるかもしれない。
でも、「見た目がフライングVで、音はレスポール」という究極のテーマは、やはり頭の中にある。
頭の中にあるんだけど、
だけれども、僕はもう、それをあきらめた。
このHamerを手に入れてからも、僕は何本ものフライングVを試した。
だけれども、このHamerよりもしっくりくるものは、やはり無かった。
いくつか理由がある。
ボディの厚みが、オリジナルのGibsonにくらべてかなり厚いということ。
作られた時代背景ゆえか、ハードロック系でも弾き易い大きめのフレット。
オリジナルと違い、背部に付けられたストラップピンの位置。
そして、USA製のHamerならではの、豪快かつオーガニックなサウンド。
意外と気軽に付き合える飾り気のない見た目。
やっぱりこいつも、「クラシカル」と「ハードロック」が絶妙にブレンドしている一本なのだ。僕にとっては。
レスポールの例で書いた内容からわかるように、僕はDeviser社の楽器(Bacchus/Headway等)の大ファンであるが、
BacchusやMomoseのフライングVも何本か弾いたものの、その鳴り方やサウンドはやはり良かったけれども、フィールや使い勝手の面で、やはりぴったり来ず、手に入れるまでには至らなかった。(ちょっと惹かれるものはあるが)
だから、レスポール系においては、僕はDeviserさんとこのギターに縁があったものの、フライングVにおいては、結局このHamerを越えるものは無かったということになる。
(公平を期すのであれば、僕はHamer USAのレスポールタイプ、Studioモデルを何度か試したが、素晴らしい楽器であったものの、USA製ならではの豪快な鳴り方が自分に合わず、手に入れたいとは思わなかった。)
だからこそ、思った結論だ。
フライングVは、良いものになればなるほど、フライングVらしくなってしまう。
フライングVを極めれば、やっぱりそれは、フライングVらしいフライングVになるのだと思う。
だからこそ、フライングVにレスポールを求めるのではなくて、フライングVとして使い倒さなくてはいけない。
こういうものだということだ。
バカみたいに当たり前のことだ。
結局、僕にとっては、このHamer USA Vectorこそが、生涯で最高のFlyingVなのだ。
さあ、ぶっこわしに行ってやる。
音作りについても迷いを振り払った。
僕は、2016年以来、Shoalsという個人ビルダーの作ったオーバドライブを使っている。
これは、あえて分類すればミッドゲインないしはハイゲインのオーバードライブに分類される、けっこうキャラクターの強い、かなりぐしゃっと歪むオーバードライブだ。
クランチやクリーンブーストもやれるが、かなり色が付く、癖の強いやつだ。
そんなオーバードライブと、このHamer Vector Korinaを組み合わせると、ギターに付けているピックアップ(ひ・み・つ)のせいもあって、バカみたいにトレブリーに歪んだ音になる。
久しぶりの遠征で、本気の演奏をするのに、果たしてこの組み合わせでいいものか、ちょっと悩んだ。
だけれど、もっとナチュラルなオーバードライブやブースターと組み合わせて比較し検証するうちに、僕は悟った。
この馬鹿みたいに歪んだ音が、僕にとってのヘヴィメタルなのだと。
それは太い音とか、味のある音とか、そういったものではないかもしれない。
けれども、それは自分の中の子供の部分なのだと気が付いた。
それこそが自分の中にある、子供っぽいパーソナリティの現れなのだということに気が付いた。
自分の言葉で言えば”Kodomo Metal”ってことだ。
13歳の自分が、今でもそこにいる、っていうこと。
自分にとってヘヴィメタルとはそういうことなんだ、ということに気が付いた。
だから、これでいい。
もっと上品なペダルや、いわゆる定番のペダルと比較してみても、やっぱりShoalsを通した時が、いちばん自分らしい音がする。
そして、Shoalsを通した時が、いちばん、このフライングVらしい音がする。
やっぱり、それは否定できない。
笑っちゃうことに、このHamer Vector Korinaは、見た目にそんなに色気がない。
いや、無いわけじゃない。
確かに、よく見れば、本物の風格みたいなものはある。
でも、たとえばコリーナ材の木目だって、ずっと前に使っていたEpiphone製の方が、豪華で派手だった。それは、たぶん杢の入った薄い材を、貼付けていたからだろうけど。
でも、本物のコリーナは、思いの外、見た目が地味だ。
なんか、すごく、普通といった感じの見た目なのだ。
塗装に関しても、きれいな塗装ではあるけれど、ぼろぼろのレリックが入ったレトロな雰囲気ってわけじゃない。
このギターの塗装は、1990年代の後半にHamerが採用していたとされる、ラッカーでもポリでもない、独自の塗装らしい。ハイブリッド的なものではなかったかと思う。
デリケートなラッカー塗装ではないから、取り扱いにも気を遣わずに、ライブの現場に持っていける。
そんな、気取らない、普通っぽい見た目も、僕がこのギターをばんばん使い倒せる理由になっていると思う。
ギターの塗装ってことについても、折を見てひとつブログ記事を書きたいくらいなんだけれど。人とはちょっと違った切り口で。
でもそれはまたの機会に。
先に書いたとおり、このギターは、その楽器としての性能の素晴らしさにも関わらず、音の軽さゆえに、レコーディングではあまり出番がない。
だから、このギターを使って録音制作した楽曲は、数えるほどしか無いのだけれど。
でも、自分のバンド、Imari Tonesの作品の中では、このHamer Vector Korinaの特色がもっとも生かされているのは、”Jesus Wind”アルバムに収録されている”God’s People”という曲だろう。バッキングもソロも、このHamerを使っている。
ライヴでは、遠征用ギターという位置づけもあって、現場にちゃんと歪む真空管アンプが無い場合など、ディストーションペダルで音を作っちゃう場面も多かったんだけれど、映像はいくつか残っているから、振り返ってみよう。
いくつもの、自分にとって大切な演奏を、このギターで行ってきたはずだ。
今度の遠征では、大切な何かを、このギターと共に鳴らすことが出来るだろうか。