録音は2004年。知ってのとおり、って、知らないかもしれないが、僕は、決して型通りのHR/HMをやってきた訳じゃない。特にこの頃は、かなりオルタナや日本のギターロックに寄せた音楽性をやっていた。だからきっと、一般に言ってEVHモデルで出すような音には聴こえないだろう。普通は、この手の音楽性で鋭いギターの音を出そうとしたら、たぶんテレキャスターを選ぶはずだ。でも、もともとメタル畑の出身である僕としては、もっとパワフルで、密度の濃い音を鳴らしたかった。その結果が、こういう感じの曲になる。Musicman Axisが、いかに多彩なスタイルに対応できる楽器なのか、よくわかると思う。
「Winning Song」という曲。この曲は何度かレコーディングしていて、これは著名な音楽ジャーナリストでありAir Pavilionという国際的に活躍したバンドのギタリストでもあるTak Yonemochi氏にプロデューサーとして録音してもらった時の、それも日本語バージョンのやつだ。(英語バージョンもある)
HR/HM系のプロデューサーを迎えて、いかにもVan Halenっぽい曲を、80年代っぽいハードロックのサウンドでやる。このギターの使い道としては、いかにも王道というか、正しい用途に使いました、という例だ。
実のところ、この曲のレコーディングに、ピンクと赤のどちらを使ったかはよく覚えていないんだけれど、確か、ギターソロを弾いたときの記憶から言っても、ピンクの方だったように思う。アンプはBogner Fishで、スピーカーエミュレーターを通して、アナログ録音、つまりテープで録音した音だ。
自分の好みかと言われると、難しいところなんだけれど、ハードロックの音としては、ひとつの正解と言えるサウンドに違いないと思う。
「Don’t Stop Walking」という曲。僕のバンド、Imari Tonesの、2016年に録音して、2017年にリリースした、今のところの最新作と言えるアルバムの、その中に入っているちょっと地味な曲だ(笑)
このアルバムは日本の歴史をテーマにしたコンセプトアルバムなんだけれど、アルバムの中のストーリー展開の中では、箸休め的な位置の曲だ。ほとんどインストみたいな曲だし。けれども、長年愛用してきたMusicman Axis-EXの特徴的なサウンドが、よく表れた1曲になっていると思う。
1音1音がはっきりと立ってくる、歯切れのいいサウンドっていうのかな。それでいて、パワーもしっかり備わっている。ハードロックの音だけれど、それだけじゃない、色々な事がやれる。その良さがきっと伝わると思う。
「This is How Freedom Dies」という曲。
これも、2016年に録音した「Jesus Wind」というアルバムの中に入っている曲。といっても、インスト曲で、やっぱりこれもアルバムの中では箸休め的な曲だ。だけれども、ギター1本だけのインストだから、楽器の特徴がよくわかる。アンプも軽いクランチなので、真空管ブースターを通してはいるけれど、楽器の鳴りが生かされている。
この曲は、アーミングを多用しているから、その意味でも特徴が生きている。Musicman Axisは、歴代のEVHモデルと同様、フロイドローズがベタ付けされたセッティングになっている。つまり、アームダウンしか出来ないセッティングだ。だけれども、それが独特のサウンドにつながっているし、またダウンオンリーのアームの駆動が、驚くほどスムースなので、もしアームアップやクリケット奏法などが必要ないのであれば、チューニングの安定性も含めて、トレモロアームのシステムとしてはひとつの理想型と言えると思う。
とぼけたビデオを作ってしまい、視聴回数もまったく無いのだけれど、アルバムの中では、メッセージを込めた曲であり、言葉のないインスト曲なのに、自分なりの政治的な主張を込めている。それこそ、ジミ・ヘンドリクスのアメリカ国歌くらいの気持ちで、命がけで演奏したつもりなのだけれど、そのへんは、あんまりこのビデオでは伝わらないかもしれない(笑)
この楽器、ピンク色のAxis-EXで最後にやった仕事は、上記のイマリトーンズのアルバム「Jesus Wind」の中のいくつかの曲。そして、これは発表するかどうかわからないけれど、「鍋島デモ」の中の「Atomic Jam」という曲で使ったのが、おそらく最後のものだと思う。
もしその「Atomic Jam」(デモ版)の音源を公開することがあったら、ちょっと注目して欲しい。このギターのポテンシャルが、最大限に発揮されている曲だから。
そして、赤い方のAxis-EX Solidでやった曲も紹介しておこう。
同じ型のギターだし、音も似ているんだけれど、アルダーボディのぶん、こちらの方が中音域に密度とパワーがあり、より汎用性の高い「いわゆるエレキギター」の標準的な音に近いと思う。わかりにくい表現だけれど。
まずはこの「Iron Hammer」という曲だ。
といっても、このビデオの中にはAxis-EXSは出てこないんだけれど、レコーディングはこの赤いAxis-EXSで行っている。
この曲は、ドイツのWolfsburgという町で、Angra、Edguy、Avantasia等のプロデューサーとして有名なサシャ・ピート氏にレコーディングしてもらった曲だ。その時に、この赤いMusicmanを持っていった。つまり、このギターは一度、海を越えているんだね。ピンクの方は海外に持ち出したことは無いんだけれど。
ピンクのAxis-EXも素晴らしい楽器だったんだけれど、赤いやつは、ミッドレンジのパワー感があるぶん、メタルっぽい音を出す時には有利で、なおかつアルダーならではのアタックの艶みたいな部分が、リードプレイには最適だった。
この時はアンプはMesaBoogieのDual Rectifierだったと思う。
これは僕がサイドプロジェクトでやっていた「熱きリョウ with ジーザスモード」の音源で、「Soldiers Into Hell」という曲。この「Jesus Mode」の1st EPの録音は、全部この赤いAxis-EXSでやってしまった。わざとらしいくらいにストレートなジャパメタを目指したんだけれど、いかにも80年代メタルっていう音になってくれた。僕の考えるところの「ジャパメタ」をやるには最適な楽器だったかもしれない。とはいえライヴでの取り回しは、またちょっと別の話ではあったんだけれど。。。
このジーザスモードの1st EPは、リズム隊も打ち込みだし、ギターもどこかで拾ってきたフリーのアンプシミュレーターのプラグインを使って適当に作ってしまったのだけれど、その割に良いギタープレイになった。この楽器の良さもすごく出ている。典型的なメタルの音ってことで、ひとつ。
これはImari Tonesの、2014年に録音して2015年にリリースした「Revive The World」っていうアルバムに入っている曲で、「Falling」っていう曲。
この「Revive The World」の中で、たった2曲だけ、ギターソロでアームの必要な曲を、赤いAxis-EXSを使って録音した。これはそのうちのひとつ。
バッキング、リフはBacchusのレスポールなんだけれど、ビデオでもギターソロのシーンではちゃんと赤いMusicmanを弾いていると思う。相変わらずの手作りビデオだけどね。
これも真空管ブースター(Cranetortoiseのやつ)を通している音なんだけれど、アンプはMarshallで、ひとつ典型的なハードロックのソロとして、色気のある音を出せたと思っている。アーミングも決して派手はものではないけれど、前述したベタ付けフロイドローズならではの、スムーズな感触が生きていると思う。
この曲もギターソロだけがAxis-EXS。
実のところ、このピンク&赤のミュージックマンを使ってレコーディングした曲は、他にもいっぱいあるんだけれど、赤とピンクのどっちだったか思い出せない曲ばかりでね。
だから、はっきり「これは赤、これはピンク」って言い切れる曲は、意外と少なくて。
さっきも言ったように昔の曲だとビデオもちゃんと作ってないしね。
この曲は、ちょっと恥ずかしい日本語の曲なんだけれど、録音自体は2005年。ただ、後になって2015年頃にバッキングのギターだけ録りなおしていて、バッキングはBacchusのDuke Standardっていうレスポールタイプを、IK Multimedia Amplitubeに通したもの。チープな音だね(笑)
で、ギターソロも録り直そうかと思ったんだけれど、何回弾いても、その昔にAxis-EXSで弾いたテイクを越えられなかったので、そのままになった。
こう思うと、本当にたくさんのギターソロを、この赤いAxisで弾いてきたんだなと思う。
こんな良いギターをなんで手放してしまったかって言われると、それはもう、色々な理由があるのだけれど。
でも、自分なりに、自分のギタリスト人生の中で、この楽器を弾き倒してきて、その上で、卒業した、と言える。
この楽器、赤い色のAxis-EXSでやった最後の仕事は、友人である「ソルフェイ」のオオハラ氏のやっているもうひとつのバンド「オオハライチ」のアルバム「ワレモノ」に収録されている「夜明け前に」という曲のギターソロを、ゲストで弾いたものになると思う。その翌月にこのギターを売り払ってしまったから。曲自体も、僕が書いたものが元になっているのだけれど、エモーショナルな泣けるギターソロになったから、ぜひチェックしてみて欲しい。
https://oharaichi.wixsite.com/oharaichi-official
今でも忘れないのは、この赤いギター、指板のハイポジションの1弦、2弦側に、黒い染みが付いている。
これは何かっていうと、2005年に僕が録音制作をしまくっていた時に、20曲くらいのギターソロを一日でレコーディングしたことがあった。その時に、この赤いAxis-EXSを使ったのだけれど、終盤にさしかかる頃には、ベンドのし過ぎで指の皮が破れ、血であるとか、体液とか、指先から染み出してきていた。それでも弾いちゃったのだけれど、その結果、あんな汚れが付いた。そして、その汚れは結局、完全には落ちなかった。
このギターを中古で手にした人は、その染みを見て、気持ち悪いと思っているかもしれない。あるいは、弾き込まれた証だと思うかもしれない。
いずれにしても、実際に10年間、ばっちり弾き込んだ、素晴らしい楽器であることに間違いはない。
最後に、自分がこのギターを持っている写真をいくつかのっけておこうと思う。
とはいっても、ハードディスクの中にある写真をチェックしてたんだけれど、この2本のギターを使ってライヴしていた2004、2005年あたりのフォルダをチェックするだけで、もう疲れきってしまった(笑)
もっと最近の写真も、探せばきっとあると思うんだけれど、昔の写真だけで、今回は許してほしい。
以上です。
わかってます。
どうかな、B’zの松本さんほどじゃなくても、少しはギタリスト然として見えるだろうか。
(今でもレスポールを持つ姿には自信がない)
ルックス的にも、ちょっと普通と違うMusicman Axisは、本当にありがたい相棒だった。