Macの中のアンプ(私的2019)

 

現時点ではまだ、ギターサウンドというものは、本物の真空管アンプを鳴らし、実際にマイクを立てて収音したものの方が良い音がすると感じている。

わからない、実際に最新鋭のもっとも高価なやつを試したわけじゃない。
最新のLine6とか、KemperとかFractalとか、BIASのやつを試したわけじゃない。
(Positive Grid BIAS 試しました。感想は下に追記しておきます)
(Neural DSP ARCHETYPE: NOLLY 試しました。感想は下に追記しておきます)
(Scuffham Amps S-Gear 試してみました。感想は下に追記しておきます)

だから、それらをばっちり本気で試してから言えよ、とは、自分でも思うが。

 

僕は基本的にBrainworxのギターアンプのプラグインでの経験をもとにこの意見を言っている。

けれど、少なくとも僕にとっては、現時点ではこれが事実だと思う。

 

久しぶりにマイアンプというものを手に入れたことで、家でパソコンにつっこんでギターを弾く場合、アンプ>アッテネーター>オーディオインターフェイス>MacBookの中でキャビ(マイキング)のインパルスレスポンス、という流れが、自宅環境でいちばんマシな音、ということになった。

つまり、自宅環境でキャビから音を出す、ということは、テスト程度なら出来るが、本気で弾きまくるには、やはり自分の住んでいる住宅環境では無理があるので、アッテネーター(安価なやつ)を用意したのだけれども、そのアッテネーターをダミーロードみたいにして、キャビにつながずにそこからラインで送れるようになったので、キャビとマイキングのシミュレーションだけをMacBook(LogicPro)でやればいいということになった。

これならば、アンプの部分、つまりプリアンプ、パワーアンプ、まではシミュレーションではない本物ということになる。ダミーロード/ロードボックスの質はともかくとして、キャビ/マイキングの部分だけデジタルで処理すればいいことになる。

こっちの方が、やはりパソコンに突っ込んで鳴らす場合であっても、やはり反応がリアルで気持ちがいい。

 

一応、試せるやつに関しては、ギターアンプのシミュレーションのソフトウェアも試してはいるのだけれど。

うん、見たよ、宣伝メール来たから、この前のSlateのやつ。

どうかなぁ。
ちょっと商売というか、趣味を疑ってしまった。動画にしたって裏側はわからないからね。

試してはみたいけどね。
ただ、実際に自分で弾いてみたらどうかな、っていう。
同じファイルを突っ込んだ場合の音の差異ってことじゃなくて、プレイに対する反応ってことだからね、ギタリストの手が感じるのは、そこだから。

–> そう思って、あらためてTH-Uを試してみたけど、辛口の評価をせざるを得ないね。わりときれいな音は出るんだけど、やっぱり音がharshだし、反応がぜんぜんダメだ。特にハイゲインのものは得意じゃないみたいに思う。これならbrainworxのやつの方がいいだろうね。(用途にもよるが)

 

 

このSlate/Overloudのやつに劣らず、僕が手元にいくつか持っているbrainworxのアンププラグインも性能は優秀だと思う。

Brainworxのアンプシミュは総じてレベルが高いと思うし、その点に関してはすでに世間の評価も確立されていると思う。

(ただ、bx_rockrack V3は僕はそれほど気に入っておらず、キャビの部分は使いづらかったものの、旧バージョンのbx_rockrack Proの方が正直な音だったと感じている。V3は「使いやすい平易な音」になったが、偽物ぽいつまらない音になった。)

(また、やたらENGLが多かったり、僕はMesaBoogieは苦手だし、僕の好みに合わないアンプばかり製品化しているところも気に食わないのだが。現在、普段、曲を書いたりする際に「とりあえず」使っているのはENGL E765であることが多いが、それは気に入っているというよりは、「なんとか使える」からである。これは実機も楽器屋さんで二度ほど試したことがあるが、素直だし、悪いアンプではないが、ちょっとone trick ponyでつまらないアンプだった。)

 

ただ、Brainworxのやつは、キャビ/マイキングのIRも良いものではあるのだが、音の価値観が非常に押し付けがましいというか、偏っているというか、彼らが所有しているNeve VXSというコンソールの音を再現しているらしく、それは決して悪い音ではないものの、僕にとっては用途に合わない音であることも多く、太い音には違いないが、妙にねばっこく、トランジエントのなまるその音は、正直言ってかなり不満があった。

 

しかし、これはフリーで手に入るものだが、Mercuriallのプリアンプのプラグインが素晴らしく、これはフリーの800とか、cornfordのやつとかなんだけど、はっきりいって、これはBrainworxのものよりも良いと感じている。(この800は、昔のタフな800ではなく、リイシュー版の素直な800の音をモデルにしているように思う)

ちなみにこれもフリーで手に入るTSCというチューブスクリーマーのシミュレーション、これも非常に気に入っていて、プラグインのオーバードライブとしては最高のものだと感じている。ノーマルの808だけでなく、MODバージョンも付いているのが便利だ。(手持ちのKeeley/Mammoth Baked Modとかなり似た音になる。ゲインの量に違いはあるものの。)

 

だが皮肉なことに、Mercuriallの製品版のやつを試してみると、今度はキャビ/マイキングの部分があんまり良くない。

なので、音の方向性さえ合えば、Mercuriallのプリアンプ(cornfordのやつが気に入っている)に、Brainworxのシミュ(ENGL E765 Retrotubeのやつが使いやすいと感じている)のパワーアンプ/キャビの部分だけを組み合わせる、というのも良い結果になる。

 

しかしそこで、マイアンプ>ダミーロードの組み合わせが使えるようになったこともあり、IR、インパルスレスポンスというものを、少し探してみた。

こういうものをディグるのも、世間の進取派のギタリストは何年も前からやっているだろうから、僕は遅まきながら、ということになる。

フリーで手に入るIRの中にも、素晴らしいものがいくつもあった。
しかしとりあえず、たぶん定番なのだろうが、有料で手に入るものとして、Lancaster AudioというところのIRをいくつか入手して試してみたところ、これが結構いい。

IRも、たとえば2つのものを左右ステレオで使い分けるとか、色々使い方があると思うので、工夫次第で結構やれそうだ。

 

なので、現時点でギターをパソコンの中に突っ込んで鳴らす場合、僕の自宅環境だと、すべてデジタルのシミュレーションでやるのであれば、Mercuriallのプリアンプ、(Ignite Ampsとかのなんか適当なパワーアンプ)、Lancaster等の適当なIR、という組み合わせが、ベストということになる。アンプの前に置くオーバードライブも、Mercuriall TSCでぜんぜん問題ない。

オーバードライブのプラグインも、Brainworxのやつも優秀だし、Kuassaのやつもかなり良いのだが、そしてIgnite Ampsのやつも相当良いけれど、やはりMercuriallのやつが頭ひとつ抜けていると感じている。

(そういえばIgnite Ampsって言えば、みんなとっくに知ってるだろうけれど、メタル系の音に限って言えば、そのへんの微妙なアンプシミュを高いお金出して買うよりも、Emissaryをフリーで使う方が良いような気がしている。)

 

なので、普段弾きで全部デジタルでやる場合、上記のMercuriallを使った組み合わせも非常にクオリティは高く、楽しいのだが、それでもやっぱり、ロードボックス経由本物のアンプの方が、格段に楽しい。

それはやっぱり、反応が違うというか、アンプとの対話がちゃんと成立するからだ。

 

 

もちろん、僕はデジタルで作るギターの音を否定しているわけじゃない。

時間にも予算にも余裕のない、インディの貧乏制作の事情ということもあり、僕も今までに、いくつかの曲とか、いくつかの場面で、シミュレーターを使って録音制作をしたことはある。

たとえばうちのバンドの現時点でのlatest albumであるところの”Overture”で言えば、似非ラップソングの「Revive The Nation」、およびレトロゲームソングの「One More Continue」の2曲は、ギターの音はシミュレーターだ。前者はAmplitubeで、後者はbrainworxだったと思う。

 

ギターの音なんて言っても、用途による。
狙っている音楽性と、その用途、楽曲の中でのギターの役割によって、必要とされるサウンドは変わるわけで、
その役割を、シミュレーターの音、デジタルの音で果たせるのであれば、まったく問題はないし、場合によってはむしろデジタルで作った音の方が良いことも多々あると思う。

 

ただ、僕は自分のバンドの録音をする場合には、その役割は、デジタルのシミュレーションでやるにはまだまだ無理があるようだ。

実際のところ、春にやった「ファーストアルバム作り直し企画」の残り2曲で、この[アンプ、ダミーロード、IR]という組み合わせで2曲録音してみた(使ったIRはbrainworxのシミュレーターのもの)。結果は悪くはなかったけど、それは「ファースト作り直し」の再現企画だったからやってみただけで、本気の音にはやっぱりならない。
普通の曲とか、他人の曲とか、なんかのお仕事だったら、それでもまったく十分なのだろうけれども。

[サンプルは、リリース後に載せるつもりです > 載せました](Track2: From The Garden of Gods、および、Track5: 鏡はいつでも嘘をつく、が、その組み合わせで録ったものです)

 

 

アンプは本物だったわけだが、キャビネット、マイキング、この部分はIRによるシミュレーションということだが、僕が思うに、たとえばコンボリューション方式のリヴァーブがそうであるように、IRというものは基本的に「静的」であり、固定されたものであるので、死んでいると感じるのかもしれない。

 

単純にデジタルだから駄目とは思わない。

たとえば、デジタルのシミュレーションというものが世間に登場してきた頃、LINE6のPODの音は、プロ達の間でも結構重宝されていたと思う。
それは、実際に本物の音にどれだけ近いか、ということではなく、それが「使える音」だったからだと思う。(当時の録音、音楽状況の中において)

いつも引き合いに出すが、たとえばIKのAmplitubeは、決してリアルな音というわけではなく、どちらかといえばわざとらしい音だと思うが、それはそれで、無理に本物にしようとするのではなく、デジタル環境の中で使える音にする、という考え方の製品なのだと思う。だから、実際に楽曲の中で使ってみると、「結構使えた」のである。

なので、用途にさえ合えば、今後もそういったデジタルのシミュレーションで録音をすることにやぶさかではない。たとえば、僕も過去にサイドプロジェクトの「ジーザスモード」の録音なんかは、全部シミュレーターでやっちゃった。だって、サイドプロジェクトだから。

 

 

でも、本気の録音を、まだデジタルのシミュレーターでやろうとは思えない。

やっぱりマイクを立てて、用途に適したアンプの音を作って、狙った方向性のマイク、マイクプリの組み合わせ、マイキングも含めて、やんなきゃいけない。

そこには、デジタルではない現実世界を通過することで、精霊だか天使だか、サウンドの天使ちゃん、「神の恩寵」が介在する余地がある、ということでもある。(Call me crazy.)

どちらにしても、現実世界の情報量は、24/96よりも、32/192よりも、はるかに膨大なのだから。

 

 

たとえば、ロードボックス。今ではいろいろあるらしい。

 

この上記のビデオでも、アッテネーターなんてものが成熟してきたのはごく最近だと言っているが、今ではアッテネーターというか、ロードボックスも進化しているだろう。今、僕が手元に持っているのはごくごく安価なアッテネーターだから、たとえばこの動画に出て来るようなやつとか、もっといいやつ、Torpedoとかそういうやつを使えば、もっとマシになるのかもしれない。

でも、やっぱりまだ限界があると思う。
なぜかというと、音がtoo polished、音がきれいすぎるんじゃないかな。
音がきれいなのは、良いことかもしれないが、表現力には残念ながらつながらないからだ。
僕が求めている音の表現力は、たぶんそういうことじゃない。

(逆に、近年のDjentとかProg Metalは、そういったtoo polishedなデジタルアンプの音に合っている音楽だったからこそ発展したと言える)

 

これは、僕がギタープレイヤーだから感じることだ。
こういった違いは、たとえばリスナーの立場からはわからないかもしれない。

つまり、本物のアンプを鳴らして作られた作品と、デジタルのシミュレーターを使って作られた作品を、リスナーは聞いても、別に区別はつかないんじゃないかと思う。

でも、弾いているギタリスト本人からしてみれば、確かにまったく違う、違いがありありとわかる、ということになる。

反応ということかな。
たとえば、アンプを大音量で鳴らし、その同じ部屋で弾いていた場合、フィードバックもあるし、その音の振動がギターのボディに作用することで、反応が変わってくる。実際の音を鳴らさないデジタルのシミュレーターを不自然と感じるのは、そういった要素かもしれない。いくらシミュレーションがaccurateであったとしても。

 

また、こうして考えると、たとえばDAWの中にあるプラグイン。
EQや、コンプレッサーや、リミッター等のプラグイン。
これらのものについても、実機のハードウェアとプラグインの音の違いについては、昔から議論されていると思うが、
ギタリストの立場から見て、実機とデジタルシミュレーションに違いをはっきり感じるということは、こういったハードウェアに関しても、そのシミュレーションであるプラグインとは、やはり差異があると考えた方がいいだろう。(わからんけど。ギターってものが余計に独特な代物なのかもしれないし。)

ハードウェアとプラグインの差異については、たとえば実際に配線というか、線を通ることによる音の違いとか、劣化とか、電源とか、色々な要素があって、それが良いか悪いかは別にして、どうしたって違いはあると思う。

また、実際に電流が流れて、それが音声信号として処理されるというリアリティの表現力は、これもどうしたってあるだろう。なんたって電流が流れているわけだから。

 

ただこれは、単純な良し悪しではなく、キャラクターの違い、用途の違いであると思う。
逆に言えば、プラグインは理論上、理想的な動作をするデバイスと言えるかもしれないし。また求める音の方向性によって、ハードウェア、プラグイン、それぞれに得意、不得意があるはずだ。

そもそも、現実世界の音ってものには物理的な限界があり、理想のミックスとか、完璧なミックスというものは存在しない。概念として音楽世界を提示できれば、それでミックスというものの機能は果たしていると僕は考える。(商売としての機能はまた別であろうけれども)(そして世間のエンジニアやミュージシャンは、その商売としての要素で仕事をしているだろうけれども)

 

だから両方を適材適所で使えればいいんだろうけれども。
よくあるパターンとしては、ミックスはデジタルでも、サミングというのか、アナログサミング、みたいな、そこはアナログのハードウェア、とか。
あとは、ITB (in the box)でミックスしても、マスタリングは高級なハードウェアでやりたい、とか、そういうのはありがちなパターンかと思う。

僕の場合は、自分の作品は、どうしても貧乏なインディ環境で、ITBでやらざるを得ないので、だからこそギターの音とか、なるべく実際にマイクを立てたいし、マイクにせよマイクプリにせよ、高級な定番よりは、個性的な安物を使いたいと思うのも、入口の段階でなるべくリアリティをもって音を汚しておきたいからではないかと思う。

 

今ではプロの人たちも、皆さん、KemperやFractalを始めとしたデジタルツールを使っていると思うが、
それは彼らがプロであり、プロの仕事上のメリットが現実にあるからだと、僕は考えている。
つまり、プロというものは、他人のために弾くからだ。

そこには時代性も含めた現実的なサウンドのニーズに加え、利便性、運用性、そして周囲の人々への気遣いということもあるに違いない。

僕も人のために弾くのであれば、そういうツールをきっと使う。
でも、自分のため、あるいは、なんかもっとよくわからん大事なもののための音を出さなくてはいけない時、
そんな時には、
やっぱりまだまだ、本物の真空管アンプと、4×12のキャビネット、それらを使い、マイクを立てることが必要だ。

笑ってもらって構わない。

 

 

2019年7月6日追記
Positive Grid Bias試してみました。自分のパソコンでは最新版走らないけど、嫁さんのパソコン借りて試してみました。BIAS Amp 2ってやつを。

結果、感想。音はすごくきれいで、色々なモデルもそれぞれの特徴とか感じが出ているけれど、反応はやっぱりダメだった。そこは、かなり厳しい評価しか出来ない。デジタル的なアーティファクトっていうのか、デジタル的な音のharshさも、出ているように思う。

たとえばBassmanにしても、Mesa/Boogieのレクチにしても、比較してみてやはりbrainworxのやつの方が優秀だと感じた。もっとも、僕が持ってるbrainworxのMesa/Boogieは「シングルレクティファイアー」のモデルだけど。色々ソフトウェアのアンプ弾いてみると、「レクチ」の音って、簡単なようで意外と難しいみたいに感じます、再現するの。あとはbassmanに関しては、BIASのやつは、どちらかというとJTM45のモデルの方が、brainworxのbassmanのモデル(bassdude)にニュアンスが近かった。たぶんキャビとかセッティングの関係なんだろうけれど。(Bassmanの種類とか歴史とか詳しくないからつっこんだことはわからない)

反応は平面的で、実際のアンプのような反応とは言い難く、アンプとの対話も成立しないので、弾いていて面白いとは言い難い。反応が平面的だから、合うプレイと、合わないプレイってものがある。これで本気の録音をしろと言われたら、僕は「ふざけるな」と叩き返すレベルだ。

ただ、良い点を言えば、音がとてもきれいで、なおかつ素直なニュアンスなので、使いやすい音に仕上がっているな、と。非常に標準的で癖のないデジタルアンプだと感じる。その意味では、多くの人にとって使いやすいツールであることに間違いないだろう。(合うプレイ、をすりゃあいいんだしね)

ハードウェアとして販売されているのも、その標準的で素直なデジタルアンプとしてのフレキシブルさが、実用的だと評価されているのだと推測できる。

あとはハイゲインのモデルに関して、たとえリアルではなくとも、「その方向の用途として使いやすい」音になっている点が評価できた。だからきっとヘヴィミュージックをやってる人には使いやすいだろうね。(真空管とかトランスとかの設定をいじって、いろいろ勉強になるのもメリットだと思う。ギミックに過ぎないという気も正直するが、汗)

これって、実際には世の中のいろいろな製品に当てはまることだけれど、この「アンプシミュレーター」「ソフトウェアのアンプ」というものに関しても、作る方、売る方にはジレンマがあると思う。つまり、本物のアンプのような音を出さなければいけないが、かといって本当に本物と同じ音にしてしまったら、ユーザーはきっと喜ばない。なぜなら本物の音はきっと使いづらい音だからだ。たとえば今回このBIAS AMPに関しても、アンプのソフトウェアのみで、エフェクトペダルは試していないが、ではアンプ直で鳴らすとして、実際にアンプ直でギターを鳴らした時、ローエンドの鳴り方って本物は絶対こんなふうじゃないよな、っていうのは、たぶんわかるでしょ? 同様のことはbrainworxのプラグインにも言えることで、たとえばbrainworxのアンプシミュは立ち上げた時に最初からローカットとハイカットがオンになっているのもそのひとつの例だが(つまらんので私は速攻で切ります)、最たる例としてはbx_rockrackはV3になってから「使いやすい音」になってしまい、つまらなくなった。だから、一般のユーザー向けの使いやすさ、ユーザーに支持される音をうまくデザインするという使い勝手の設定の難しさがあると思う。その意味で、このPositive Grid BIAS Amp 2は、「標準的な使いやすさ」を実現していると思う。リアルかと言われれば、全然リアルじゃないけどね。

もっとも僕だって、デジタルモデリングのアンプをライヴで使ったことは何度かあるし、全然問題なかったし、「お気に入りのブースター/オーバードライブを経由して突っ込みさえすれば」、問題なくライヴでも使える、と思ったけどね。ああ、優秀だなあ、って。

僕はAmplitubeさえも、前バージョンの「バージョン3」の時しか使ってなくて、4になってからは試してないんだけれど、自分の感覚では、このPositive Grid Biasも優秀ではあるけれど、Amplitubeの方が「おもちゃ的な楽しさがある、案外と好みの音に出来る、案外と結果が出る」等の理由で、好きかなぁ・・・。たとえばSoldanoのモデリングとか使ってみても、BIASだと「ああ、そうだね」って感じだけど、Amplitubeだと、たとえ本物とは全然違っていたとしても「そうそう、これこれ」みたいなのがあるんだよね、漫画に描いたデフォルメされた似顔絵みたいなものかな。そのデフォルメの特徴の掴み方が上手いんだと思うね、Amplitubeは。

Overloud TH-Uと比べてどうか。うーん、そんなに判定できるほど試してないけど、ぱっとの印象だと、BIASの方が評価出来るかな。特にハイゲインものだとそうだね。

でも、本文に書いたように、brainworxのやつの方が全然本格的だと思うし、mercuriallのフリーのやつが一番良かった、というオチになるんだけどね。

 

2019年9月28日追記
Neural DSP ARCHETYPE: NOLLYを試してみました。

感想は、かなり低めの評価という感じ。

笑えたのは、これってネット上の評判も(ぱっと見た感じ)良いみたいだし、ウェブサイトとか、すごいかっこよくて、いけてる感じで、また有名なメタル系ミュージシャンのエンドースも付いているし、いかにも評判よくていけてる感じなんだけど、実際に試したら、全然いけてなかったので、その落差にちょっと笑ってしまった。

僕が試したのはスタンドアローン版で試したけれど、プラグイン版でも基本的には変わらないと思うから。

音が平面的で、アンプとしてのリアルな反応という点ではかなり低い評価になってしまう。ただ良い点を言えば、メタル的に使いやすい音で作られているので、そういう用途の人にはやっぱり使いやすいだろう、という事は言える。言ってしまえば、「ラップトップミュージシャン」には使いやすい製品かも。(そして、今時、流行っているのはそういう音だろう)

でも、正直、あまり良い音とは思えないし、機能的にも充実しているとは言い難い。

今までいくつか試してきたアンプシミュレーターの中でも、僕の中ではわりと下の方の順位になる。

たぶんここのディベロッパーさんは、中身の開発よりも、宣伝や商売の方に力を入れているのだと思う。(その事に対して否定はしない。時代を考えれば、特に。)

 

2019年10月14日追記
Scuffham Amps S-Gearを試してみました。

これは、割といい感じだと思います。かなり評価できます。
上の記事本文の中で書いた、お気に入りのMercuriall Harlequinあたりと比べると、反応の点でちょっと劣るのは否めないのだけれど、それでも決して悪くないし、音もきれいで実用的だ。
用意されているアンプのモデルも、決してコピー一辺倒でないところも好感が持てる。

普段家でギター弾く時に、楽しんで弾けるか、と言われると、どうかな、やっぱりあまり面白くないな、と答えざるを得ないけど、録音とか作品づくりに使えるか、使えないか、で言えば、これならたぶん使える、と答えられると思います。(本気の録音、というわけにはいかないが、お仕事録音なら、十分に出来る)

さっき書いたように、反応のリアルさとか弾いてて楽しいといった部分では、Mercuriall Harlequinの方が一段上だと思うけれど、brainworxのやつと比べると、総合点でどっちが上か判定が難しい。本物のアンプを弾いてるような楽しさという面ではbrainworxの方が上だと思うけれど、総合的な使いやすさで言うとS-Gearの方が便利かもしれない。(何度も言うようにbrainworxのキャビのIRがあんまり好きではないので)

リアルさと使いやすさのバランスが取れていて、全体的に優秀で、これは十分に良いシミュレーターだと思います。

 

 

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