PAのマスタリングコンプレッサー

 

久しぶりに機材関係というか、機材というよりはDAWとか、DTMとか、プラグインについて書いてみよう。
音作りのこと。

 

DTMっていう言葉も長年使われているけれど、この言葉はまだ有効なのだろうか。
思うに、コンピューター、当時は主にハードディスク、を使って音楽を録音制作することが、ProToolsの普及と業界標準となったことで、一般的となり、DTM(Desktop Music)という言い方も意味が合わなくなったと思うけれど。

DAW(Digital Audio Workstation)という言葉も一般的だと思うけれど、僕は最初は長年Cubaseを使って、その後にLogicに乗り換えて、そのまんまLogicを使っているけれど、
こうしたDAWも流行り廃りがあって、その時々で主流になっているものがあるけれど、果たして時代と共に進化しているかというと微妙なところもある。これはデジタルの道具であっても、ギター等の楽器であっても同じ。技術は進歩しても本質は必ずしも進化していないことも多い。
自分もいつかタイミングを見て、安価で庶民に開かれているReaperとかに乗り換えようと思わなくもない。

 

DAWというのは、日本の人はローマ字ぽく「ダウ」と読んでいると思うが、英語的には「ドー」と読む方がたぶん一般的で。
2、3年前にリリースされたプラグインでFrontDawっていうのがあったと思うが、あれは「フロントドア」という意味のダジャレだけれども、日本の人がローマ字式に読むと「フロントダウ」になってしまうので、ダジャレが成立しない。

ちなみにFrontDaw、United Pluginsっていうところが出していると思うが、この手の「アナログっぽい味付けをするコンソールやプリアンプのシミュレーター」のプラグインは嫌いではないので、僕もWaves NLSを始めとしていくつか所有し使っている。
その中ではFrontDAWは結構味付けの濃い方だったという印象を持っている。あまり多用はしていないけれど、”Nabeshima”でも何箇所かでは使ったし、もうすぐリリースするEPでも一箇所か二箇所くらいは使っているはずだ。

 

 

今日、書きたいのはコンプレッサーについてだ。
コンプレッサーのプラグイン。それも、どちらかといえばマスタリングにおける用途のやつだ。

自分は、バンドの音源を制作してリリースするにあたり、録音、ミックスはもとより、いわゆるマスタリングの処理も自分でしてしまっている。
これには良い面もあれば悪い面もある。

しかし、振り返ると、自分はこれまで、間違いだらけの「マスタリング」をしてきたので、その意味では悪い面がいっぱいある。

けれども、最低限、アーティストにとって、自分の意図する方向性の音にはなっているので、そこは良い面だったと言えないこともない。
ただ、技術的には色々間違っている点がいっぱいあった、ということだ。

 

僕は世間から距離が遠く、様々な流行り廃り、また世間の情報にも疎いので、2010年代のある時点で、世の中の音楽の流通がSpotify等のストリーミングが主流となり、またそれにともなって、いわゆる「ラウドネス戦争」のルールが変わったことも、しばらく気付かなかった。気付かなかった、というよりは、もともと世間と距離が遠いので、どうでもよかった。

であるからして、2000年代を通じてデジタル環境でマスタリング(このマスタリングという言い方も本来の意味では正しくない使い方であるが)の処理をしてきた人間としては、平気でどかんと各種リミッターにつっこんで、-6.0LUFSくらいの処理をやってしまっており、昨年リリースに至った”Nabeshima”のマスタリング処理もだいたいそれくらいになってしまっている。

ただ、それだけ音圧を突っ込んだとしても、色々と工夫はしてあったので、そのわりにはある程度のtransparancyや、ある種のトランジエントのニュアンスやダイナミクスは残っていると思う。

 

でも、やっぱりハードロックやメタル系の作品だと、今の時代でも、それくらい「突っ込んで」「音圧を出した」作品は多いよね。そういう世界観の音楽だと思うから。

ただ、メジャーの作品や、ちゃんとしたプロダクションの施された作品は、そういった中でも、やはりダイナミズムであるとか、アレンジであるとか、音圧を稼ぐにしても、無駄な周波数を削ぎ落としてあるので、たとえ同じLUFSでも、より音量や迫力を感じるようになっていると思う。

 

じゃあ2010年代の半ばくらいに潮目が変わって、いわゆるLoudness War、音圧競争は終焉を迎えました、なんてみんな言っているが、僕はそんな戯言はやっぱり一切信じていない。
そういう音圧競争みたいなものは、ルールが変わっただけであって、やっぱり形を変えて続いていると思う。

で、僕みたいな立場でインディで音楽を作っている身からすると、そういうのは全部どうでもいい。

結局のところ、それは「皆と同じ音を鳴らす」という強迫観念であり、「乗り遅れちゃいけない」系の掛け声でしかないからだ。

 

今のプロダクションはたぶんすごいレベルが高い。
ProToolsが普及し、デジタル時代になって優に20年は経過している。
よく言われるように、今のレコードっていうのは、完璧なエディットで、完璧なサウンドになっている。それが退屈だ、という意見もよく聞く。

じゃあ、ストリーミングのプラットフォーム上で「映える」ように、ダイナミクスを稼いで、「ペナルティ」を考慮して、また無駄な周波数を削ぎ落として、なおかつ、スマホ等の媒体でかっこよく聴こえるように、そういった隙の無いサウンドプロダクションを施しました、と。
その時に、失われるものはやっぱり僕はたくさんあると考える。

 

僕は商業的なサウンドとか、いかにも立派なメジャーなプロダクションですよ、みたいな音とかは、最初から興味はないし、憧れの誰々みたいな音にしたい、っていうのも無い。
インディバンドならではの音を、ありのまま、たとえそれがチープで貧乏な環境であってもいいから、その環境の音をありのまま表現したいと思っていた。

だから、相変わらず、ラウドネス戦争のルールが多少変わったとしても、別にいいじゃん、って思っている。ちょっとくらい素朴な音でいいじゃん、と思っている。必死になってダイナミズムを稼ぐ必要もない。ストリーミングサービスの基準にいちいち合わせてプラットフォーム毎にサウンドを変える必要もない。がっつり突っ込んでしっくりくるのならそうすればいいし、自然な波形を残しておきたいのならそれでもいい。それぞれの音楽がそれぞれしっくりくる処理をすればいいだけのことだ。

こうしなきゃいけない、って言い出すと、途端に音楽も芸術もつまらないものになるのだから。

 

でも”Nabeshima”を完成させた後に、Patreonの曲とか作りながら、やっとLUFSとか測れるメーターのプラグインとか入手して(笑)、うんそうだ、僕もこれからは無理に突っ込まないようにしよう、って思った。

アコースティックEPを作った時は、よく覚えてないけど-10LUFSくらいだったと思うし、Dakeno Kakariの作品もそれくらいでやっていると思う。

まあ、あれらはそもそもハードロックですら、ないし。控えめにして当然なのだけれど。

 

なので、もうすぐリリースする新しいEPも、-9とか-10くらいの範囲でマスタリングをしましたね。
音楽性としてもそれくらいでしっくりくるものだったと思う。

 

 

さて、また前置きだけがやたら長いのですが、コンプレッサーについて書いてみたく。

 

自前でマスタリング処理もやってしまっている、ということで。

マスタリングのシグナルチェーンについては、長年やっているうちに、ちょっとずつ進化してきたものがある。

進化、っていうか、作業の便宜上、成り行きでそんな形に落ち着いた、みたいなニュアンス。

もともと、インディバンドの人が自前でやってるものだから、限られた予算、限られた環境の中の話だ。最新のプラグイン、最新のハードウェア、とか、全然そんなのは無い。

 

僕は2016年に”Jesus Wind”の録音制作をした頃から、Plugin Allianceのプラグインを少しずつ使い出した。

それは、もともと使っているパソコンが古いやつだったから、各社のプラグインがすでに使えない中で、Plugin Allinance (以下PA)のやつは、まだ使えるものが多かったからだ。あと、割と安くて入手し易かった。

 

PAは、ここ数年で経営的にもさらに成長したと思うし、今では間違いなく有力なディベロッパーというか、ベンダーだと思う。ちょっと前にiZotopeやNative Instrumentsと組んでSoundwideとかいうのを立ち上げたのも記憶に新しい。(意味あるのかどうかよくわからないが)

PAのプラグインはとても質が高いと思うが、僕は好みの激しい人間であるから、方向性的にあまり好きではないものもたくさんあり、PAに対する複雑な思いは、過去にもブログで書き記したことがあると思う。(無いかもしれないが)

 

 

さて、そんな感じであるから、僕のマスタリングチェーンには、PAのプラグインがやはりたくさん使われている。

 

その中で、使うEQだとか、最後のリミッターだとか、だいたいパターンは決まっているのだが、その中でひとつだけ、「とっかえひっかえ」するものがある。

それが、コンプレッサーだ。

マスタリングのチェーンの中でも、曲によって、曲の方向性や、音楽性によって、コンプレッサーは、いろいろなものを、曲に合わせてとっかえひっかえすることが多いのだ。

もちろん、EQなんかも、曲によって少しは変えたり、選んだりすることはあるが、それでも使うものは限られている。
だけども、コンプレッサーは、なぜだかしらんが、曲によって、あーでもないこーでもない、と、かなりとっかえひっかえ、試行錯誤をしてしまう要素なのだ。

これは、プラグインだから可能なことかもしれない。
ハードウェアでマスタリングチェーンを構築していたら、こんなふうに、何種類ものコンプレッサーをとっかえひっかえしながら試す、なんていうことは、難しいかもしれない。

 

 

コンプレッサーっていうのは、言うまでもなく奥の深いエフェクター/プロセッサーであるが、
特にマスタリングで使うコンプレッサーっていうのは、また特別な立ち位置にあるように思う。

 

オーディオ的に、ある程度ハイファイな要素、高品質かつ高級なシグナルを担保することが求められるし、その上で、味付けの要素も求められる。
マスタリングにおいては、多くの場合、そんなにがっつりゲインリダクションするという感じではないと思うが、その反面、単純にダイナミクスを整えるだけではなく、ある種EQっぽく、周波数特性を整える役割も担っていたりする。

ものによっては、M/S方式の処理が可能だったりするし、サイドチェインのハイパスフィルターをどのように設定するかによって、低音の鳴り方も変わるし、たかだかダイナミクス処理というだけではなく、全体の音像にかなり大きな影響を及ぼすことになる。

また、アタックやリリースの設定によって、曲の雰囲気とかサウンドが変わってくるということも言うまでもない。

どっちにしても、マスタリングの処理において、コンプレッサーというものは、大きな役割を果たすものであると思う。

 

PAには、そういったマスタリングに使用することの出来る高品質なコンプレッサーのプラグインがいくつも用意されているが、(僕もそれらを全部使ったわけではないが)、その中で、僕がそれらについてどのような印象を持っているか、ちょっとここに書き記してみたい。

ちょっと書き記してみたいな、と、そう思ったのだ。

 

 

書くにあたって、やはり、いくつか前提がある。

 

これはいつも思うのだが、様々な曲を録音制作するにあたって、いくつもの道具を使い分けるのは、それは、それらの曲を「違ったサウンド」にするためではない。そういう場合もあると思うが、必ずしもそうではない。

むしろ僕が思うにはその逆で、たとえば10曲あったとしたら、それらの10曲が、無理なく自然に、どれも自然に同じサウンドに聴こえるように、それぞれの曲に合った楽器や道具を使うのだ。

つまり、10曲のうち、それぞれに違うギターを使うとすれば、それは、それらの曲を同じように自然に聴かせるためである。
たぶん、それらの10曲を、全部同じギターで弾いたら、それらの10曲は、どれも「違うサウンド」になるはずだ。楽曲の内容にバラエティがある場合、それだとしっくりこないことがあるので、それぞれに違った楽器を使うのだ。その方が、逆に、どれも自然に同じサウンドになるのだ。
ケースバイケースだが、僕の感覚、僕の経験ではそういう感じだ。

だから、たとえば10曲をマスタリングするとして、それらにそれぞれ、違ったコンプレッサーを使うとすれば、それは、曲のサウンドを変えるためではなく、その逆に、アルバム一枚、違和感なく自然に統一されたサウンドを得るために、そうするのだ。

 

 

そしてもうひとつ、これは僕にとっては大切な前提だ。

 

楽器もそうだが、音楽の機材、録音等に使う機材には、「味付けの少ない正直なもの」と、「味付けの濃いキャラクターを持ったもの」がある。

なんか、うまく伝えられるかわからない。
うまく言葉にして説明できる自信もあまりない。

僕は、自分の好みでは、どちらかといえば「味付けの少ない正直な機材」が好きだ。
かといって、もちろん味付けのある機材も好きだけれど、今までの経験から言って、どうやら僕は、「素直で味付けの少ない機材」の方が、たぶん好きらしい。

 

だけれども、世間で評判の良い機材、世間で定番とされている有名な機材、またはヴィンテージみたいにして伝説になっている機材、そういう機材とか道具は、多くの場合、「味付けの濃いもの」であるような気がしている。

これは、あるいは単純に僕の見識や経験が狭いからそう思い込んでいるだけかもしれない。

でも、世間で定番として重宝されているのは、そういう味付けのある機材のような気がしている。

なんかもう、有り体に言葉を選ばず言ってしまえば、それらは、演奏のニュアンスをごまかすことが出来るから、便利なのだ。

実際の音よりも、太く、実際よりも、迫力のある音に、実際よりも、説得力のある音になるからこそ、それらの機材は重宝される。

 

もちろん、僕もそういったキャラクターの機材、道具を、便利だと思い、有り難く使うことがある。
けれども、「インディバンドの素の音を、なりべくありのまま」届けたいと思っている僕にとっては、本当はなるべく、素直な音の方がいい。

別に高級な音でなくてもいい。ちょっとくらい素っ気ない音でも構わない。
ありのままの姿を記録する方が、リスナーにとって大切な情報を伝えることが出来ると、僕は思っているからだ。

で、なんかしらんが、そういう素直な機材は、比較的、安価に手に入るものが多かった気がする。理由はわかんない。時代背景もあったかもしれない。

 

わかりやすい例としては、トランスフォーマーっていうやつがある。
これは、いつも例に出している。
トランスの音、っていうやつだ。

古いNEVEには、なんちゃらいうトランスが入っていて、それが重要な音の決め手なのだ、みたいに皆が言ってるやつだ。

トランス(トランスフォーマー)ってやつは、通ると、音が太くなると言われる。
低域の倍音が増し、音の密度が濃くなり、シルキーな質感が加わり、絶妙な歪みが加わり、「いい音」になるとされる。

僕もそう思う。確かに、トランスにはそういう効果がある。

けど、僕は実はこの「トランスの音」が、実はあんまり好きではない。

いや、場合によっては、いいな、って思うこともある。
場合によっては、たとえば、ヴォーカルを録音する時に、この曲は「トランスの入ったマイクプリ」とか「トランスの入ったマイク」を使いたいな、って思うこともある。

だけど、本当は、出来れば僕は、なるべくトランスを通らずに、音を処理したい方なのだ。

なぜかと言うと、やっぱりトランスを通ることで、本来の素の音が変わってしまうと、僕は感じるからだ。

 

けれど、人間は完璧ではない。
完璧な演奏は出来ないし、ヴォーカルについても、完璧な歌がいつも歌えるわけではない。

そういった場合に、トランスを通ることで、ちょっと音を太くして、トランジエントを甘くして、もうちょっと”forgiving”な音にして、トランスの助けを得ることで、良い結果になることがある。

人間は完璧ではないし、現実っていうのも理想とは程遠く、完璧ではない。

そんな時に、現実そのままの「素」の音のままで、録音し、ミックスしてしまうと、トランスをまったく通らない、シャキシャキのリアルな音で録音してしまうと、その完璧ではない部分が痛いぐらいに目立ってしまうことがある。映像で言えば、解像度を上げたら、俳優の顔の皺まで見えてしまうようなものだろう。

だからこそ、マイクであれ、プリアンプであれ、コンソールであれ、マスタリング用のプロセッサーであれ、トランジエントを甘くなまらせ、音を太くし、ニュアンスを付加し、残酷な現実を美しいフィクションに近付けることの出来る、トランスやら真空管やらなんやら入ったものが重宝されるのだ。(真空管については、ギターアンプのそれはともかく、真空管マイクとか持ってないから、僕は語ることは出来ない。真空管の入ったプリも過去にはいくつか使ったことはあるが、安物だったから、本物の高いやつは知らない。)

 

で、そういう、アナログ的に、トランスっぽい音とか、音が太くなる、そういったプラグインも、PAにはたくさん用意されている。

僕もそういったものを、たまに使ったり、たまに使わなかったり、しているが、「おお、音が太くなるぜ」とか思いつつも、その反面、「でも、それは本来の正直な演奏のニュアンスとは違うんだよなあ」というアンビバレンツな思いを抱いているのだ。

 

それを踏まえて、Plugin Allianceのマスタリング用コンプレッサーについて、ちょっと所感を書き記してみたい。

 

 

Millennia TCL-2

最初にこれを挙げたいのだが、このチョイスは、たぶん一般的ではなく、PAのユーザーの皆さんは驚かれるかもしれない。
僕がPAのコンプレッサーの中で、マスタリング用途において一番好きなのは、このMillenniaのやつなのだ。
なぜかと言うと、これが一番、音が素直で正直だからだ。
一番、味付けが少ない。でも、多くの人は正直すぎて素っ気ない音だと思うかもしれない。
正直とは言っても、JFETモードで使うと、それなりに華やかな倍音が乗る。僕の意見では、Tubeモードの方が正直で繊細、JFETモードの方が派手だと思う。派手とは言っても、他のコンプと比べると、やっぱり正直で、素材を生かす感じだ。
自分のバンドの作品では、”Jesus Wind”の時にもこれがメインだったし、”Nabeshima”でも、これを一番多く使ったと記憶している。今度のEPでも2曲で使ってる。
ジャズやクラシック等によく使われる、みたいなイメージがあるが、僕はハードロックやメタルでも全然問題ないと思っている。

 

 

Vertigo VSC-2

これもすごい好きなやつだ。Millenniaほどではないが、これもかなり正直な部類の音だと思う。
けれどもキャラクターはかなりはっきりしている。
ミッドレンジ、そしてハイミッド、それからハイハイミッド、くらいが、非常に鮮明になる印象がある。
そして、鮮明になりつつも、実はかなり歪んでいる気がする。気持ちのいい倍音がかなりがっつり乗ってくる感じがある。
鮮やかなブルーのGUIの印象と同様に、その音の印象はブライトだ。そしてモダンな音だと思う。
非常に好きなのだが、ブライトすぎて眩し過ぎたり、曲によっては合わないこともあるので、万能ってわけにはいかないようだ。
SC Filterは、60Hz、90Hzと選べるが、どちらもツボを突いた設定だと言える。
自分のバンドの作品では、”Jesus Wind”の一部の曲と、”Nabeshima”でもちょっとだけ使った記憶がある。あとは、”Overture”でもかなり使った記憶がある。

 

 

elysia alpha compressor

これは世界的に定番のマスタリングコンプレッサーのひとつだろう。
味付けはそれなりにあるが、そんなに濃い味付けというわけではない。
通すだけで音像が整い、ワンランク上の雄大な音になり、なんかしらんが「商品ぽく」なる。
プラグインを立ち上げると、初期設定がMSモードで立ち上がってくるので、いかにもMSで使ってくれという感じがする。実際にMSモードで使う方が結果が良いことが多いように思う。
トランスを通ったような音が太くなる感じもそれなりにあるが、マニュアルによれば、プラグインバージョンにおいてWarmボタンの機能はトランスフォーマーではなく、スルーレートリミッターというものを使っているらしい。
個人的には、このSlew Rate Limiterっていうやつ、結構いいものなんじゃないかと思っています。
どんな曲に使ってもそれなりに形になり、それなりに商品ぽい音になり、あまり破綻しない印象があるので、幅広く使える優れたツールなのではないかと思います。
どちらかといえば現代的なポップソングみたいなサウンドの印象だけど、ロックに使っても完成度の高いビッグサウンドになるような気がする。
でも優等生だけどずば抜けた個性は無い気もする。
自分のバンドの作品では、”Nabeshima”の一部の曲に使った記憶がある。ほんの一部。その後もちょくちょく使っているはず。
今度のEPでも1曲使った。

 

 

bx_townhouse Buss Compressor

これは上記のVertigoのやつと、方向性は似ている印象なんだけれど、もっと古くて味付けが濃いという印象だ。
レンジ感が狭くて、ぎゅっとミッドに音が集中する感じ。
こういうことを言うと陳腐だけど、やっぱりブリティッシュロック、みたいなテイストだと思う。
使い方もシンプルで、使い易いけど、若干レトロな方向性を感じるので、曲によっては合わないと思う。曲の方向性が、そういう方面を狙っている場合にのみ、使うっていう感じ。
マスタリングっていうよりも、ミックスの際にマスターバスに置いて、音をまとめるっていう感じかもしれない。

 

 

SPL IRON

きめの細かい、密度の濃いなめらかな音。いかにも高級といった感じの音の質感。
高級ハイファイ感があるので、嫌味ではないんだけど、味付けは結構濃いと思う。
いわゆるトランスっぽさはかなり感じる。そもそも名前からしてIronだし。
設定がかなり独特で、Attack/Releaseの設定に関して、Rectifierを選ぶことで、反応の仕方やサウンドを変えられる。またSide Chain EQのフィルターを選ぶことで、周波数ごとの反応や音像をかなり変えられる。AirBassやTape Roll-Offなんていう気の利いたフィルター機能もついているし、これはもはやただのコンプレッサーというよりは、ちょっとしたEQの替わりとしても使えますよ、っていうくらいの機能が満載だ。
このマスタリングの現場を想定した多機能ぶりは、まさにMastering Engineer’s Dreamといった印象だけど、そのわりにOutputの設定が大雑把なのが残念。
トランスによる「音の重み」は申し分ないのだけど、ちょっと重過ぎるので、やっぱり曲によっては合わないことがある。
今度のEPで1曲使ったと思う。

 

 

Shadow Hills Mastering Compressor

これは実はまだちょっとした使っていないのだが、キャラクター重視というか、かなりキャラクターが強いと感じた。レトロ感がある。
いわゆるFairchild系では、IKのVC670っていうやつを持っていて、時々使っているが、そのFairchild系をさらにお化けにしました、みたいな印象だ。
またこれは誤解を産むかもしれないし語弊があるかもしれないが、APIっぽいキャラクターも感じる。その意味ではミックスの際にドラムにかけるとか全然ありだろう。
トランスの種類を切り替えることが出来るが、ぱっと試した印象では、Nickelが一番印象が良かった。OpticalとDiscreteを混ぜて音を作っていく方式のようだが、Opticalの方が味付けが濃いようで、素直な音の方が好みな僕としては、Opticalは控えめに使う方が良いと感じた。
キャラクターは強いが、それは魅力でもあるが、同時に失われるものもあると感じる。でも曲の方向性に合えば素晴らしいものだと思う。
あと、右と左がリンクしてなくて、なんでいちいち別々に操作しなきゃいけないのか、納得がいかない。
今回のEPの制作にあたって選択肢として検討したけど、良いなと思ったけど採用されなかった。

 

ちなみにShadow HillsのClass Aってやつはまだ使ったことありません。

 

 

PA以外にも、前述したIKのVC670とか、他にも使ってるのあるけど、秘密にしておきます。
秘密にさせて。

 

自分の基準で味付けが薄い方から、濃い方へと順番に書いてみました。

 

 

んー、そういえば、Unfiltered AudioのZipってマスタリングに使ったことないな。
案外と大穴だったりしてね。
前にミックスの時に使ったら非常に良かった記憶あるしね〜。

Magnum-Kもノーマークですね。
意外といっぱいあるね〜

 

選択肢はたくさんあると助かるけど、あんまりたくさんあっても、選択に困ってしまうから、ある程度絞っておきたいのも事実だね。

もし、どれかひとつだけ選べと言われたら、僕は何のためらいもなくMillenniaを選ぶと思います。

世間のPAユーザーはShadow Hills辺りを推すかもしれないけれど、僕の価値観はたぶんそれとは逆みたいだ〜。

 

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