エレキギターの音は想像するものである(続オーバードライブの件)

 

エレクトリックギターの音ってのは不思議なもので、「正しい音」はもとより、何をもって「自然な音」とするのかも定かではない。
もとよりエレクトリックギターは多様性のある楽器で、ギターと言って思い浮かべる音自体、すでに人によって随分と違う。

不思議な事に僕にとっては、ある程度に歪み、適度な倍音が乗り、ある程度のコンプレッションがかかって、っていうかもう言ってしまえば、グシャッとなっているくらいの音を、「自然」だと感じる。弾いていて自分の手はその感触を自然だと感じるわけだ。

アンプを通さない、生音のエレクトリックギターをちゃかちゃか弾いている時、僕はその音を自然だと感じるが、他のギタリストはどうなのだろう。
つまり、生音でちゃかちゃかやっている時に、ギタリストというのはそれぞれに頭の中でアンプを通った後の「完成された音」を聴いているはずであり、それは各人が違う音を聴いていることになる。そのイメージ力っていうのはとても興味深い。

 

「鍋島」を作る前に、もう一度確かめておかなければいけないと思っていたオーバードライブの件である。

また迷惑な事に自分のペダルを楽器屋さんに持っていき、
良さそうなペダルといくつか比較してみた。
ここ2年くらい、それでも楽器屋さんでオーバードライブ試す事は何度かあったので、ある程度は以前に試してわかっているものもあり、定番だの評判のやつだの、見た目がかっこいいのとか、あとは店員さんが持ってきた最新のすげえ高いやつとか、
どちらにしてもどれも現状のマーケットの中でA級と思われる大ボス級のチョイスだ。
(まぁそれでも、本物のケンタウルスや本物のランドグラフと比較したわけではないけれど。)
で、本命のやつをちょっとだけ試すつもりだったんだけど、数えてみたら結局8個のペダルを試して比較してた。

 

僕のオーバードライヴの使い方は若干変わってる。
それほど変わってるって訳じゃないけど、狙ってる音の立ち位地が微妙なところにある。
基本的にはTS系っぽいペダルをブースター用途に使うだけなんだけど、出したい音は正統派ヘヴィメタルだったり、そうじゃなかったり、あとなんか妙に幅の広い色々だったり(笑)、よくわからない。

だから、冷静に考えたら、曲ごとに使うサウンドを変えて、ペダルもいくつも足下に置いて使うのが正しい気がする。
でも、それが面倒くさいので、なるべくひとつのペダル、ひとつの音でやりたい。そこのところのわがままなニーズにShoalsはよく応えてくれた訳だ。

 

「自然」「ナチュラル」って事なんだけれど、恥ずかしながら定番と言われるオーバードライブのひとつであるTimmyってのを初めて試してみたんだけれど、ナチュラルなトランスペアレント系と言われているはずのそのサウンドは、僕には却って自然なものとは感じられず、不自然だな、わざとらしいな、って。
で、却って普通のTS系の方が自然に感じたり。

そもそもある程度ぐしゃっと飽和して、ローファイになってるくらいの方が、僕は、少なくとも僕の「手」は、自然だと感じるらしい。

 

Heavy Lid Effects Shoals Over Driveは、それまで真空管ブースターを使ってナチュラル系ゲインでハードロック鳴らしていた僕が、「Jesus Wind」を作るにあたって、もうちょっとヘヴィメタルな音を出したいと思った時に、偶然出会ったペダルだ。

この2年ほどメインで使ってきた、このShoalsが、必ずしも抜けのいいペダルではなく、歪ませてナンボ、適度にローファイな味をもったペダルである事はわかっている。

 

今回、本命だったのは、夏にも一度試した某改造TSだったんだけど、それとShoalsを比較して、どっちがどのへんの位置にあるのか、検証する必要があった。で、昨日、その気になったので、そろそろやんなきゃ、って、やっと重い腰を上げて行ってみた。

Shoalsをこうやって持ち出して楽器屋さんで色々なペダルと比較するのは初めてだ。とはいえ、これまでも2年ちょっと使う中で、手持ちのものと比較したり、人のペダルと比較したり、パソコンの中のやつと比較したりで、ある程度の傾向は掴んでいる。

で、こうやって最新マーケットのA級のペダルと比較してみた結果、やはりなんとも微妙な、結論を出すのが難しい結果になってしまった。

ひとつだけ確かに言えるのは、やはりShoalsは非常に不思議なペダルだという事だ。とても不思議な立ち位地にある。あれやこれやがベースになってるんじゃないかというのはあるけれど、こんな不思議な多様性を持ったペダルはやっぱり珍しいんじゃないか。もっとも、それはある意味中途半端とも言えるけど。

 

抜けりゃいいってもんじゃない、って事は言える。
現場でアンプをぶち鳴らし、大音量のアンサンブルの中で試さない限りは本当の事はわからない。
パソコン等のシミュレーターに突っ込んだ時にも言えるが、店頭で比較する際にもおそらくは抜ける方が売れるので、色々なペダルが抜ける音を目指すのも理解できる。
ただ面倒な事に、それが果たして自分の必要としている音かと言えば、必ずしもそうとは限らない。

 

音っていうのは、全部完璧ってわけにはいかない。
ひとつのものを得るということは、ひとつのものを失うことで、ぜんぶ完璧に、っていうのは無いものねだりだ。
抜けの良い音っていうのは、気持ちがいいけれど、太さや迫力と引き換えになることも多い。
ハイファイになればあたたかみを失うこともある。
そして、迫力のある歪みを得たいのであれば、ノイズっていうのはどうしても避けられない。
太くて抜けのいい、迫力のある音を出したとして、そしたら今度はヴォーカルが聞こえない、とかもあり得る。
だから各人がそれぞれ、自分の必要とする音楽性に応じて、どのあたりの立ち位置、バランスを選択するのか、っていう話になってくる。

 

で、今回店頭で試してみて、試奏したペダルはどれも全部、Shoalsよりも全然音抜けが良かった(笑)
ただ、その反面、”Repent”の音が出たのもShoalsだけだったのも事実で。つまり僕の考えるヘヴィメタルの音という事。ヘヴィメタルの音が出たのはShoalsだけで、というのはつまり、世のマーケットにあるオーバードライブは、ブルーズなりポップなり、想定していても、ヘヴィメタル的な歪みを作るためのブースターみたいな設計はされていない、という事だと思う。そもそも今の時代でメタル系の人は、普通は素直にハイゲイン系のアンプに行くだろうしね。

しかしなぜかShoalsはそういう音が出て、しかしこれは突き詰めてみれば、ヘヴィメタルのギターの音をどう考えるのかという問題に帰結する。
つまり、たとえばかのRandy RhoadsはMXRのディストーションでかなりぐしゃっとした音を出していたし、80年代当時のRATとか使った音もそうだ。
アンプの歪みを基本に使うのはもちろんだが、ペダルならではのある意味チープなゲインの音を、どれだけ使うのか、あるいは使わないのか。
このShoalsはその意味で、僕が自分なりにヘヴィメタルに向き合うための、絶妙な「ヘヴィメタルドライバー」だったのだろう。

 

そして象徴的だったのは、楽器屋さんを2軒はしごしたが、1軒目ではアンプだかペダルだか、他のペダルに比べShoalsはハイが出ておらず、そのかわりローが一番出ていた。なので僕はShoalsのセッティングを変えてローをカットし、他のペダルとだいたいおんなじような音を作って比較した。
しかし2軒目に行くと、アンプだかなんだか、逆に今度は他のペダルに比べてShoalsは低音が足りなかった。なので僕はShoalsのセッティングをいじって音を太くし、他のペダルとおんなじような音にセッティングして比較を行った。

言っておくがこれは単純にローのEQを上げるとかそういう事じゃない。もっと根本的にペダルのキャラクターを変える事を言っている。Shoalsはそういう事が可能なんだ。
この事実こそが、Shoalsのヴァーサタイルな機能性と表現力の幅を象徴的に示してしまっている。

家で色々比較してる時もそうなんだけど、他のペダルの方が良いこととか全然あるんだけど、あれこれいじってるとなんだかんだShoalsでも近い音が作れちゃうんだよね。
それでもやっぱり他のペダルに音抜けなり太さなりかなわなかったりする、だけど自分の曲を弾いてみると、不思議な事にShoalsの方が良くなっちゃう。

あるいは人が弾いたら絶対他のペダルの方が良いけど、僕が弾いたらなんでかわからないけどShoalsの方が良くなっちゃう。それはつまり、プレイスタイルであったり、音楽の世界観の関係なのだろうと思う。つまり自分の声として機能する、という事。だからこそ表現の幅も最大限に広くなるわけだ。

 

たとえば昔使っていた韓国製のGov’norを思い出してみるといい。韓国製Gov’norリイシューは、英国製に比べて評価が低いが、僕にとっては自然で使いやすく、表現の自由を与えてくれた。

だから難しい。
ハイファイな音が必ずしも表現力につながるとは限らない。
その人の世界観に合った音こそが、表現の自由度につながるのだ。

 

今回比較してみてShoalsの良い点と思ったところだ。

もともとビルダーさんの宣伝文句にもあったように、他のペダルと比較してローエンドが出てくれる。ただ、すごいローが出るわけじゃなくて、TS系と同じように、やっぱり削れるものはがっつり削れる。ただ、その削れ方と、残り方が絶妙で、それが僕の考える「ヘヴィメタル」にちょうどいい。

がっしりとした太さ、迫力があり、またそれが同時に僕の求めるレトロ感やあたたかみにもつながっている。
歪みの音に、僕の考えるヘヴィメタルの凝縮された密度とパワーがある。
適度にローファイな飽和感が、表現に凄みを与え、表現力につながる。
上記の例のようにその場の環境に合わせたり、他のペダルに音を似せていけるなど、「自分の音」でありながら、様々なバリエーションに対応できる。
メタル的な「エッジ」を出せるブースターは他にあまりない。
レコーディングを想定した際に、たとえばオンマイクの57で集中的に拾いたい密度の濃い歪みの成分、エッジ、芯の部分がある。それをイメージした時に、そこに最適な成分を送り出せるデバイスとしてShoalsはかなり理想的である。

 

どっちにしても決定的なこととして、自分の曲を弾いてみるとShoalsの方が良くなってしまう。つまりは表現の自由度が高い。僕にとっては。

そんでもって「音色」「個性」「あたたかみ」「レトロ感」「メタル的パワー」「メタル的エッジ」など、Shoalsの音が間違いなく自分の好みであることもはっきりした。他と比較するとよくわかる。そんで、こんな音がするオーバードライブは滅多にない、ってことも。(とはいえ、案外普通のSD-1とか近いんじゃねえか、というオチもある)

 

思えば、僕だって少しくらいは他のオーバードライヴ系のペダルを所有しているが、Shoalsの前に長年メインで使っていた(たぶんこれからまた使う)Cranetortoiseの真空管のやつ(でかい、重い、アダプター要る)はともかくとして、
他のそれなりに優秀と思われるペダルと比較した時に、たとえそれらの方が抜けが良かったり音が鮮明だったりしたとしても、
実際にバンドで試した時、ないしはレコーディング作業をした時に、
やっぱりそれらではだめだ、となってしまった。

ここ2年あまりの制作や演奏でShoalsを使ってきたのは、別にそれがすげえ良かった、とかじゃなく、
他のペダルではやっぱどうしても「無理、これじゃ合わない」となってしまい、
Shoalsだと単純に「やれた」から使ってきただけである。そんでもって、今のところ、ほとんどの曲で「やれた」という感じだ。

他のペダルでShoalsよりも抜けるやつをバンドに持ち込んだ時に、「いいんだけど、やっぱ合わねえな」となってしまっただけのことだ。

 

数年前に、Cranetortoise真空管だとちょっとメタル指数が足りないというか、音が透明すぎる、となった時に、これもまた安物のTonerider AO-1を使っていたことがあるが、あれも適度にローファイながらちょっとローミッドあたりががっしりしている、そんで妙に押し出しが強い、というやつだった。
ライヴではあれでもやれたんだけどレコーディングだと無理だったから、それよりもちょっとだけ上質にして、音作りの精度を上げ、幅を広げたのがShoalsってことになる。

Overdriveなんだけれど、ちょっとメタル用ディストーション的なニュアンスも併せ持った、独特な立ち位置のペダルだと言える。

なんでこんなもんに出会えたのか、意味がわからない。

 

ただ、そんなふうにして、自分のニーズや感性には合っているペダルだけれど、それはすべて僕の思い込みである可能性もある。

現に音の抜けで言っても、今回試した中では、どれも他のペダルの方がShoalsよりも全然音抜けが良かったわけだし。(しかし、色々やってると、負けない音になってしまうのも確かだった。それって、ひょっとして俺の「手」がやってんのか。だとしたら、それはどういう意味だ。)

根本的にやっぱりもっと良いものを使わないとさらに上は目指せない、ということも言えるから、こうして他のものを探っている、ということだと思う。

人の意見をまた聞いてみたいから、そういう機会を持たないといけないとは思っている。もちろん、バンドでスタジオに入った際とかでも、全然わかるんだけど。

また「鍋島」の楽曲にすべてShoalsで対応できるとは限らない、ていうかたぶん対応できないだろうから、そのためのさらなるデバイスを用意しておきたい、という思いがある。

なので、前からいろいろ試す中で、今回本命として考えていたその「某改造TS」に目を付けて、可能であればそういうのを入手しておこう、と考えていた。ていうか今でも考えている。

 

でも、上記のとおり微妙な結果だったので、まだトリガーを引くには至らなかった。

それに、正直なところ、わざわざその「某改造TS」を手に入れなくても、手持ちのペダルでやれるんじゃねえか、という気もしている。Shoalsでダメだった場合の。

たとえば「伝説のオリジナルモデル」も、「抜けのいいモダン系TS」も、「奥の手の真空管ブースター」も、既に所有しているわけだから。

 

あと言うと、今は他に予算の優先順序があったりするしね。。。

そう、理想っぽいアンプ、ようやく見つけたかもしれないから。
理想の、ってわけじゃなくても、とりあえず「自分の」と言えるアンプを、ここへきて見つけたかもしれない。
わかんないけど。

 

そんな感じ。

後学というか記録のために、
今回試したやつの中で印象に残ったものを記録しておく。

Eastern Music Device ProDrive (Type A & Type B)
前に試してすごく印象が良くて覚えていたやつ。今回試してみて、やっぱり良い感じだけど、アタックの音が好きじゃないことがわかった。音は生々しいのだが、圧の感じがちょっとわざとらしい。ついでに言えば、メタルっぽい用途だと反応の良いType Aよりも、コンプ感の強いType Bの方が合っていた。

Paul Cochrane Timmy
恥ずかしながら初めて試した、いわゆるトランスペアレント系っていうのの代表。つまみがゼロの状態で、音が何にも変わらんのでびっくりした。確かに音は変わらない。が、僕としてはもっと味がついていた方がいい。それに、決して自然だとは思わない。上の方がわざとらしいと思った。

Ovaltone Fountain
結構低音が出た。なので印象は良かった。ある程度太い音も出せる。けれど、その低音が自分の求める(メタル的な)ものなのか、と言われると疑問。ゲインも結構あった。しかし、そのゲインが自分の求める性質のものなのか、と言われるとやっぱり疑問。スイッチがいろいろついていて、ヴァーサタイルな感じがした。おもちゃとしてなら欲しい。

TBCFX Fairlane
ミッドレンジに個性があり、見た目も含め結構好みだった。ただ、音が軽めなので、悲しいかな自分のバンドには合わないだろう。趣味としてなら所有していたい。

TRIAL Smart. OD
なんか店員さんが持ってきた。値段の高い新製品だったらしい。非常に素直な音だった。そして確かに抜けも良かった。同時にあまり特色も感じなかった。使う人が使えば、すごくいいんだろうな・・・(遠い目)

某改造TS
やっぱり色々弾いてみたけど、これがいちばんしっくりくるな、自然だな、と感じる。意外と低音もしっかり出ていて、普通のTSに比べて、上も下もより広いレンジで出力されているのだな、と納得した。それが良いのか悪いのかは、バンドで鳴らしてみないとわからない。ゲインを上げても良い感じにヘヴィさが増す。ただ、メタルの音になるかっつーと、それはノーで、そこはアンプ頼みだろうし、これで自分の音楽性を全部カバーできるかというと、どう考えてもノーだ。むしろ特定の曲、って感じの用途になりそうな気がする。そこに投資するのは若干、ためらう。なんかもう、もっと安い「普通の某大手のTS系」でいいんじゃないか、という気になってきた。あれか、やっぱM社のやつか?

 

今回は以上。
次回は、もう面倒になってきた。

なんか、あれだ、パソコンの中にあるKuassaのオーバードライブのプラグイン、
あれ、誰かハードウェア化してくれないかな・・・。
って、それこそ、伝説のモデルが何台入ってるんだ、って話なのか。

 

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