インディーズ預言者は腰が重い

 

 

今の世界の状況、人間社会の状況を見ると、音楽なんぞやっとる場合かと思わなくもない。
少なくともラットレースに血眼になっている場合ではない。
ラットの集団は崖っぷちに向かって爆走中であることはおそらく間違いないのだから。

 

人間世界の現在の状況を見るとつらいなと思う。
もっとも、そのような思いは今に始まったことではなく、ずっとずっと前からあったものだけれど。

僕らの世代でいえば、特に2011年の東日本大地震を境目として、そのような感覚がより意識的になり、強くなっていったと思う。
だが、それもすでに10年以上前、暦ひとまわり以上前の出来事となり、人々の意識や記憶からは薄れていく。また若い世代の人たちにとっては、そもそも認識が違うかもしれない。

 

ある意味で文明社会はすでに滅んでいる、というのが僕の偽らざる認識だ。
そのような世界の中で栄光を求めたところで何の意味もない。

それは音楽の世界、music industryでもまったく同じことだ。
今の世界の中にある成功や栄光は、すべてバーチャル世界で作り上げられたかりそめのものでしかない。どんなに規模や数字が大きかったとしてもだ。

そんな世界の中で、アルゴリズムやプラットフォーム上の数字を追いかけることに何の意味があるだろうか。

もうそんなことをしている場合ではないのではないだろうか。

 

そもそもがロックミュージック、ロックンロールとはそういうものであると認識している。

愛とコミュニケーションを前提としつつも、世の中のあくせくとした営みからは一定の距離を置いているところがある。
理想と現実、本音と建前のせめぎあいの中で、傷つくことを恐れずに信じる強さがある。
それはロックンロールの本質が愛に近く、そして愛の本質はこの世のものではないからだ。

 

いつも思う例え話として、お店やレストランなどの公共の場所で、The Beatlesの音楽が流れているという状況がある。

お店の側としては、The Beatlesが、世の中でスタンダードとして認められた音楽だからこそ、穏当なチョイスとしてBGMとして流しているのかもしれない。
だが実際にはThe Beatlesの音楽はまったく違う。特に中期以降とか、後期はそうだ。

あんなものを流していたら、買い物に来た人々や、ランチを食べにきたサラリーマンが、
「おおお、俺はこんなことをしている場合じゃあない。世の中にはもっと大切なものがある。俺は愛を追って、愛に従って生きなければ!」
と、愛に目覚めて、まったく違う生き方を始めてしまうのではないだろうか。

 

人は愛の真実に目覚めると、もう同じではいられない。
愛を信じて、新しい生き方を始めてしまう。
そして自由な生き方を始めてしまう。
人生の中の愛の使命に気付くのである。

 

僕はたぶん、そういうところを何度も経て、そういったプロセスを何度か繰り返して、これまで生きてきたのだと思う。
そして今も、ささやかではあるけれど、歳を取ったなりに、自由について問いかけている。

 

世の中で起きている悲惨な出来事。
世界に溢れている不条理、不平等、悲劇。
そういったものに対して声を上げることが出来なければ、なんの意味があってのロックンロールかと思う。

けれども僕は、世の中、日本、世界で起きている具体的な事象について、誰が悪いであるとか、これは間違っているであるとか、こうすべきである、とか、そのような主張をする気にどうしてもなれない。

人の世の正義とは、相対的なものに過ぎず、ひとつの物事の裏側には、また別の真実があるものだからだ。

そしてまた、それに対して自分が無力であるということも、嫌というほどに自覚している。

しかしどんな悲劇よりも、人の世における霊的な状況、そして魂の問題を、自分は感じ取っているのだと思う。
そして何よりもそれがつらいのだ。

 

今だからこそ、愛を説くべきだと思う。
愛の本質を誰かが説いてほしいと思う。

愛の本質を鳴らすべきだと思う。
ミュージシャンたちに愛の本質を鳴らしてほしいと思う。

 

そろそろ自分の宗教を始めるべきかとも思うけど、ロックミュージックにおいて、すべての本質は1970年代までの伝説的なミュージシャンたちがすでに鳴らしてしまったのと同様に、愛についてって事で言えば、イエス・キリストがもう完璧にやってしまっているからね。

だからそこにどう向き合い、どういう音を鳴らすか、それだけの問題だとわかっている。
だから自分はクリスチャンロックなんて事を始めたのだし。

 

世の中がどうなろうと、はっきり言って自分には関係ない。
ただ、世界の果ては見てみたい。
この旅路を最後まで歩ききって、世界の涯に何があるのか見てみたいという望みはあるね。

でもたとえ預言者を気取るにしても、自分は在野のインディーズ預言者でいたいと思うよ。

 

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