マイクプリが来たらオペアンプが交換されていたがこれはラッキーなのか

 

「鍋島」のレコーディングに使用する目的で考えていたマイクプリアンプ、というかチャンネルストリップが届いた。

もっとも、「鍋島」のレコーディングは何年先になるかもわからないし、それを作るべきバンドもまだこれから立ち上げるか、どうなるかわからない段階で、録音機材のことを心配するのは滑稽でもある。

でも、考えて辿り着いた結論だから、たぶんこれでいい。
もちろん、結論なんて、これからいくらでも変わるのだろうけれども。

[実際に録音作業に使ってみての感想とレビューはこちらです]

 

ところでこれは読んでおくべきだ。
https://www.soundonsound.com/techniques/analogue-warmth

由緒あるサウンド・オン・サウンド誌のサイトに掲載された、analogue warmth、つまりアナログ録音、アナログ機材の「あたたかみ」「ウォームな音」とは何ぞや、という記事だと思う。

結構古い記事だから、例として紹介されているプラグインエフェクトなんかも、ちょっと古い、というか、なんか懐かしいものばかりだけれど。

でも、結構冷静に、客観的に、アナログ機材ってものがどう音に作用するのかを、書いてくれているように思う。

 

誰もが「アナログのあたたかみ」を求めるが、
僕が議論したいのは、そもそもそんな「あたたかいアナログ」なんてものが必要なのか、必要だとしたら、どのくらい必要なのか。

そんでもって、その「あたたかみ」ってやつは、果たして機材に頼って出すものなのか。
演奏とか、手法とか、もっと言えば心とか魂とか、そういうもんから出てくるものなんじゃないのか。

 

現実において、現代においてほとんどのところ、高級なアナログ機材のあたたかみ、なんてものを求めている人は、実際にそんな手垢や汗にまみれた手作りっぽい「あたたかみ」を求めているわけではなく、威力のある最先端デジタルの中での権威や説得力を求めているのが現実だと思う。もちろん、それは現代の録音制作がそれくらいハイレベルだということでもある。それはわかる。

逆説的に、僕もレトロ趣味で、確かにアナログ感ってやつを求めているが、僕の求める「あたたかみ」「アナログ感」っていうのは、本物のアナログ機材を思いっきり使ってしまったら、たぶん出ないものらしい、ということには、いくらなんでもそろそろ気付いている。

 

どっちにせよ、この記事の中で、アナログの機材や録音機器が、音の中でも「トランジエント」の部分に大きく影響する、ということは繰り返し述べられていると思う。

記事を読む限り、アナログ機器を通すとトランジエントは「なまる」ように思われるが、果たしてそれが、君の音楽にとって必要なものなのか、トランジエントがなまるのだとしたら、どれくらいなまらせたいのか。

音のアタック部分、トランジエント、っていうのは、たぶんそれくらい非常に重要なものなので、それをどう扱っていけば、目指す表現に辿り着けるのか、きっといっぺんくらいは考えた方が良いのだろう。

僕は、アナログっぽい手作り感、あたたかみ、は欲しいのだけれども、かといって、自分の音楽表現、特にギタープレイの中で、トランジエントは、結構ちゃんと残しておきたい、方であるので、そのへんの微妙な立ち位置にいるみたいな気がする。

 

んでもって、話がそれたが、チャンネルストリップが届いた。
まぁ、要するにマイクプリアンプのアウトボードである。

 

で、写真を見れば、わかると思うんだけれど、そう、これ。
前に書いていた記事を読めば、きっと予想ついたと思うんだけれど、結局PMI Meek。

普通の、ちゃんとやってるミュージシャンの人や、プロの録音エンジニアの人からしてみれば、「おいおい、本気の録音を、こんな安物の機材でやるのかよ」っていうものだと思う。しかも、音楽人生の集大成とも言える、とっても大事な制作を、それでやっちゃうなんて。

 

たとえばバッカスのギターでもそうだと思うんだけれど、PMI Meekなんかにしても、「初心者が最初のステップアップとして選ぶもの」であって、「ちょっと上手くなったら、もっと高級なものに買い替える」という立ち位置の機材だと思う。

たとえばギターなら、初心者は最初にバッカスのギターで始めて、上手くなったり、本格的にやり始めたら、FenderとかGibsonとかPRSとかSuhrとかに、買い替えると思う。

けれど僕はそうじゃなかった。僕がギタリスト人生でたどりついた最終的な究極回答は、その「安いBacchus」だった。
その意味では今回のPMI Meekも、自分らしい選択と言えないこともない。

 

前に3回くらいに分けて書いてた日記を読めば、予想はつくと思うんだけれど、
PMI Meekを選んだのは、
Malcolm Toft系の機材というか、Malcolm Toftさんの色が強く出ている機材であって、しかも、そのわりに、Ted Fletcher時代のJoemeekの特徴も引き継いでいるし、PMI Audioの枠組みの中で、製品として色んな人のインプットが注がれた、わりとバランスの良い機材。
特に優れている、とは言わないが、全般的に優秀で汎用性が高い、というか。

そんでもって、もちろん、ここ2作の録音で使用したThreeQ (これこそとんでもない安物だが)の性能に十分納得して気に入っていたことも大きい。

 

なので、もひとつ上のSixQに手を出したわけだが、理由はもちろん、安かったから。それとそんなに重くなさそうだったから。
これはつまり、外のスタジオで貧乏録音をする自分の、コストパフォーマンスならぬウェイトパフォーマンス、というか。重さあたりの性能、とでも言おうか。
軽くて持ち運びが出来る機材が正義、という。

で、約2.8kgくらい、軽めの1Uってことで、ギリギリいけるかな、って。
なので、たとえば同じものが2チャンネルぶん積んでるTwinQってのもたくさん出回っていて、しかもわりと安く出回っているので、迷ったんだけど、1chあればいいでしょ、って。

で、実際に音を聴いてみて、それはたぶん正解だった。
僕の録り方として、これを2chぶん使うことはあまり無いだろうから。

だからステレオで2chぶんを録る用途だったら、たぶん違うものを選ぶだろうな。

 

で、これは前の日記読めばわかると思うんだけれど、このPMI Meekの製品は、ICベースだけどインプットトランスだけは積んでる、ってことで、つまり例のTrident 80Bあたりの音に、自分の環境で迫るには、これがいちばん近いんじゃないかな、って。

しかも、バージョンにもよるけれど、そのインプットトランスも、スイッチひとつで切り替えられるしね。現行バージョンのSixQ2とかTwinQ2は、マイク入力に対しては切り替えが効かなくて、インプットトランスは入りっぱなしなので、僕としては音作りの選択肢を考えると、この旧バージョンの方が良い。

しょせんは量産品だけれども、そこは、ほら、スコープドッグでいくらでも戦ってやるよ、っていう(笑)

 

PMI Audioからは、実質的な中身はPMI Meekととても良く似た製品が、Toft Audioのブランド名で出ているから、
そっちももちろん気になっていたんだけれど、似たような製品ではあるが、Toft Audioのチャンネルストリップは、インプットトランスを積んでいない。
だったら手持ちのThreeQとあんまり変わんないので、いいかな、って。
もちろん、Trident直系のEQやFETコンプには興味はあったのだけれどね。

 

安く出品されてたりするから、迷ったんだけどねー。
ヤフオクやメルカリにも、ちょくちょく出てるから、迷ったんだけれど、
結局、わざわざ海を越えて取り寄せるハメになったが、結果的に安く入手できたし、そしてきっと、正解だった。

その理由は後述するが、これはきっと当たりの個体だったのである。

 

そんでもって、ね、
結局、Reverbでお買い物して、もちろん、とても安く出品されていたのがあったから、それでこの機会にと思ったんだけれど、
他の日用品はともかく、こういった機材みたいなものを海外から輸入というのか個人輸入というのか、海外のサイトで購入するのは初めてだったので。

ちょっと不安でもあったが、結局、関税もかからなかったし。

自分の人生の「最終決戦」に使うような道具が、こんなに安く手に入ってしまっていいのか、という。

その予算も、ここ半年くらいのCDおよびダウンロードの売り上げを充てさせていただきました。
お金の使い方としては間違っていないはずだが、とてもありがたいことであります。
神に感謝。
なんかしらんが音楽を聴いてくれる海外のファンの方々に感謝。
国内でも売れて欲しいんですが・・・(はっきりいって9割型あきらめてます)。

 

で、早速テスト走行してみたんだけれど、
部屋でアコギを録ってみて。

まず、到着してすぐに早速、シャーシを開けてみたんだけど。
(いきなりかい。でも大事だよね。)

マイクプリの心臓部である、メインのオペアンプが、交換されてた。

PMI Meekっていうのは、Burr Brownのオペアンプを搭載してますよ、っていうのが、ひとつの売りである。INA217っていうやつだと思う。

つまり、Malcom Toftさんの視点からすれば、なんかのインタビューでやっぱり言ってたと思うけれど、
Trident 80あたりを作っていた頃に、当時存在していたオペアンプよりも、その後21世紀になって、そういったBurr Brownだか何だか、もっと性能の良いものが開発されたので、それを使った、という話である。

んで、そのBurr Brownが入ってるはずのSixQの筐体を開けてみたら、オペアンプはどうやら交換されていて、Burr Brownの代わりにTHATっていうやつが入っていた。
THAT1510Pって書いてあった。

 

で、ん、おや、って思ったんだけど、
ググって調べてみたところ、どうやらこれは「アップグレード」らしい。

で、それが果たして、ラッキーなのか、不運なのか、それは音を聴いて判断するしか無いところだが、

(もっとも、オペアンプはいわゆる「下駄」に載っているので、気に入らなきゃ交換すればいいだけなんだけどね)

テスト録音して音を聴いてみた限り、たぶんこれは当たりというか、ラッキーだったみたいだ。

つまり、予想していたよりも音が太いというか、ビッグなサウンドだったからだ。

 

2作、録音制作に使ってみて、ThreeQの音は、比較的ハイファイで素直でクリアだが、かといってちょっとミッドに力のある元気良い系の音で、妙につや感と透明感があり、ちょっとねばっこい感じもある、という印象で認識している。
だが、どちらかといえばやっぱ軽めの音だ。
だから、その心臓部であるBurr Brownもそんな感じの音である可能性が高いと考えている。
(ちなみに、ついでにThreeQもフタを開けてみたが、こっちはちゃんとBurr Brownが載っていた)

 

けれども、このTHAT1510Pを積んだSixQの音は、なんかもうちっと太かった。
で、たぶんそれは、ラッキーだと思った。

Reverbのsellerの人にメッセージしたら、その改造は知らん、と言っていたが、
アメリカの人はそうやって改造したりいじったり交換したりとかそういうの好きだろうから、前の持ち主の誰かが交換したんだろう。

そうやって、他人が考えてグレードアップしたやつを、安価で手に入れることが出来たのだからラッキーだと思う。まぁ楽器でもあるけど、そういうこと。

 

あとは、インプットトランスの入/切を切り替えるスイッチが付いているのだが、
これに関しては、”subtle”(微妙な効果)であると聞いていたが、実際試してみると、ぜんぜん違うじゃん、って感じ。かなり変わる。やっぱ音が重くなる。

これは、今の僕の狙いとしては、ギターに使うには適しているし、ヴォーカルも曲によってはアリかもしれない。
でも、いつもアリ、ってふうには思わないので、やっぱりON/OFFが出来るのはありがたい。

トランスがOFFの状態でも、ThreeQより音が太いのは、オペアンプのせいなのか、電源部の違いなのか、回路が違うのか、そこはわかんない。

でもひとつ言えば、ThreeQに比べて、ゲインが低かったので、ちょっと使い方とかマイクとの相性は選ぶ感じ。これは、オペアンプのせいかもしれんが、中古でヘタってる所為かもしれん。でも気にしない。

そんで、一行で済ませるが、EQもコンプも期待通りだった。

僕は録音なんてものが、最近ちょっとずつわかってきたところだから、
チャンネルストリップに付いているEQやコンプを、録りの段階で活用する、とか、昔はできなかったが、今後はもっと積極的に活用していきたい。

(“Overture”や”Jesus Wind”でも、ThreeQのEQやコンプ、それなりに使ってるんだけどね。あれで、味をしめた感じがする。使い易かったから。使う人の事を考えてデザインされた、よく出来た機材だよ。)

(ThreeQ近影)

 

しかし所詮は、安物のチャンネルストリップ、いわゆるProsumerと言われる価格帯の製品、
Malcolm Toft氏の伝説のひとつであるTrident 80Bの方向性に惹かれたからといって、DAW環境で、こんな安物でその音を再現できるわけではない。

とはいっても、オペアンプがグレードアップされていたせいか、思ったよりも音が太かったので、”IRON”スイッチを込みで考えて、やっぱりテスト録音してみた結果、僕の耳には、それらのTrident 80Bコンソールで制作された、と言われる数々の名盤、そこで聴ける音のニュアンスに、やっぱり近い。まぁ、気のせいかもしらん。

 

と、まぁ、ひとまず道具は手に入れてみたものの、
それが本当に、使ってみて上手くいくかどうかはわからない。

そもそも、「鍋島」の制作に取り掛かるのもいつになるかわからない。

まだまだ色々試してみるつもりだ。

とりま、ちょっとした「リメイク」の録音を、そう遠くなく、ひとつする予定なので、そのギター録りに、いっぺんXieさんとこのVintechを使ってみたいと思っている。

 

追記:
Reverb経由fromアメリカなので、電源が120V(切り替えても230V)だから、
けれども果たして、日本の代理店が売っていたものは、日本用の電源がどういう仕様になってたのか知らないが、
とまれ、手元に、アメリカに演奏しに行ってた頃のCranetortoise真空管ブースターに使ってた80Wくらいの変圧器があったから、それで試して、問題ないな、って、今のところ。
ただ、変圧器の設定わかんなくて、ディップスイッチを”120V”ってのに合わせた時の方が、”100V”に合わせたときよりも、明らかに音が太いので、それでいいかな、って。

壊れないといいんだけど(笑)

 

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