ラスボスに数字は通用するか

長年やっているから重々わかっているが、
うちのバンドが(物珍しがられる海外はまぁ別として)お客さんを呼べないのは、
わかりにくいからだ。

でもそれは俺の責任じゃない。(It’s not my fault.)
こんな厄介なテーマ、音楽を押しつけやがった神さんの責任だ。
(責任取ってくれるんだろうな、神。そう信じてるからここまでやってきたんだが。)

 

普通は、バンドであれアイドルであれ、そういうことやってる人は、
ライブやります、イベントやります、これを発売します、みんな買ってね、
って、笑顔でポジティブっぽいことを発信するものだ、ネット上であれ、ステージ上であれ。

うちはそういうことが出来ない。

そもそも、何がやりたいのか、伝わりにくい。

 

そういうステージで戦っている人たちを批判する気はないし、
むしろ尊敬するが、
何千人の会場をいっぱいにします、とか、
ライブに何百人お客さんを呼べなかったら解散します、とか、
アーティストがそういう目標を掲げるのは、わかりやすいからだろう。

特に数字っていうのはわかりやすい。
数字を使わずに凄さとか、良さを伝えてみるといい。
たぶんけっこうむずかしい。

 

それは宗教でも同じだ。
伝道だろうと営業だろうと、
本質を伝える、
人の魂が救われる、なんていうのは、
人にはわかりっこない。
何人が救われました、
そんな言葉に意味はないと思う。
そう言うんであれば、一人が救われるのも百万人が救われるのも
等しく尊い。
どっちであっても天国では宴会状態になると聖書にも書いてある。

教会の会員が何人増えました。
イベントに何千人集まりました。
それはビジネスと変わりない。
だが世の中は数字で支配されているので、そっちが結局正義であり結果なので、そっちに従うというんなら別にそれでいい。
俺だって数字とは縁がないし数字は出せないから批判はできない。

 

同様に、戒律(ルール)ってものを持ち出したがるのは、
それはやっぱり、わかりやすいからだろう。
わかりやすいぶん、私たちは戒律に従ってますよ、って言うことで、
優位性を主張して、なおかつそれを共有できるし、
従わない者を区別するためにも便利でわかりやすい。

そして政治的争点ってやつを、
特にそうした感情的であったり少数派を犠牲にするような争点を、
持ち出したがるのも、
やっぱりわかりやすいからだろう。
わかりやすい政治的争点っていうのは、
人間にとっては魅力的なんだ。

なぜかってそれは支配するためのてっとりばやくて強力なツールだからだろうね。
いつだってそれはquickでeffectiveだ。

 

僕の欠点は、数字にこだわらない、
お金に縛られない、とか言いつつ、
結局やっぱり数字とかお金に縛られていることだ。
数字に縛られ、数字に悩む。

安物の機材とか楽器で戦うのは楽しいし、
それは趣味の問題だが、
それなら別に、べらぼうに高い機材を使ったっていいはずだ。
つまり安いバッカスに飽きたら、次は本物の59年を手に入れたらいいってことだ。
別に高くたっていいじゃん。
安くたって構わないんだから。

あるいはあれこれ考えずにギター一本、スケートボードも持っていっていいから、
いやスケートなんて現地調達でいいから、
ギター一本で放浪に出たらいい。
明日、出られるか、って言ったら、
やっぱり考えちゃうだろう。
でも、一ヶ月後とか、一年後ならやれるかもしれないじゃん。

あるいは俺は心残りをひとつでも無くそうとしているのか。
その日のために、って、その日っていつ来るんだ。
いつまでレベル上げやってるんだ、さっさとラスボスのいる洞窟へ。

 

たぶん俺はまだ甘い。
今日一日だけで、俺は少しでも変われるか。
人に変われとほざいておいて、自分は変わる努力をしているのか。
宣言するだけでいい、お金と手を切ります、数字と手を切ります、と。
でも、そうやってくよくよ悩んで人間やってるうちが華かもしれない。

 

つまり、終わりの時には。
ラスボスと向き合う時っていうのは、あるいはそういうことかもしれない。

世の終わり、っていうのは、皆が思ってるようにわかりやすく劇的に来るもんじゃないよ。

来るかもしれないけど(笑)
でもそんなこと言ったら、3.11だって、WW2だって、その時その場にいた人にとっては十分に世の終わりだった。

本当の終わり、っていうのは、もうちょっと違う形で来るものだ。

とりあえず俺の世界はもう10回くらいは終わっているはずだ。

 

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