ロックンロールの母!! Sister Rosetta Tharpeの何がすごいのか!?

 
 
前述のとおり(?)、僕はここ数年、どこぞの最先端のバンドを聴いても「新しい」と思うことが出来ず、逆に1960年代に活躍していた「初期Fleetwood Mac」(Peter Green)に夢中になり、その中にとんでもない新しさを感じたりしていました。
 
そして、つい先日、おくればせながら、本当に恥ずかしながら、自分はこんな人が居たということについて知らず、Sister Rosetta Tharpeという1930年代から活躍していた女性アーティストについて知った時、本当に衝撃を受けて、一瞬にしてファンになってしまいました。
 
そして、そんなシスター・ロゼッタの1930年代の録音に、本当にとんでもない「新しさ」を感じています。
 
やはり一応、ゴスペルのカテゴリに入る人ですから、その手の音楽に詳しい方であれば、きっと当然知っている存在でしょう。
 
 
けれども、間違いなく「ロックンロールの母」(Godmother of Rockn’roll)という肩書きがふさわしい人にもかかわらず、アメリカはクリーブランドの「ロックの殿堂」(Rockn’Roll Hall of Fame)に殿堂入りしたのは、やっと2017年12月のこと(2018年度のInducteeとして掲載されている)だというじゃないですか。
 
その功績や、影響力に比して、過小評価なんて言葉では足りず、間違いなく「無視されてきた」「忘れられてきた」アーティストだったわけです。
 
こんなとんでもない人を、なぜ今まで、知らなかったんだ、と。
一応これでも、インディーバンドやってしがないバンドマンなりにもロックというものに向き合ってきた自分の人生の中で、これまでこんな飛び抜けた存在を知らなかった、というのは、それ自体がショックなわけです。
 
 
そして、ついさきほども僕は、自分は音楽人生の中で、若い頃に問いかけてきた問いに対して、いくつもの答えを得ることが出来た、と書きましたが、
このSister Rosetta Tharpeは、まさに自分の音楽人生そのものに対する回答、というくらいに、僕としては大きな意味と、メッセージを感じるアーティストだったんです。
 
知ってのとおり、僕は「クリスチャンロック」「クリスチャンヘヴィメタル」という、日本では非常にニッチでマイナーな分野で演奏活動をしている人間であり、そんな自分の立場からの感想であり、個人的な思いである、ということを前提にした上で、書いていきたいと思います。
 
 
まだまだ僕はこのアーティストの存在を知ったばかりで、音源も大して聴き込んでいるわけではなく、知識も情報もぜんぜん知らないんですが、でも、ちょこっとだけウェブサーチして、いくつかの音源を聴いた段階で、最初の新鮮な驚きを言葉にして書き留めておきたいと思います。
 
 
と、書く内容を少し考えてみたんですが、その時点で、すでに、自分の言葉ではとても、このシスター・ロゼッタ・サープの凄さを伝えられる自信がありません。
自分がシスター・ロゼッタの音楽を聴いて感じた衝撃を、言葉にして表現できる自信がありません。
 
なんというか、あまりにも破格過ぎる。
ぶっとびすぎている。
ユニークな点が多過ぎる。
凄過ぎて、説明すら出来ない。
 
でも、書いてみます。
 
 
Sister Rosetta Tharpeのここがすごい
その1
「ロックの創始者たちに大きな影響を与えた」
 
 
ええ、ウィキペディアによりますと。
というか、ウィキペディアに日本語ページがなく、英語版を見るしかない、というのがそもそも、この人の世間における認知度がどれだけ低いか、ということを表していて複雑な気分になります。
 
 
Sister Rosetta Tharpe (シスター・ロゼッタ・サープ)は、1915年にアメリカ南部のアーカンソー州で生まれ、1973年に58歳で亡くなっています。
 
1938年にDecca Recordsにおいて初めてレコーディングを行い、このDeccaにおける1938年から1940年代の半ばくらいまでの録音(Wikipediaによれば7年契約だったと書かれている)が、おそらくは一般的に考えて彼女の商業的にもっとも売れた時代だったと考えられます。ゴスペルのスピリチュアルな内容の歌詞を、ギターを中心としたリズミカルなアレンジで演奏したサウンドは、一般世間ではヒットとなったが、熱心なクリスチャンの人々にはショックをもって迎えられたそうです。
 
1942年に、音楽評論家のMaurie Orodenkerという人が、Sister Rosetta Tharpeの”Rock Me”という曲について、「ロックンロールのスピリチュアルな歌唱」(rock-and-roll spiritual singing)というレコード評を書いたそうです。そしてこれが、「ロックンロール」という言葉が公式に使われた記録に残っている最初のもの(のうちのひとつ?)だそうです。(この音楽評論家は、ロックンロールという言葉を定着させたことで知られているらしい。)
 
また、Sister Rosettaが1944年にレコーディングした”Strange Things Happening Every Day”という曲は、ビルボードのR&Bチャート(当時はHarlem Hit Parade、あるいはRace Recordsという呼び名だった)のトップテン入りした最初のゴスペルソングだったそうですが、このレコードは「最初のロックンロールのレコード」としてよく引き合いに出されるそうです。
 
そしてこの時代のシスター・ロゼッタのノリノリの演奏は、Little Richard、Johnny Cash、Carl Perkins、Chuck Berry、Elvis Presley、Jerry Lee Lewisといった後のロックンロールのスターたちに大きな影響を与えた、と言われています。
 
エルヴィス・プレスリーは彼女の大ファンだったと言われていますし、
(参照元)
 
チャック・ベリーに至っては「僕は自分のキャリアを通じてずっと彼女のモノマネをしていただけだ」と発言していたそうです。
(参照元)
 
また、当時14歳だったリトル・リチャードをステージに上げて、人前で初めての演奏をさせたのもSister Rosetta Tharpeだったそうです。そしてその時、彼はミュージシャンになると決意したのだそうです。
(参照元)
 
また、後年になってシスター・ロゼッタはヨーロッパをツアーするようになり、1963年にはMuddy Watersと共にイギリスのマンチェスターを訪れ、その演奏を見るためにロンドンからバスに乗ってやって来た熱心な若者たちの中にはエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、キース・リチャーズ、ブライアン・ジョーンズらが居たそうです。
(参照元)
 
そのマンチェスターのコンサートは翌年1964年にも行われたようで(?)、雨の降る中、駅のプラットホームの上で行われたSister Rosetta Tharpeの演奏は当時のイギリスでテレビ放映され、伝説となって多くのギタープレイヤーたちに影響を与えたと言います。
 
この時の映像はYouTubeにも多数アップされていますが、凄まじい演奏です。
 
 

 
こうした功績から、彼女は”Original Soul Sister”であるとか”Godmother of Rock and Roll” (ロックンロールのゴッドマザー)などと呼ばれるわけですが、しかしその存在は、後の世の人たちにはほとんど知られておらず、たぶん近年のドキュメンタリー番組であるとか、今回の「ようやくのロックの殿堂入り」をきっかけにして、やっと今、再評価が始まっているのだと思います。
(そして、この文章もそんな流れの中で書いているものです。)
 
 
Sister Rosetta Tharpeのここがすごい
その2
最高のブルースミュージシャン
 
 
さて、そんなわけでここからは僕の個人的な思いを書いていきたいのです。
 
基本的に僕はこのシスター・ロゼッタ・サープのことを、「ブルーズアーティスト」「ゴスペルアーティスト」そして「クリスチャンロッカー」として捉えています。
 
僕は一応、自分が演奏するジャンルはハードロック、ヘヴィメタルのカテゴリになりますが、ロックギタリストのはしくれである以上は、若い頃からそれなりにブルーズには親しんできました。親しんできた、というよりは、勉強のために聞くように努力していた、という感じでしょうか。
 
かといって、今でもまだ、ブルーズをかじっている途中でありますが、歳をとって、ここ数年は、より本格的にブルーズを聞くことが多くなりました。
 
そして、熱心なブルーズファンからはどう思われるかはわかりませんが、自分にとって決定的で、本当に好きになってしまったのが初期フリートウッドマックやJohn Mayall and the Blues Breakers等で活躍したPeter Greenという人でした。
(もちろん、他にもお気に入りのブルーズ、ブルースロックのミュージシャンはたくさん挙げることが出来ますが)
 

Blues、ブルーズ、ブルース、というのは、基本的にシンプルで、単純な構成の音楽であるので、同じブルーズであっても、好みというのかフィーリングの問題で、合う、合わない、があると思います。
 
なので、人によって好みが分かれる、このギタリストが好き、とか、このシンガーが好き、とか、それこそ演歌歌手みたいな感じで、体質的に好みというものがそれぞれにあると思います。
 
たとえばそれは、セックスというものが、(最終的には)やることはみんな同じでも、人によって相性とか、好みとか、合う、合わない、があるのと同じだと思います。
 
そういうのを踏まえた上で、僕はPeter Greenのギタープレイが、非常に自分のストライクゾーンであり、好みなのですが、
 
このSister Rosetta Tharpeについて語る時、
僕は別に、この人がロックの創始者だから、とか、女性ギタリストだから、とか、ゴスペルを歌うクリスチャンアーティストだから、好きなわけではなく、
単純にブルーズミュージシャンとして、
最高に素晴らしいギタリストであり、最高に素晴らしいアーティストだから、好きになってしまったわけです。
 
つまり、自分の中の「ブルーズ」という大きな「道」みたいなものの中で、このSister Rosettaは、間違いなく最高峰にいる人だ、ということなんですね。
自分の中の「ブルーズ」のひとつの究極の答みたいな人だ、ということなんです。
 
これは、自分の中ではものすごく重大なことで。
 
Sister Rosetta Tharpeは、もちろん”Blues”のカテゴリの中で語られることもありますが、実際は「ブルーズ」にとどまらず、「ブルーズをはじめとした多彩なサウンドを奏でたゴスペルアーティスト」だったため、「ブルーズ」という神話の中で、正当に評価されてこなかった、という印象を受けます。
 
けれども、そうであったとしても、Sister Rosettaは僕にとっては究極のブルーズアーティストであることに変わりありません。
 
 
 
 
Sister Rosetta Tharpeのここがすごい
その3
時代を先取りし過ぎ!異次元のギタープレイ

僕がシスター・ロゼッタについて、なによりも一番魅力を感じるのは、やはり彼女のギタープレイです。
 
彼女のデビューは1938年。
そもそも、女性がギターを弾く、ということ自体、非常に珍しかった時代だと思います。
 
しかも彼女はゴスペルアーティスト。
キリスト教に縁のない人には、あんまりわからないかもしれませんが、
保守的なキリスト教の土壌の中では、オルガンを中心とした賛美歌こそが神様の音楽で、
ギターは悪魔の楽器、ギターなんかで演奏する音楽は悪魔の音楽、
みたいな考えが、根強かった、
というか、下手をすると、今でもそういうのが残っている世界です。
 
(僕自身も、そんな土壌の残るキリスト教の世界で、ヘヴィメタルを演奏している身ですので、察してください、笑)
 
そんな中で、彼女は女性でありながら、ギターを弾き、
というか、弾く、なんてもんじゃない、
ばりばりと弾きまくり、弾き倒しています(笑)
 
それでいて、「ジーザスは私を救ってくれる~」みたいにして賛美歌を歌う。
 
存在自体が、すでにメーターを振り切っています。
 
しかもシスター・ロゼッタは、いちはやくエレキギター、エレクトリックギターを導入した。手元にあるCDのライナーノーツによれば、1947年頃を境に、彼女はアコースティックから、エレクトリックギターに持ち替えたそうです。
 
けれども僕は、シスターロゼッタがエレクトリックに持ち替える前の、Decca時代の音源を聴いて、余計に衝撃を受けたんですね。
 

一部、エレクトリックと思われる演奏もありますが、ほとんどはアコースティックギターの演奏です。
いくつもの写真が残されていますから、それらの写真から推察するに、「リゾネーター・ギター」を使うことが多かったのだと思います。あるいは「アーチト・トップ」のギターとかも使っていたかもしれません。そのへん、僕もあんまり知識は無いのですが。
 
けれども、そんなアコースティックのギターを使っているのに、聴こえてくる演奏は、まるでエレキギターかと思うような、「ばりばりのロックンロールのリードプレイ」です。速弾きしてます。ええ、はっきり言います。速弾きしてます、ばりばりと。
 
ここで、ちょっとでもロックとか、ギターの知識がある人なら、ちょっと待て、と思うはずです。「おかしいじゃないか」と。
 
だって、1938年とか、1940年代前半とかの録音ですよ。
 
「リードギター」なんていう概念が、そもそもあったのか、どうか、それすら疑わしい時代です。
 
ギターという楽器については、みんな、一般的には、こう教えられてきたはずです。
 
いわく、ギターという楽器は、小規模な演奏や、歌の伴奏のための楽器として使われてきたが、バンドの中では音量が小さかったため、アンサンブルの中でコードを提示する程度の補助的な役割しか持たず、リード楽器として開花するのは、エレクトリックギターが開発され、それに適したプレイスタイルが編み出されてからのことだった。
 
みたいな感じで。
 
けれども、このシスター・ロゼッタ。
エレクトリック以前の時代なのに、めっちゃリード弾いてます。
しかも、おもいっきり、完成されたブルーズのリードスタイル。
いいや、ブルーズの枠を越えてます。
まさに「ロックンロール」としか言いようのないスタイルです。
 
うーん、おかしいな。
 
気を取り直して、同じくらいの時代の他の有名なギタリストを聴いてみましょう。
 
モダンブルースの世界に、エレクトリックギターを初めて持ち込み、リードギターのスタイルを打ち立てた代表的な功労者として、T-Bone Walkerという人が居ます。
 
私の手元にも、このTボーン・ウォーカーの有名なCDがあります。
これは、1940年代の後半に録音されたものだそうです。
 
そうだよね、エレクトリックギターの先駆者。
シスター・ロゼッタよりもちょっと遅いけど、エレクトリックギターを弾いていた人は、他にもいるもんね・・・。
 

って、やっぱりおかしくないですか?

 
T-Bone Walkerの演奏は、もちろん、素晴らしい歴史的な名演ではあるのですが、
シンプルなブルースのギターリックと、落ち着いたジャズ風の演奏は、「ああ、昔の音楽だね、へえ、1940年代なんだ、うん、納得」みたいな感じです。
それで、もう一度、シスター・ロゼッタを聴いてみると、
「やっぱりおかしいだろ、これ!!」
 
ノリノリのリフを弾きまくり、アコースティックなのに弦をベンドしまくり、バリバリと強力にピッキングしまくり、そしてロックンロールのフレーズを出しまくり。はっきり言って、Tボーン・ウォーカーよりも、数段違う次元に居ます。
 
「時代考証おかしくね?」
 
どう考えても、そう言いたくなります。
これが、1970年代の録音だよ、とか言われれば、「ユニークなギタリストだね」で片付けることも出来るんですが・・・。
もしこれが、本当に1930年代とか、1940年代前半の録音だと言うのであれば。
時代考証がおかしかったのは、我々の方であり、
後の世の音楽評論家や、僕たち一般リスナーの、時代認識の方が、ずっと間違っていたのだ、という事になります。
 
つまり、世界は、ロックンロール、ロックギター、というものの時代認識について、ずっと長いこと、間違っていたのだ、という、ことなんです、これって。
 
チャック・ベリーが、「自分はシスター・ロゼッタの真似をしていたに過ぎない」と発言していたというのは、まんざら冗談ではない、ということがわかってきます。
 
 
果たして、1930年代とか、それ以前の時代に、「リード・ギター」なんてものが、どれだけあって、そのプレイスタイルは、どれだけ確立されていたのか。
 
なんでも、とある記事に書いてあったことによれば、Sister Rosettaは、若い頃、Memphis Minnieという女性ブルーズシンガーの影響で、ギターを弾くようになったとか。
 

このMemphis Minnieという人も、僕はぜんぜん知らなかったのですが、YouTubeを介して聴いてみると、シンプルで泥臭いブルーズではありますが、なかなか印象的なギタープレイヤーであることがわかります。
あるいはこういった多くの(今となっては無名の)ブルーズミュージシャンたちによって、独特のギタープレイのテクニックというものは既に培われていたのかもしれません。
そうはいっても、やっぱりちょっと、Sister Rosetta Tharpeは異次元過ぎます。
まるで突然変異のように、という言葉がぴったりくる気がします。
 
そして、そんなDecca時代の名演を聴いていて、思うこと。
 
この人、アコースティックギターの頃から、まるでエレクトリックのようなプレイをしている。
 
だから、この人にとっては、いちはやくエレクトリックギターを導入したのは、ごくごく自然なことだった。
 
シスター・ロゼッタは、まさにエレクトリックギターを弾くために生まれてきたようなギタリストだった。
 
というよりも、エレクトリックギターとは、彼女のためにこそ開発されたんじゃないか、と思えてくるくらいです。
 
僕ら、後の世のギタリストは、そんな彼女の「爆演」の恩恵にあずかっているに過ぎない。
そんな気がしてきます。
 
 
 
 
 
 
Sister Rosetta Tharpeのここがすごい
その4
ヴォーカルスタイルが自由過ぎる!

 
まったくもって破格で異次元すぎるギタープレイはもちろんなんですが、僕はシスター・ロゼッタの歌、ヴォーカルにも魅力を感じています。
 
先ほどの「ブルースの好み」というところでも、好みの問題、ということは触れたのですが、僕はSister Rosettaのヴォーカルに関しても、自分の好きなスタイルだ、と言うことが出来ます。
 
僕は、あんまり朗々と歌い上げるスタイルのヴォーカリストは好きじゃない。
 
ヘヴィメタル、ハードロックの世界でも、いかにも「凄いヴォーカリストだぜ~」みたいにしてオペラみたいに歌う人よりも、ちょっとくらい下手でラフでも、個性があるタイプのヴォーカリストの方が好みです。
 
シスター・ロゼッタは、そもそもゴスペルシンガーだから、歌は非常に強力です。
とってもパワフルなヴィブラートを聴かせます。
けれども、それが全然、くどくない。
そして、彼女のスタイルはそれだけじゃない。
 
もっとあっさりと、しなやかに、ノリノリで、しゃべるように、吐き捨てるように音を置いていくタイプの歌唱も得意で、むしろそちらの方が持ち味が出ています。
 
これは、一般的に言うところのゴスペルシンガー、というよりは、後の世で言うところのファンクとかR&B、そして、もう決定的に、ロックの歌唱法です。つまりは、シャウトしている、ということですね。
 
同じ時代のゴスペルシンガーの中で、マヘリア・ジャクソンという、それはそれは有名なゴスペルシンガーが居まして、シスター・ロゼッタ・サープはその型破りなスタイルでゴスペル界(キリスト教の世界)からは白眼視されていたこともあり、人気の面では次第にマヘリア・ジャクソンが上回っていったんだそうです。
 
僕は(音楽スタイルの意味での)ゴスペルミュージックにも全然造詣はないので、マヘリア・ジャクソンの歌う映像を見て、素晴らしいシンガーだ、ということはわかりますが、やっぱり、くどくどと歌い上げるタイプのシンガーは、あまり好みではない。自分は「ロックミュージシャン」「ブルーズミュージシャン」としての観点で見ていることもあり、断然シスター・ロゼッタの方が好みです。
 
そういった、しなやかで、柔軟なヴォーカルスタイルを持つシスター・ロゼッタですが、
その歌唱スタイルも自由過ぎて、曲の中でも、メロディを歌うだけじゃなくて、語りに入ったり、そしてリズムに合わせて語ったり、そう、はっきり言っちゃいましょう、ラップしちゃってます。
 
もちろん、古いブルーズの中にも、メロディを歌わずに語りっぽくなってるものとか、色々あると思いますが、ここまでノリノリで、リズミカルにやられると、もう「ラップ」としか言いようがない。
 
ヴァースっていうのか平歌はラップで押し通して、サビ(コーラス)の部分でメロディを歌う、という、最近の歌ものラップとかで定番のパターンが、すでにここで展開されています。
 
ラップの起源についてはいろいろな説もあり、いろいろな意見もあると思うんですが、今の僕は、こう言うことが出来ます。
もちろん、語りっぽいものだけでなく、韻を踏んでライムする、とか、いろいろな「型」の条件はあるにせよ。
自分の知っている中で、ひとつもっとも古いラップの録音の例として、1940年前後に人気のあったシスター・ロゼッタ・サープという一人のぶっとんだゴスペルアーティストが、既にラップっぽいことをやっている、と。
自由過ぎるゴスペルのスタイルと言うのか・・・。
やはりオリジナル・ソウル・シスターと言われるだけあって、その自由でおおらかなノリは、時代やスタイルを平気で乗り越えて来ます。
 
僕が今、ひとつ信じていることがあって、
それは、「ロックンロール」というものは、
このシスター・ロゼッタという、一人のあまりにも破格で自由なアーティストの、身体的な「ノリ」から生まれてきたものなのではないか、と。
 
そんなふうに、思わせるほどの、圧倒的な「ノリ」を持った人であると思います。
 
 
 
 
Sister Rosetta Tharpeのここがすごい
その5
ゴスペル界のスーパースターにして、スキャンダラスな異端者だった!
 

現代よりもよほど保守的だった昔の時代にあって。
しかも、「ギターを持ったら悪魔」なんていうキリスト教世界にあって。
女性がギターを弾くということ自体が珍しかった時代にあって。
 
ばりばりとギターを弾きまくってゴスペルを歌っていたシスター・ロゼッタ・サープは、明らかに異端者でした。
 
世間では人気を博しましたが、保守的なゴスペルの世界、キリスト教の世界からは、批判をされていたようです。
 
そして、そんな中で、スキャンダラスな噂も流れていたようです。
 
それは、長年にわたる共演者であるMarie Knight (マリー・ナイト)という女性ゴスペルシンガーとの間に、レズビアンの関係があるのではないか、とゴスペルコミュニティの中で噂されていたそうです。(と、Wikipedia英語版に書いてある。)
この事は、双方のアーティストからくだらないゴシップに過ぎない、と否定された、とウィキペディアにはありますが、
他の記事を見ていくと、たとえばこのRolling Stone誌の記事によれば。
Sister RosettaとMarie Knightの仲は「公然の秘密」(open secret)であった、と書かれています。
これは、シスターロゼッタのバイオグラフィーを書いた歴史家のGayle Waldがそう証言しているのだそうです。
 
(もっとも大手メディアが書いているからといって、真実かどうかはわかりませんが・・・)
 
そしてこちらの記事とか見ると、もうはっきりと「バイセクシャルだった」と書いてしまっていますね。
 
記事の書き方にもよるかと思いますが、彼女はその時代にあって、出来る限りオープンで居ようとした、というニュアンスで書かれているように思います。
そしてシスター・ロゼッタ・サープは、いわゆる”Queer”であったようです。
この”Queer”(クィア、と読むのでしょうか)の定義も、僕ははっきり言ってあまりわかりませんが、相当に派手な格好をして、ステージ上でもカツラを着用するなど、ファッションの上でも型にはまらない自己表現をしていたようです。
 
1930年代に人気を博した黒人女性のゴスペルシンガーが、凄腕のギタリストであるだけでなく、ロックンロールの決定的な創始者であり、何十年も時代を先取りした多彩な音楽を奏で、バイセクシャルでクィアだった、とか、もうその時点で、あまりにもユニーク過ぎて、説明する言葉の方が追いつきません。
しかも彼女はそれでも、ゴスペルを歌い続けた。
保守的なゴスペル界からは批判されても、一般世間に向けてゴスペルを歌い続けた。
その圧倒的なブルースギターと共に。
つまり彼女は、生涯「クリスチャンロッカー」であり続けた、ということです。
 
今の時代にあっては、LGBTQというのか、セクシャルマイノリティというのか、そういった少数派の存在や権利ということも声高に主張され、次第に認められるようになってきました。
けれども、昔はそうではなかった。
ましてや、これは保守的なキリスト教世界のこと。
あまりにも、あまりのことだと思います。
でも、それが事実だった。
これは、自分自身クリスチャンロックというジャンルで、信仰と音楽表現の狭間で葛藤してきた僕にとっても、決定的に大きな意味を持つ事実です。
そして、キリスト教の世界というのは、今でもやはり保守的です。
僕自身、どちらかと言えば海外向けに発信し活動しているバンドをやっていることもあって、こういった話題も、日本語で自分のブログに書くことは出来ますが、はっきり言って、自分のバンドのページに、英語で海外のファンの人たちに向けて書くことは、あまり出来ません。出来ない、とは言わないまでも、ためらわれるのが正直なところです。
 
それは、僕のバンドを応援してくれる人たちの中にはやはり、熱心なクリスチャンの人たちがたくさん居て、そういった人たちの中には、保守的で、ゲイやレズビアンといったものについて「罪」と考える人が少なからず居るからです。
 
そもそもキリスト教にあっては、すべての人間は等しく「罪人」であり、だからこそ誰もがイエス・キリストの救済が必要なのだと、それが本来キリスト教ってもののはずなんですが・・・。
 
 
 
 
 
Sister Rosetta Tharpeの衝撃その1
ロックの歴史は間違いだらけだった!
 

 
Sister Rosetta Tharpeは間違いなく「ロックンロールの創始者」ですが、歴史的にはずっと忘れ去られてきた、そんな存在です。
また、1930年代とか1940年代が人気のピークだった、とても昔のアーティストです。
 
ですから、こうやって記事を書こうとしても、ネット上を探しても、情報があまりにも少ない。
 
そんな中で見つけたこの記事は、かなり思い入れたっぷりに熱い文章が書かれていました。
 
 
この記事の冒頭にはこう書かれています。
 
「最初にSister Rosetta Tharpeの音楽を聴いたとき、私は本当に涙を流して泣いてしまった。それは、彼女の音楽が、まるで天使がジンを5杯飲んだ後にハープをアンプにつないだらこうなるだろう、というくらいに素晴らしかったからじゃない。それは、彼女の音楽が、それが1930年代に録音されたのに、まるでプリンスが昨日スタジオで録音したみたいなサウンドを持っていたからでもない。
私は、彼女のことが歴史から抹消されていたから泣いたんだ。
この地球上に生きていて、Sister Rosetta Tharpeのような存在に、30年以上も気付かなかったということは、それはつまりこの世界のすべては嘘かもしれないという意味だからだ。もし、こんなふうに意図的に一人の人間を歴史から抹消出来るのだとすれば、もう何も意味を持たない。」
 
つまりこういうことです。
もし多くの「音楽歴史家」「音楽評論家」にロックンロールを発明したのは誰か、と聞いたとすれば、彼らはこう答えるだろう。
「エルヴィス・プレスリー、ジョニー・キャッシュ、チャック・ベリー、リトル・リチャードたちだ。」と。
 
けれども、実際には彼らはみんな、シスター・ロゼッタ・サープから影響を受けている。それは他でもなく、彼ら本人がそう言っているのだ。
 
でもこうして、音を聞けば一発でわかる。
シスター・ロゼッタこそが、最初だったのだと。
あまりにも圧倒的に、時代の先を行っていたのだと。
 
だから、Music Authority (音楽の権威)なんてものは、大嘘なのだ、と。
歴史家も、評論家も、みんな嘘っぱちなのだと。
 
僕たちはみんな、その真実を、知らなかったのである。
これまで、ずっと。
 
 
なぜ彼女は、音楽の歴史、ロックの歴史から抹消されてきたのか。
 
彼女は決して、一部の人しか知らない、マイナーな存在ではなかった。
全盛期だった1940年代において、彼女は紛れもなくスーパースターだったのだ。
だけれども、その後のロックの歴史からは、なぜだか無視されてきた。
 
ロックの創始者でありながら、「ゴスペル」という特異な立ち位置に居たからだろうか。
 
女性だったからだろうか。黒人だったからだろうか。おそらくはその両方だったからなのか。
 
あるいは、あまりにも型破りで、スキャンダラスな存在であった彼女のことを、保守的なゴスペル、キリスト教世界の住人たちは、「なかったこと」にする方が都合が良かったからなのか。
 
あまりにも時代を先取りし過ぎた、型にはまらない音楽のスタイルが、人々の認識の限界を越えていたからなのか。
 
あるいは単純に、その後のロックをめぐる狂騒の中で、人々は忘れっぽくなっていただけだろうか。
 
 
しかしそんな理由はどうあれ、真実が明らかになった今となっては、僕たちはこう言わなくてはならない。
 
ロックの創始者は誰か、
ロックンロールを発明したのは誰か、と聞かれたら。
 
もちろん、いろいろな経緯はあるにせよ。
「ロックンロールの母」として、
Sister Rosetta Tharpeの名前を、決して忘れるわけにはいかない。
 
ロックンロールを発明したのは、女性だったのだ。
黒人で、バイセクシャルで、ギター弾きまくりの、神について歌うゴスペルアーティストの女性。
 
驚くべきことかもしれないが、それが事実だったのだ。
 
 
 
 
Sister Rosetta Tharpeの衝撃その2
ロックンロールは、「クリスチャンロック」から始まった。
そして、「クリスチャンロック」を巡る状況は、今も昔も同じだった。
 
 

 
僕は、自分自身もキリスト教をテーマに演奏活動をする「クリスチャンロック」のバンドマンであり、また、日本では非常に珍しい、というかほとんど唯一の「クリスチャンヘヴィメタル」をやっている人間でもあります。
 
そして、「クリスチャンロック」なんてものは、当然日本では非常に珍しいものなのですが、そんな中でも、クリスチャンロックをやっている仲間たち、すなわち、神の愛を伝えるためにロックする、そんな志をもってバンドをやっている仲間たちと一緒に、「Calling Records」というレーベルを立ち上げ、共に活動しています。
 
そんな自分の信じていること、それはすなわち、ロックンロールの究極の姿、それこそが、クリスチャンロックである、ということ。
すなわち、ロックンロールを究めていけば、その最終的な到達地点は、神の愛を奏でるクリスチャンロックにたどりつく。
クリスチャンロックの精神性の中にこそ、ロックンロールの究極の姿がある。
そう信じてきました。
 
もちろん、音楽の歴史を紐解けば、ブルーズというものも、もともとゴスペルから枝分かれし、教会音楽から生まれている。だから、ロックの起源について語る時も、ゴスペルや、宗教音楽、教会音楽について触れることになるのは当然のことです。
だけれども、こんなふうに圧倒的に、実際の音をもって、「ロックンロールの母」が、圧倒的な演奏を残していて、そしてそんな彼女が、型破りなスタイルで、保守的なキリスト教世界から白眼視されつつも、世界に向けて神の愛を歌うゴスペルシンガーだった、という事実。
つまり、ロックンロールの母は、紛れもなく世界最初のクリスチャンロッカーであった、という事実。
 
そのことが、どれだけ自分たちを勇気づけてくれることか。
そして、自分も現代を生きる「クリスチャンロッカー」として自負していること。
 
それはつまり、霊的(スピリット的)に、世界の戦いの最前線にあること。
 
もっともいかしたスタイル、もっともヘヴィで、激しく、最先端のものを追い求めつつも、もっとも古く、伝統的で、普遍である「信仰」と「神の愛」を追い求めること。そのふたつが、まったく矛盾せず、むしろひとつであること。
 
「聖」と「俗」の狭間にあり続けること。
英語で言えば、SacredとSecularの狭間で葛藤しつつ、その間に壁を決して設けることなく、むしろ壁を壊し続けること。
 
このSister Rosetta Tharpeの音楽と人生について知っていくと、今から80年も前の時代にもかかわらず、「信仰」と「ロック」をめぐる状況は、当時も今も、何も変わらないのだと。
そんなふうに思い知らされます。
 
ロックンロールを発明した「ロックンロールの母」、その当人をして、今の僕たちが経験しているような、信仰と音楽の狭間にあっての葛藤や矛盾、音楽への情熱と、神への信仰と、罪人である自分との間で、矛盾や軋轢を抱えつつ、自由を追い求めていたのだと。
そしてそれは、新約聖書を読めば明らかにわかるように、たぶんイエス・キリストがこの地上に降り立った頃から、なんにも変わっちゃいないのだろう。
 
そんな人類社会の矛盾の中で、ひとり十字架を背負ったイエス・キリストつう人を、僕らは信じているのだ。
 
そんな同じ信仰を持った人物が、破格の演奏をし、ロックンロールを作り上げた人であったことに、
 
ロックと信仰についての答えを見る思いで、
驚嘆しつつ、
喜び、そして誇りを感じている。
 
 
どちらにせよ、シスター・ロゼッタ・サープは、僕自身の、ブルーズについての、ロックンロールについての、そして「クリスチャンロック」についての認識を、根本的に変えてしまった。
 
僕が考えていた「ロックンロールの到達地点」。
それは、すでに「ロックンロールの始まりの地点」で、鳴らされていた音だったのだ。
 

written by:
Tak Nakamine / Imari Tones (伊万里音色)

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