ライブ前日の夜なのだけれど、無駄にブログを書いてしまおうか。
オーバードライブの話題が続く。
この前、ここ数年愛用してきた”Shoals”を、修理するのと同時に、オペアンプ交換ってやつをやってみた。
結果は良かった。
もっとも、ノーマルのままの2号機を手に入れたからこそ踏み切れた改造だ。いや、オペアンプ交換するくらいは改造とは言わないのだろうけれども。
で、いっぺんやってみると、割合と簡単だったので、パーツ屋さんに必要なパーツを注文するついでに、思い立って、TS5の改造にも挑戦してみることにした。
TS5っていうのは、いわゆる「ゴキブリ」と言われるSoundtankシリーズのチューブスクリーマーのことだ。
微妙な(キュートな)見た目と、チープな作りで、人気のないやつだ。
安かったのと、見た目が可愛かったから、ずいぶん前に3000円くらいで手に入れて以来、ずっと手元に置いてあるやつだ。もっともあまり使ったことはない。
で、そんな世間一般で評価の低いTS5とはいえ、これが良いって言う人もいる。
僕も、そもそも普段、普通のTube Screamerは使わない、っていう前提の上で、これはこれでいいんじゃないかと思っていた方だ。
なんというか、「あの時代」のハードロックとかメタルが好きな人にはむしろ合う音じゃないか、と思っていたから。
しかし、ちょうどいい機会だったので、ついでにいじってみようか、という衝動を押さえ切れず、ついに改造してみることにした。
情報はググればいくらでも出て来ると思う。日本語で出て来るかどうかはわからないが、TS5 Modとかでググれば、英語の情報はいくらでも出て来るはずだ。
つまり、TS5を、ほんの数点のパーツ交換で、ヴィンテージのTS-808と同じに出来ますよ、というMODが、あるのは有名なことだと思う。
というわけで、ささやかながら、作業の記録をメモしておこうと思う。
と、言っても、ごくごく簡単な改造だし、その内容も、色々なサイトに書いてある通りだ。
これは作業の記録であり、必ずしもおすすめするものではなく、改造は自己責任でやってくださいね。
火傷しないように気をつけて。
いきます。
TS5。
まずはツマミというかノブを外す。Level、Tone、Distとうい名称になるのかな。
これは、手で外れるかもしれないし、外れないかもしれない。どちらにしても、引っ張れば抜ける。僕は、ペンチで軽くつまんで外しました。
そしたら、裏側のネジをドライバーで外す。そして裏蓋を外す。
すると、黒いシートみたいのがかぶせてあるので、そこにアースと思われる長い金具があるから、それもネジを外す。黒いシートの下から中身が出て来る。
で、中身の基盤が出て来るんだけど、TS5には、部品にそれぞれ番号が振ってあるので、判別は容易だ。
交換するパーツは、3つ。
R34、R35、そしてIC1(オペアンプ)。
R34はもともと470オームの抵抗が付いているのだが、それを100オームのものに交換する。
R35はもともと100Kオームの抵抗が付いているのだが、それを10Kオームのものに交換する。
オペアンプに関しては、TS5には通常、TA75558Pというものが使われているらしいが、これを、定番のJRC4558Dに交換する。(または、他のものでもよし。そのへんは、お好みで)
というのが、一般的な「808MOD」の内容であると思う。
ググって出て来た情報によれば、さらにC10のキャパシター(コンデンサーのことか?)を交換するという選択肢もあるらしく、これを”.1uF”だかなんだか、そういうやつに替えると、低音が出るようになるらしい。
しかし、僕はTube Screamerに低音が必要だとは必ずしも思わないし、今回欲しいのはあくまで”808Mod”であるし、また低音の出るチューブスクリーマーが欲しければ、僕はすでに”Baked Mod”を持っているので、どっちにしても必要なく、これはパスした。
というわけで、まずは交換するパーツを基盤から外す。
これは、例の「はんだ吸い取り線」を使うのだ。
Goot WickとかDesoldering Wickとか言われるやつだ。
Shoalsの修理の時にいっぺんやっていたこともあり、前回よりは楽にはんだを吸い取ることが出来た。まあ、オペアンプのところ8つ吸い取るの面倒だったけどね。
ちなみにぐぐったサイトに書いてあったことによると、完全にはんだを吸い取らないままで無理にパーツを外そうと力をかけると、基盤の銅の線の部分が割れてしまったりするらしいので、ちゃんとハンダをきっちり吸い取ってから無理なく外しましょうね、みたいなことが書いてあった。
3つのパーツを外した後の写真がこれである。
で、外したところに、新しい抵抗を取り付ける。
なんでもどこかに書いてあったことによると、「金属皮膜抵抗」ってやつが、toleranceっていうのか誤差が少なくて良いらしいので、僕もそれを注文してみた。
しかし、抵抗って100個セットで売られてるのね。びっくりした。すいません素人なもんで。
もともと付いていた抵抗よりも、ちょっと微妙にサイズが大きめなので、足を折り曲げても、微妙に基盤から浮いてしまう。が、気にしない。
そして、オペアンプであるが、僕はこれはソケットを取り付けることにした。
それは、僕はこのTS5を、せっかくだから、いろいろなオペアンプを載せ替えて遊ぶ、というか、そういう実験台の用途に使いたいからだ。
ソケットも、パーツ屋さんで見たら、1個20円くらいで売られてた。なんか不憫なパーツだな・・・
オペアンプをソケットに乗せることにも賛否あると思う。
この前見た、例のデジマートの実験室の記事には、「ソケットに乗せるとそれだけで音が悪くなる」みたいなことが書かれていた。そういうことも十分あり得るだろう。
けれども、ググって出て来たPremier Guitarの記事には、逆に「ゴールドを使ったハイクオリティなICソケットを使うことでベストな接点を確保するのはおすすめの改造だ」と書かれている。どっちやねん。
とはいえ一個20円くらいのソケットでは逆効果だったかもしらんが、まぁ気にすまい。
ソケットを付けてみた写真これです。
オペアンプには向きってものがあると思いますが、基盤にも図が書かれているから、間違うことは無いと思う。けど、向きを間違えないよう気をつけてください。(くぼみのある方。JRC4558Dとかだと、丸い穴の付いている方。)
で、僕は、ただ普通に定番っぽい808にしてもつまらんと思ったので、この前、Shoalsの修理の際に「一個目」に試して、「二個目」に試したLT1498に敗れたところの「OP275」をのっけてみたのである。
これも、例のデジマートの記事で、良いと書かれていたもののひとつだ。
あと、ICをいじる前に、静電気に気をつけましょうね、と、ググったサイトに書いてあった。知らんけど、なんか金属の物体に触れるとかして、放電しておきましょう。特に冬は。
あと、テストする時とか感電しないように気を付けてくださいね。
この記事は作業の記録ではありますが、改造を勧めるものではなく、事故っても責任は取れません。
で、パーツを取り替えたら、元の姿に組み立て直すのはそんなに難しいことでは無いはずなので、省略します。
オペアンプのっけてみたの図。
ここでもうひとつ、話題がありましたね。
TS5というか、このSoundtankシリーズは、フットスイッチというか、スイッチの接触不良が起こることで有名だと思います。古いものだし、スイッチがすごくチープなものなので、ほぼ絶対に接触不良を起こしていると思います。
これは、分解した状態で、すっごいちっちゃいスイッチのパーツがあるので(写真のSW1の部分ですね)、ここに接点復活剤をぶっかけると、改善するようです。僕も、そうしてみました。そして確かに、改善しました。なんか、荒っぽい解決法だけれど。
これも自己責任でお願いしますね。
で、めでたく改造出来ました、ということで、テストしてみました。
といっても、現在のウチの環境だと、ペダル、アンプ、アッテネーター(ダミーロード)からラインでパソコンにぶっこんで、その中でキャビのIRを経由して鳴らす、という環境です。
その環境で、ちょこっとテストしてみただけに過ぎません。
いつも言っていることですが、歪みであれ、オーバードライブであれ、どんな機材であれ、おっきな音でスタジオや、ライブ会場や、そういった場所で鳴らし、バンドのアンサンブルの中で試してみてこそ、本当の結果がわかります。
なので、この段階で部屋で一人で試しているだけでは、すべてがわかったことにはならないのですが、それを踏まえて、インプレッション。
まずはオペアンプをOP275にしてみて。
やはりやたらと分離の良いモダンな音になった。
パワー感もすごくある。
いかにもチープな「ゴキブリ」型のTS5から、モダンでハイスペックな音が出て来る、というのは、「サイトギャグ」(sight gag)として面白いので、いいんじゃないかな、と思える。
そして、全体の音抜けも断然良くなった。これは、後でオペアンプを定番のJRC4558Dに替えてみてもやっぱり良かったので、抵抗を替えた結果なのでしょう。
うん、普通に使える子になった。
手持ちの他のペダルと比較してみても、もはや音抜けの面では見劣りしない。
むしろBaked Modとかよりも場合によっては抜けるかも。
いいじゃん、808MOD。
しかし、そうはいっても、TS5の特徴であるところの、プラスチック筐体ならではの「妙な音のチープさ」「妙な音の丸さ」「ちょっと細い音の粒立ち」などは残っているので、さすがにそのものずばりヴィンテージには、たぶんなっていないのではないか?
そして、それは、良い言い方をすれば、改造してもTS5ならではの味は残っていると言えるので、「もともとTS5のチープさが好き」という人も、試してみる価値はあると思う。
ハイパー・ゴキブリって感じで。
そして、OP275のモダンで高性能な音も悪くないと思ったんだけれど、
やっぱり、定番のJRC4558Dも試してみよう、ということで、載せ替えてみた。
すると。
「やっぱりこれだよね」感が半端ない(笑)
どう考えてもこれが正解。
音太いし、前に出るし、明らかにエレクトリックギターとして正しい音。
チープな見た目のTS5からやたらハイスペックでモダンな音、というギャグはやってみたいし、これからもいろいろ載せ替えて試してみようと思っているけれど、
やはりこの「4558D」ってやつは、神がエレクトリックギターのために与え賜うた、特別な何かなんだろうな。
暇があれば、いわゆるヴィンテージの「艶あり」ってやつも体験してみたいけれど、どこで売ってるのか知らんしね。
まあ、あんまり関係ないや。
自分の音楽性だと、たぶんそっちにはいかないし。
というわけで、やはり「4558」は定番なんだな。
デジマートの記事でも、いろいろな高性能オペアンプを試して、「良い」って書かれていたけれど、
しかし、ShoalsのオペアンプをLT1498に替えてみて成功だったけれど、そうはいっても、すべての場合においてJRC4558Dを上回っているわけではなく、用途によってはやはりオリジナルの4558Dの方が良い、という場面はぜんぜん予想できる。
なので、オペアンプを高性能なものに載せ変えよう、と言っても、十中八九、とは言わないまでも、十中、6か7くらいまでは、やはり「定番の4558Dの方が良い」となるような気がしている。
ハイファイなら良い、ってわけじゃあ、ないからね。
それがギターの難しいところなのだろう。
これ、マイクプリのオペアンプも試してみて、似たような結果が出てしまったのよ。
つまり、音楽制作で必要な「太い音」っていうのは、オーディオ的なハイファイとは別だ、ってことが。
でも、その話題は、また別の機会に。
— 追記。結局、オペアンプは定番のJRC4558Dではなく、OP275に戻しました。
やっぱ普通のまんまだと退屈だな、って思って。
で、デジマートの記事で評価の高かった、LME49860NAってやつを取り寄せて試してみたんですが、恐ろしくハイファイだったけれど、僕はOP275の方がパワー感があって面白いと思った。なので、そっちで「ハイパー・ゴキブリ」として活用することにした。まぁ、おもちゃです。(もっとも、LME49860NAも、専門のパーツ屋さんではなく、Amazonで注文したので、果たしてどこまで本物なのやら、わからないが・・・・)
そんなわけで、非常に安価で、難易度も低い改造で、ばっちり手に入ってしまったど真ん中。まぁ、最初から普通に「808」を買えば良いのだけど、「ゴキブリ」は安いし、手元にたまたまあったから。
“TS”を存分に楽しむためのおもちゃが手に入りました。
もともと「普通のTS」では足りない人なので、これをバンドの制作や実戦で使うことは無いだろうと思うけれど、そうはいっても、やはり勉強になる。
そのうちバンドのリハにも持ち込んで鳴らしてみたいと思います。