ギター録音たぶん完了

 

ギター録音はなんとか完了したようだ。

言うまでもなく、自分の音楽人生の到達地点として、命をかけて作っている”Nabeshima”のことである。

ギタートラックの録音は、どうやら終了した。

これであとは、残っているのは、4曲ほどのアコースティックギターの録音、インストの1曲のギターの自宅ライン録音、そしていよいよヴォーカル録りということになる。

なんとか年内にギター録りを終えることができて、そしてクリスマスが来る前に終わらせることが出来てほっとしている。

間もなく2020年が来てしまうので、2010年代のdecadeに完成させることは出来なかったが、それは当初に計画していた時からわかっていたことだ。

 

今年、2019年を迎える時に、1月の時点で引越しをしなければいけないことがわかっていたので、それが片付いてから、いよいよこの”Nabeshima”の制作に入る、ということを決めて年間の作業計画を立てていた。

だが、その時点で計画を立てて、2019年のうちにすべてが完成する見込みは立たず、どんなに頑張っても、順調に行ってギター録りまでだろうと考えていたので、その意味では当初の計画通りということになる。

「2010年代」というdecadeで片付けることは出来なかったが、当初、2016年夏に”Nabeshima”のデモを形にした際に考えていたことは「2020年の東京オリンピックが行われる前には完成させたい」ということだった。
その目標はなんとか達成できそうだ。
(このまま、無事にいけたら、の話だが)

 

先週の金曜日に最後の曲を録り終え、ここ数日、レコーディングしたギタートラックをひたすらチェックしていた。

今回はダブルアルバムということで曲数が多いため、チェックするだけでもずいぶんと作業に時間がかかる。
昔、あれは2005年のことだったが、短期間に2枚どころか、4枚作ってしまうということをやったことがあるが、
これだけのまとまった曲数を制作するのはあれ以来だし、純粋な意味で「ダブルアルバム」というのは初めてのことだ。

無名のインディーのくせに大袈裟な制作だと思われるかもしれないが、しかし今度ばかりは、その内容は大掛かりな掛け声にふさわしいものになるという自信がある。つまり、僕はこの作品で世界をあっと言わせるつもりである(笑)

しかし自分にとっては「音楽人生の到達点」であり、実質的にこれが「頂点」であり「最後」になってもおかしくないものであるから、これほどに「賭けて」いるのだけれども、しかし正直に、こんなに大変な制作はもう二度としたくない。

今後、作品を作る機会がもしあったとしても、それはもっとリラックスして、レイドバックして、無理をしない内容になるだろうと思う。それは年齢や、環境や、状況や。
もし環境や状況が与えられるのであれば、やれるかもしれないが、それでも「創作」という意味ではこの”Nabeshima”ほどの切れ味や密度は二度とやれないだろう。

 

 

さてギター録り。
たぶん大丈夫だと思う。
たぶん完了したと思う。
色々と心配だった曲、まだまだ心配な曲、あるけれど、
すべてチェックする中で、
(実際、期間中にやりなおしを試みた曲も2つ3つくらいはあるのだけれど)
ひとまずこれで大丈夫だと感じている。

 

なので今週は、リハスタに預けてあるアンプを引き上げてこよう。

この”Nabeshima”のために、そして自分のギタリスト人生のひとつの回答として入手した「高性能な安物」Imaria (Jet City Amelia)は、十分に期待に応えてくれた。

期待以上だったと言っていい。
というか、やはり期待のはるか上だったように思う。

自分が今まで出したことのない音に、
自分が今までに向き合ったことにない表現に、
とまどいつつの録音作業だった。

なんだこの音は。
この曲はこういう音で弾くべき曲だったのか。
こんなにも繊細に弾かなくてはならないのか。
このような表現が可能だったのか。
そして、エレクトリックギターとは、このような表現が可能な楽器だったのか。

“Imaria”アンプと向き合ったこの濃密なレコーディング作業を通じて、
自分のエレクトリックギターの演奏に対する概念は、まったく新たにされ、今自分はようやく、エレクトリックギターってこういう楽器だったのか、ということが、その「最初の一歩」がわかったような気がしている。

それはもちろん、この”Nabeshima”の楽曲や、それが必要とする表現。
そしてこの5、6年の間、ずっと向き合ってきた自分なりのギターサウンドの探求。
BacchusやSTRのギターおよびベース。
その他の色々な愛用の機材。
それらのものの積み重ねでたどりついたものである。

 

けれども、たとえばこの”Nabeshima”の「オープンデモ」(公開可能な形にしてあるデモを、2017年の年末に完成させている)を作った時には、brainworxのアンプシミュレーターのうち、JCM800のモデル、Chandler GAV19Tのモデル、ENGL RetroTubeのモデル、ENGL530のモデル、の4つのアンプを使い分けたのだけれど、

今回、実機とシミュレーターの条件の差こそあれど、それらの楽曲をすべて、この”Imaria”1台で鳴らすことが出来たのだから、その事実からも”Imaria”がいかにヴァーサタイルで高い機能性を持ったアンプかということがわかると思う。

これだけやれたんだから、やっぱり”Imaria”は、僕にとっての運命のアンプなんだろうな。5万円しなかったんだから、どんなに安いギタリスト人生だよ、と思われるかもしれないが。

 

この写真は、確か”The Garden”のソロを弾いた時のセッティングだと思う。想定していたのの3倍くらい太い音が鳴って驚いた。今回いちばん苦しんだソロだ。伝えたいという思いが強過ぎたのだと思う。愛の告白みたいだった。

 

 

サウンドは想定を越えたものが録れたと言っていい。
ギターソロ、リードプレイにおける音色の表現も、理想を越えるほどのものが録れた。
まぁ、これでミックスしてマスタリング処理したら、普通になっちゃうのかもしれないけどね(笑)

ただ、録音作業を通じて感じたのは、いかに自分が下手っぴか、ということだったな。

もちろん自分は、めっちゃ上手いギタリストというわけではないけれど、もともとラフなタイプのプレイヤーではあるが、これまで自分の楽曲を弾くのに、技術や才能が足りないとは思わなかった。

だけれども、今回は本当に、いかに自分が下手くそか、ということを、思い知らされた。

理由はわからない。
それくらい、今回の”Nabeshima”の楽曲は難しかった、としか言えない。
それらの楽曲が要求する「表現」に、自分の腕は必ずしも追いついていなかった。

だから、完成した作品を見て、「まだまだだな」「足りないな」と思うかもしれないし、そう思われるかもしれない。
けれども、これが今の自分の限界だし、ベストは尽くしたし、全力を尽くした。
それは事実だ。

そして、今の自分なりに、ベストと言える演奏をした。これも事実だ。

 

もともと、この”Nabeshima”の楽曲を書いた際。
インスピレーションが空から降ってきた時。
そしてそれを2016年夏に最初のデモの形にした時。
どうやってこんな楽曲が出来て、どうやってこんなギターソロをはじき出したのか、自分でもまったくわからなかった。
それ以上のものを創造できると思わなかったから、それを基準に、理想像を追いかけて、今回の録音作業までたどりついた。

それが正しかったのか、間違っていたのかはわからないが、自分に出来るのはそれがすべてだった。

楽曲も、すべての音符もメロディも、すべてのインスピレーションも、それは空から、天から、神から与えられたものであって、自分が「考えて作り出した」ものじゃない。
今回こうして、自分の限界を越えたものを与えられた。
それに向き合うためのこの数年だったわけだけれども、
その結果を、良い形で世界に提示し、届けることが出来れば幸いだ。

サウンドの答えは、間違いなく提示されたし、サウンドの面でもプレイの面でも、はっきりと、何度も奇跡を体験した。

だからきっと、これで間違っていない。

その奇跡を皆に届けたい。

 

 

使ったギターは4本。
“Jesus Wind”の時は5本使ったから、それと比べれば少ないかな。
曲数を考えても、22曲もあったわけだからね。(全部で24曲だが、2曲は家録りのインスト)

メインは、僕にとってはこの「鍋島」を作るために自分のもとへ来たと言って過言ではないBacchus Duke Standard。2014年モデルだと思う。
貴重なものだということは知っているから、僕の手元に来てくれたのは幸運なことだ。ひょっとするとあのフランスの女性ギタリストのおかげかもしれないね。たぶん同時期に作られたものなのだろうから。
2015年初頭に手に入れて、そこから、この「鍋島」の楽曲が一気に書けたから、まさにこれが、”Nabeshima”の表現にもっとも必要な楽器だった。

 

 

足下は、メインのオーバードライブは、やはりHeavy Lid Effects Shoals Overdriveだった。
“Jesus Wind”ではストックの状態で使用し、”Overture”では「壊れた状態」で使用し、今回はオペアンプを交換した状態で使うことになった。

使い方の非常に難しいオーバードライブだが、今回、よりセッティングを研究し、ニュアンスの求められるクリーンで反応の良い音も出せることが証明された。
今回こうして使い倒し、ヘヴィな音からニュアンスフルなソロまで、あらゆる表現が出来たので、やはり僕はこれでいいのだ、このShoalsこそ僕にとっての運命のペダルなのだということを改めて確信した。

 

比較的クリーン系の2曲のバッキングではT-Rex Divaも使い、また、いくつかのギターソロでは反応の良さに優れたMaxon 808X Extremeも使う予定だったのだけれど、現場で比較すると意外にもShoalsの方が勝ってしまい、結局2曲のギターソロで採用されるに留まった。だけれど、音の選択に迷った時に、基準として役に立ってくれた。

そしてこれらをAlbit/Cranetortoiseの「ピンク色の真空管ブースター」VT-SELと組み合わせて使うということをやった。VT-SELはもともとA/Bスイッチャーとして開発されたものだから、こうした他のオーバードライブと組み合わせるのに無理がなかった。これは、自分にとっては新たなサウンドの可能性の発見であり、今回のレコーディングにあたっての大きな発見だったと言っていい。久々に「ALBITの音」を自分のサウンドの中に組み込むことが出来て、嬉しく思っている。

そしてまた、2、3の曲では、ピンク色のブースターが合わない場合にALBITの「FETブースター」CB-1Gを使用した。これは録音作業の直前に手に入れたものだけれども、要所で非常に役に立ってくれた。今後のライヴでは、たぶん足下に定着することになるだろう。

 

録音に関しては、うちは”Japanese Pop”以来は基本的にずっとギタートラックは左右一本ずつでやってきたわけだけれども、前作の”Overture”で久しぶりにリズムギターは左側の一本のみ、ということを行った。これは、僕はもともとVan Halenの大ファンだから、自分にとってはこの方が自然なのだ。

で、この”Nabeshima”もギターは一本のみ、で行くことを決めていたのだけれど、ある程度、音の厚みや立体感を出すために、マイクを3本立ててみた。使ったマイクは内緒にしておこう。

使ったプリは、Toft ATC-2、Joemeek SixQ改、Joemeek VC1、あとTascamのインターフェイス(一世代前のモデル)に付いてるやつ、であるが、これらの評価は、ヴォーカルもすべて録り終えてからレポートを書くことにしよう。もちろん曲によって使い分けたわけだ。

一言で言えば、VC1はレトロだが太い、SixQ(オペアンプ交換済)はミッドが前に出て音も鮮明だがチープで動作が不安定、ATC2はフラットだが思ったより質が良くEQ併用すればほぼ理想、という感じだ。やはりこうやってみても、自分のサウンドには「ヴィンテージ」とか「トランス」とかはあんまり必要ないことがわかる。VC1はインプットトランスのみで、アウトプットトランスの付いたDI OUTは使用していないが、それでも僕にとってはちょっと「曇り過ぎる」くらいだった。でも、ぶっこんだ時の太い歪み方はなかなかしびれるものがあったね。さすがは名機ということかな。

 

なんにしても、これほどに苦しんだギター録音は初めてだったです。

いくつかのやり直しもあったし、今までになかった様々な問題に直面したし、肉体的にも魂的にもめっちゃ消耗しました。

でも、その甲斐はきっとあったはず。
きっと、世界の皆に伝えてみせる。

どうもありがとう。

 

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