Keeley Red Nectarを手に入れた

 

さて、エフェクターのレビューです。
たかだかエフェクターひとつレビューするだけなんですが、信じられないくらい文章が長いです。
これでも本人はいたって普通に「かいつまんで最低限だけ書いた」つもりなので驚いています。

 

Keeley Red Nectarというエフェクターのレビューを書きたいと思います。

このエフェクターは、たぶん、2026年にリリースされた、比較的新しいエフェクターだと思います。

そして、このペダルは、Guitar Center exclusiveとして販売されているもののようです。

つまり、現状では、ほとんどの場合、アメリカに行かなければ購入できないペダルです。

僕らは、今年、2026年の8月から9月にかけてアメリカ遠征を行い、かの地にて無茶な長距離プランを立てて、なかなかハードな旅をした。
その中で、やはりちょっとしたチャンスがあり、Guitar Centerに立ち寄る時間があり、そこでばっちり、このペダルをゲットしたものである。

 

 

Keeley (Keeley Electronicsと呼べばいいのか、Robert Keeleyと呼べばいいのか、Keeley Pedalsと呼べばいいのか)、まあKeeleyであるが、
2000年代からチューブスクリーマーをはじめとするエフェクターのMOD、コンプレッサーなどで一世を風靡し、その後、2010年代からはオリジナルエフェクターを販売する「アメリカ発のブティックブランド」のひとつとして、息が長く続いているエフェクターメーカーのひとつだ。

なんとなく、僕のイメージでは、日本ではいまひとつ影が薄いというか、あまり頻繁に楽器屋さんで見かけないという印象がある。

けれども、近年では、Andy TimmonsのシグネチャーであるMk3などのペダルや、Klone系のKeeley流の決定版と言えるManis、そして2in1オーバードライブのNoble ScreamerやSuper Rodentなど、注目作をいくつも発表している。
そしてまた今年2026年、Tube Driveといういかにも売れそうな新製品を出してきて、エフェクターメーカーとしては「いい感じにノッている状態」であると思う。
これは、Keeleyというメーカー、会社組織そのものが、うまく行っている、経営ならびに運営が順調に行っているという事であると思う。

 

(Robert Keeleyは、数年前に、ドナルド・トランプに多額の寄付をしていたという事が政治的にcontroversialな話題となって批判されていたが、ここではそういった政治的な事は置いておきたい)

(ペダルメーカーが政治的、もしくはPC的な批判に巻き込まれるのはこれが初めてではなく、皆さん覚えておられるだろうが、かのFulltoneも政治的に不適切な発言で炎上した)

(たとえばアメリカのペダルメーカーで言えば、JHSは記憶に間違いがなければ、クリスチャン系のつながりがあり、Kansas CityのIHOPなどとの繋がりを指摘されていたのを見た記憶がある。またJackson Audioも明らかにクリスチャン系の「ワーシップ」シーンのバックグラウンドがあると思われる。アメリカのメーカー/ビルダーにはそういうの結構多い。さきほどネット検索したところ、Fulltoneの炎上、廃業の後の復活を手助けしたのもそのJackson Audioだというから、そこはおそらく政治的な「キリスト教保守派つながり」かもしれず、つまりそれは日本語で言うならばまさに捨てる神あれば拾う神ありといったところだろう)

(Jackson Audioについての個人的な「嫌な思い出」のあれこれは、またの機会としたい。前に書いたことあるかもしれないが・・・昔、テキサスでレコーディングの機会をいただいた時のエピソードなのだが)

 

どちらにしても、僕は政治的な細かいことは置いておいて、Keeleyというブランド、またRobert Keeleyというエフェクタービルダーに対して、一定の評価、敬意、そして経営者、ビジネスオーナーとしても一定の敬意を持っている。

それはもちろん、アメリカ人に対するリスペクトもあるが、エフェクターの歴史を鑑みた際に、日本のメーカーがその礎を築いたのだ、という日本人のプライドも込みの話である。

 

どちらにしても、Keeleyは近年、結構うまくいっているメーカーのように見える。
言葉のあやかもしれないが、誤解を恐れずに言えば、最近ちょっと「盛り返してきている」メーカーだと思う。

そんなKeeleyの、日本では入手しづらいペダルを手に入れたという事で、嫌味ったらしく自慢したくてレビューを書くわけではない。

これは、僕にとっては運命的に、必然によって出会ったペダルだからこそ、所感を記しておくのである。

 

 

 

僕は過去に、Keeley Red Dirtについてのレビュー記事を書いたことがある。

それよりも前に、僕はKeeley MOD TS9 Baked Modについての記事も書いたことがある。

僕はオーバードライブについても何度も記事を書いている。
そして僕は、基本的にオーバードライブは「TS系」でいいんじゃないかと思っている方だ。

いわゆる普通のチューブスクリーマーでは、やっぱりもの足りないと感じるのだけれど、(とはいえOD9はほぼ完璧に近かった)、
チューブスクリーマーにもうひと工夫加えて、自分の用途に合うようにした「TS系」と言われるオーバードライブで、僕はだいたいのことはやれると思っている。

トランスペアレント系は合わないし、Klone系(ケンタ系)も合わないし、BB系とか、BD系とか、巷にあふれるBSとか、全部合わない。
チューブスクリーマーをちょっと自分好みにいじったやつでいい、という感じなのである。

 

そういった中で、個人の限られた予算と経験の中で試した中で、”Baked Mod”および”Red Dirt”は、「非常に良いもの」として印象に残り、そして手元にも残った。

(非常に良いものとして気に入ってはいるのだけれど、そうはいってもじゃあ実戦で使ってるかと言えば、それほど使ってないけどね。レコーディングでたまに使ったくらい。でも「普段家でギター弾く時」には、お気に入りなのよ)

Keeleyのペダルラインナップの中でも、2000年代に一世を風靡した頃はともかく、現代においては、これらの「初期Keeley」みたいな改造チューブスクリーマーは、特段に注目を集めない、目立たない存在だと思う。

しかし僕はこれらのKeeley流Tube Screamerはかなり好きで、自分の好みに合うと感じている。

それなりに「TS系」の旅をさすらい続けてきた結果つかんだ答えであるから、そこそこ確かな答えだと思う。

そしてこの”Red Nectar”は、Keeley流のTube Screamerである”Red Dirt”の最新の進化系である。
これは手に入れないわけにはいかない。

そう感じていた。

 

 

 

実のところ、インターネットを介して、このRed Nectarの情報は、今年の早い段階でキャッチしていた。

うーん、Guitar Center exclusive (専売)かぁ。
ツアーでアメリカ行ったら、ちょっと試してみたいな。

そう思っていた。

しかしツアーの過酷なスケジュールの中で、Guitar Centerに寄ってる暇なんて果たしてあるのか。
そして、もし寄ったとしても、エフェクターなんて買うお金があるのか。

僕らは潤沢な予算など持っていない。
生活もぎりぎりだ。
僕らはクリスチャンバンドであり、今回のツアーも、ファンの皆様、「ジーザスのためにロックする」「音楽を通じてキリストの愛を広める」「ヘヴィメタル宣教」という使命を信じてサポートしてくれるクリスチャンの皆様、そういった皆様のご支援で可能となっている。
そんな中で、ちょっといいエフェクターを買う予算などあるわけがない。

だから無理だろうな。そう思っていた。

 

 

そういえば、Keeleyのエフェクターと言えば、2年前のツアー。
2024年にアメリカ南部をツアーした時にも。
テキサス州オースティンのとある楽器屋で。
(オースティンはミュージシャンの町だから、楽器屋巡りくらいするのだ)
僕はKeeley Tone Workstationを中古で見つけたのだ。(これは、日本でもネットの中古市場でなら、たまに見かけることがある)

僕はそれを試奏し、おおおー、と思った。
一瞬、買ってしまおうかと思ったが、思いとどまった。
それは、オーバードライブの部分は結局Red Dirtと同じであるし、またセットになっているエフェクターの接続順が固定されていて、変更することができない設計だったからだ。

Keeley Tone Workstationは、すごいアイテムだと思う。
しかし、ちょっと不便なのだ。オーバードライブ、ブースター、コンプレッサー、これらの接続順の変更が可能であったら、まさに完璧で最強だっただろう。でも現実にはそれらの接続順は固定であり、なぜだかTS系オーバードライブは最後段に置かれているのだ。TS系なのに。

それにぶっちゃけたところ、僕はたぶんBB系オーバードライブ(1962)はあまり必要としないし、KATANAブースターも必要かどうか疑わしい。またエフェクター3連のデザインは、僕が足元に置いて使うにはちょっとcumbersomeでありawkwardだ。つまり、ちょっとでかすぎる。

そんなわけで、2024年の夏、僕はTone Workstationを見送った。

そんな経緯もあった上での、2026年夏、Red Nectarとの出会いだった。

 

 

Tone Workstationはちょっと不便で、でかすぎると思っていたけど、Keeley Ariaは良いかもしれないとずっと思っていた。

だが、Keeley Ariaは、オーバードライブ部分が、Red Dirtと必ずしも同じではないみたいな感じだ。少なくともLow Gainの方はなんか違うみたいな事が書いてあったように思う。

だからAriaにも手が出なかった。
(そもそも日本の楽器屋で見かけないし、試すチャンスもない)

そう思っていたところの、2026年春、Red Nectarの発表である。
これはAriaと似ているけれど、AriaをさらにRed Dirtの進化系として再デザインした「直系」のペダルではないか!!!
しかも真っ赤な色のデザインだ!!!(笑)
どう考えても僕のために作られたものである。笑

 

 

僕は、往年のKeeley ModのTS系、Mod Plus、Baked Mod、Red Dirtなど、高く評価している。
けれど、メインで使っているオーバードライブは別にあるので、それらは「たまに使う」程度だ。

けれども、オクラホマ州で作られたそれらのペダルの設計思想にはリスペクトを持っている。
オクラホマ州は、たぶんなんにもないところだ。
アメリカの田舎でなんにもないっていうのは、本当に物理的になんにもないってことだ。
最近、オクラホマ州出身のアメリカ人と親しくなったのだが、彼は「なんにもない」と言っていた。ロックについて唯一自慢できるのはFlaming Lipsくらいだそうだ。
そんななんにもない場所で作られたKeeley Pedalsに真のアメリカンテイストを期待するのは決してお門違いではないだろう。
まあ、大元の設計は日本だったりするんだけどね、オーバードライブとかって。どうせパーツとかはアジア各国だし。

僕は楽器、エレクトリックギターに関しては、圧倒的に日本製が良いと思っているけれど、もともと日本で設計開発されたはずのエフェクター関係については、わりとアメリカ製のものが気が利いていてちょうどいいものが多いように思うのはなんだか不思議なことだ。なぜだろうか。マーケットとか、カスタマイズ文化とか色々な理由がきっとあるのだろうけど、このへんは難しい話だね。

 

 

ともかくも、2026年夏。
そう思って、試すチャンスも、買うチャンスもないだろうと思っていたところ、そこにやっぱり「神の導き」があった。
特に今回のツアーにおいては、すべてにおいて見事に神の導きがあった。
こんなエフェクターひとつとってもそうだった。

ユタ州ソルトレイクシティでライブをやった時だった。
街の中にあるバイカーバー(貴重な体験な気がする)で演奏し、なかなか盛り上がった素晴らしいライブとなったが、いろんなお客さんが物販を買ってくれた中で、「ギフトカード」をくれたお客さんがいた。
「おい、お前ら最高だぜ。ツアー大変だろう。ガス代も高いからな。これを持っていけよ」と、300ドルのギフトカードをくれた。

日本ではあんまりないかもしれないが、アメリカだとこういう事、わりとちょくちょくあるように思う。知らない人がすごい助けてくれるみたいなやつ。経験ある人はわかると思う。

そしてそのライブの翌日!

その日は「完全オフ」の日だった。
どこかに行くとか、誰かに会うという予定もなく、移動日でもなく、たぶん24日のツアー日程の中で、それは唯一の「完全オフ」の日だった。

で、町に行こうという話になり、誰ともなく「楽器屋寄ろう」ってなった。

で、Salt Lake CityのGuitar Center。
それは、アメリカ自体が初めてだったKenshinくんにとっては、「初ギターセンター」である。(お店の前で写真撮った笑)

これね。

 

 

そんで、みんなで色々見て、必要なものを買ったりしたんだけど、エフェクターの売り場見たら、ばっちりあるじゃん、Red Nectar。さすがエクスクルーシブ(専売)。

で、試奏しましたよ。
試奏はギターセンターのレッスンルームを使えた。周囲を気にせず音が出せるし、気が利いてるね。
比較対象として、Warm AudioのTube Squealerを選んだ。一般的なTS系の「いいやつ」と比較すればわかりやすいだろうと思って。

Tube Squealerは、おもいっきり「TS」だったね。「ああ、チューブスクリーマーだ」って。チューブスクリーマーの、ちょっといいやつっていう感じだった。
808、9、10と切り替えができるモデルだけど、僕はなんだかんだいって「9」モードが一番使えると思ったな。いちばん普通じゃん、それ、って。つまらない解答だ。だからいちばんありふれた「定番」なのだ。歴史的にそうなのだから仕方ない。

 

で、Red Nectar。
おおおーっ、ってなった。
こっちの方が全然よかった。
素晴らしいサウンドだった。
つまりは、Tube Squealerが過去のクラシックの極上の再現だとすれば、Red Nectarはなんだか未来の音だった。(ゲルマニウム自体は古いテクノロジーだけど、デザインは新しい)

Red Nectarは、Red Dirtを元にしつつ、ゲルマニウムダイオードを使ったもの、という触れ込みだった。
果たしてゲルマニウムを使ったTS系が、どうなのかなー、と思ってたんだけど、音を出してみたら、全然好みだった。

しかもRed Dirtを使って気になっているポイントが、このRed Nectarでは改善されている。
こ、これは!!!
まさに理想どおりじゃないか。

これはもう、運命の出会いだ。
僕の「オーバードライブ探求の人生」その長い旅の中で、これは最大の啓示だ。
生涯に一度の事だと思った。Once in a lifetime opportunityだと思った。

で、財布を見たら、昨晩のライブでもらったギフトカードがあった。
このギフトカードで、お釣りが来るじゃん。そのお釣りはガソリン代に回せるじゃん。
ここまで、merchもばっちり売れて、予算的にはなんとかなりそうじゃん。

このギフトカードは運命だと思った。

そんなわけで、Salt Lake City UTにて、以前から気になっていたこのKeeley Red Nectarを手に入れる事ができたのでした。

ちゃんちゃん。
めでたしめでたし。

 

 

と、前置きがめちゃくちゃ長かったけれど、ここからが本題です。
なぜなら、これはあくまでエフェクターのレビュー記事なのだから。

 

そんなわけで、無事にツアーを終え、達成感と心地よい疲れと共に帰国し、そこからさっそく、このRed Nectarを試した。
じっくり試し、スタジオに持ち込み、家弾きの際にも色々比較検証して。

やはりこれは運命の出会いであり、素晴らしいペダルだと言える!!

 

 

 

ではレビュー行ってみよう。

まずはこのKeeley Red Nectar。
基本的な情報としては以下のようになる。

Keeleyが過去に行ってきたTube ScreamerのMOD(改造)、それらを元にして、新たに作られたもの。

Robert Keeleyが「往年のTS MOD」の後継にあたるペダルを出すのは久しぶり。

Red Nectarという名称からしても、Red Dirtの発展版であることは予想できる。

TS系をベースにしつつ、ゲルマニウムダイオードを使用して発展させたもの。

コンプレッサーとオーバードライブの2in1ペダルである。

Keeley Ariaの別バージョンのような位置付けであり、筐体のデザインもほぼ同じであり、裏蓋を開けると、基盤におもいっきり”ARIA”と書いてあるので、パーツとか基盤も同じものを流用しているように思われる。

コンプレッサー部分は、伝説的なKeeley Compressorを受け継いでいる。(操作系統も同じと思われる)

オーバードライブは、LOWとHIGHの2モードが切り替え可能。(Red Dirtと同じ)

オーバードライブとコンプレッサーの接続順は切り替えが可能である。Compressor>Overdriveも、Overdrive>Compressorも、どちらも可能。

Robert Keeleyによれば、このペダルは、Phishの”Chalk Dust Torture”におけるTrey Anastasioの「Tube ScreamerとROSS Compressorを使用したサウンド」にインスパイアされたものらしい。
(Red Nectarという名称、スイッチに付けられたBerzerker、Constictorという語句も、そこから来ているとのこと)

Guitar Center Exclusiveとして販売されている品であり、そのせいかどうかわからないが、ネット上の反応を見る限り「あんまり話題になっていない」

しかし、KeeleyによるTS系ペダルとしては、最新の進化形と言えるものであり、Keeleyのファンならば注目に値するものであると思われる。

 

 

そしてレビューであるが、まずは結論、そして要点をまとめておきたい。
(ここまで、長々と前振りを書いてきて、今更感はあるが、読む人のためにわかりやすくまとめておきたいのだ)

 

– Red Dirtにおいては、(少なくとも僕の持っている個体は)、Lo側はそれほど低音の削れない「太めの音」で、Hi側はトレブリーでより低音が削れる音だったが、このRed Nectarは、LOW側は「普通のTS並みのちょうどいい低音の削れ方」であり、HIGH側は「もう少し低音が充実した太いハイゲイン」である。ぶっちゃけ、どちらもちょうどいい。

– ゲルマニウムダイオードの音は、「スムーズであり、オーガニックであり、ナチュラルであり、やわらかい」といった印象。

– オーバードライブは、ナチュラルであり、コンプレッション感が少ないので、ダイナミクスの面では非常に優れている。普通のTSと比べれば、圧倒的にナチュラルで、レンジも広く、圧縮感がない。

– 倍音が豊富で、整ったスムーズな歪み方であり、ミッドが出るというよりは、サウンド全体が豊かに歪むといった印象。

– ゲルマニウムダイオードのキャラクターは「古くさい、いなたい」感じがする古典的なニュアンスが確かにあるが、ペダルの音自体はクリアでハイファイなので、むしろモダンな印象で使いやすい。「いなたい」と言っても、音はスムーズでスピード感がある。

– 素直な音なので、Red Dirtに感じられた「いかにもアメリカン」なニュアンスは薄れて、素直なぶんややジャパン寄りである。しかしコンプレッサーと組み合わせると、一気にKeeleyっぽさというか、アメリカンぽさが出てくる。

– 一般的なTSのように「ミッドが立つ」というよりは、全体にじゅわっと広がる歪み方。(これは、長所かもしれないし、欠点かもしれない)

– ゲルマニウムダイオードのキャラクターや、レンジの広さ、音のスムーズさも相まって、TS系をベースにしてはいるが、もはや「TSとは別物」と考えた方がいい次元にある。
(これは、Red Dirtがいかに高級TS系であっても「チューブスクリーマー」の範疇から出ていなかったのと対照的)

– 普通のTSと比較すると、たぶん「やわらかい音」。よく言えばナチュラル。悪く言えば「押しが弱い」「エッジに欠ける」部分がある。 >注: ゲインを上げていったらエッジが立ち、押し出しも強くなった。

– しかし、コンプレッサーと組み合わせる事で、「押し出し」「アタック感」「キャラクター」を付加する事ができる。コンプレッサーを使う方がむしろミッドレンジが出てくる。

– 音自体は非常にクリアでハイファイであり、レンジも広く、どんな高級ペダルと比較しても引けを取らない高品質という印象。

– かといってRed Dirtに共通するキャラクターは確かにそこにある。

– コンプレッサーと併用する事で、そのキャラクターはさらに強くなる。

– コンプレッサーはTONEコントロールやBLENDが付いているため、これをオーバードライブと組み合わせる事でかなり音のバリエーションが作れる。

– オーバードライブを単体で使い、要所でコンプレッサーをブースター代わりに使うといった「2段構え」の使い方ももちろんできるが、オーバードライブのキャラクターがそれほど強くないため、「オーバードライブ + コンプレッサー」でひとつのキャラクターを作るという使い方のほうがしっくりくる。(2in1で使い分けると考えるより、これでひとつの基本の音をつくるデバイスと考える方が近い)

– 僕はこれまでギターの音作りに(レコーディング時はともかく、足元のエフェクターとしては)コンプレッサーをあまり使ってこなかったが、このRed Nectarはコンプレッサーを積極的に使うことをユーザーに要求してくるデバイスだ。

– コンプレッサーは、SUSTAINをゼロにしてクリーンブースターのように使う事もできなくはないが、SUSTAINがゼロでもコンプレッサーのキャラクターはちょっと混じる。

– 素直なオーバードライブと、主張の強いコンプレッサーを組み合わせて音作りをするというコンセプトの製品であるが、逆に言えばナチュラル系ゆえに、オーバードライブ単体では音は必ずしも完成されていないという事である。そしてコンプを足しても、Phish的な「OD+コンプ」の音にはなるが、それはそれで「完成されたOD」とは違うものである。ならば、最初から「完成されたTS」を使う方がいいのではないか? そのような意見にたどり着いてもおかしくはない。

– コンプレッサーには、シングルコイルモードと、ハムバッカーモードの切り替えスイッチが付いている。これはリリースタイムを変更するものらしい。(いや、アタックタイムも変更しているのか?) 弾いてみた印象では、シングルコイルモードだとアタックが強調されてシャープな印象。ハムバッカーモードだとアタックは控えめでサステインの音の太さが強調される感じだ。言葉から連想されるイメージのまんま、「シングルっぽい音になる」「ハムっぽい音になる」と考えて良いようだ。
使用するギターやピックアップに必ずしも合わせる必要はなく、どちらがいいかは、ケースバイケースとしか言えない。僕はギターはハムバッカーがほとんどだが、アタックのキャラクターを重視する観点から、このスイッチはシングルコイルモードの方がむしろ気に入っている。

– コンプレッサーとオーバードライブの接続順についても、どちらがいいかはケースバイケースだ。考え方次第で、どちらの接続順でも、それぞれに使い道がある。

– オーバードライブについて、非常にナチュラルなLOW側も素晴らしいが、HIGH側は、「ハイゲイン・オーバードライブの傑作」と言っていいくらいに完成度が高い。ナチュラル、ウォーム、リッチ、パワフル。TS9素体のBaked Modは「低音出過ぎ」、Red DirtのHIはその逆に「低音削れ過ぎ」だったが、このRed NectarのHIGHは「ちょうどいい低音の出方」だ。これだよ、これ。やればできるじゃん(笑) これをずっと待っていたのよ。これはまさに「ゲインアップTS」の完成形だ。

– オーバードライブのLOW側は、ゲインをゼロ(もしくはほぼゼロ)にした際のぱりっとしたキャラクターが、BOSS SD-1に近いものがある。しかもSD-1よりも音が素直だ。これは評価できるポイントだ。SD-1特有のキャラクターがあまり好きでない僕にとって、これは「理想のSD-1」だ。(この事から、ゲルマニウムダイオードを使用しているという事だが、クリッピングは「非対称」かもしれないと思っている)

– オーバードライブのHIGH側は、かなりのゲイン量を持っている。残念ながらさすがに「ディストーションの音」にはならないが、コンプレッサーと組み合わせる事で、「ディストーションに近いところ」までは行けて、しかもそれは「結構使える」音である。さすがにジャズコをばりばり歪ませる事はできないかもしれないが、ほとんどのアンプは、この「ハイゲインオーバードライブ + コンプレッサー」の組み合わせによって「がっつり歪ませる」ことが出来るはずだ。ディストーションペダルがなくても、「最悪、これでなんとかなる」みたいには言える。

– Red Dirtにおいては、LOからHIに切り替える時に、「太くてボールド」から「シャープでトレブリー」に周波数特性がいきなり変わるので、切り替えて使うのは難しいと感じていたが、その点、このRed Nectarは、LOWとHIGHの切り替えにそれほど違和感がない。(HIGHにするとやや低音が強くなるが、それはむしろ用途的にちょうどいいのではないか??)

– OD + Compというコンセプト、いなたいようでモダンなサウンド、オーガニックでナチュラルと言えば聞こえはいいが、君はそれが本当に必要なのか、君はゲルマニウムの音が本当に欲しいのか、作れる音のバリエーションは広いが、その無限のニュアンスの広さが、かえって音作りの迷宮となる可能性がある。
その意味では、これは簡単なペダルではなく、間違いなく「難しいペダル」である。初心者には絶対におすすめしないやつである。

– 結局のところは、ナチュラルなODパートだけではなく、OD+Compのサウンドを好きになれるかどうか、その点にこのペダルの評価はかかっているように思う。僕は今のところ、可能性を感じている。

– と、ここまで書いて、「もっと積極的にコンプレッサー部分を使ってみよう」と思い、SustainとBlendを上げて Comp>ODの接続で音を作っていったら、普通に素晴らしくハリもコシもあるサウンドになった。Keeleyコンプはやはりナチュラルだ。違和感はあまりない。どうやらこれは単体OD以上の可能性があるようだ。

– OD部分が比較的薄味のコンプ感少なめのナチュラルな味付けになっているのは、やはりコンプと組み合わせて積極的に音作りがしやすいようにという理由なのだろう。

– つまり、「薄味だがオーガニックなゲルマニウムOD + ナチュラルかつ一本芯の通ったKeeley Comp = 単体ODを超えた最強のトーン・ファウンデーション・デバイス」という事だと思う。

– そして、OD部分単体に関しても、「DRIVE12時、LEVELも12時」みたいにしたら、音に硬さとエッジが出て、ぐっとハリもコシもある音になった。これは、ナチュラルでオーガニックなゲルマニウムの歪みという事で、普通のTS (Gainゼロ、Level全体)とは違った挙動、違った運用が可能だという事だと思う。どうもODのLEVELは12時くらいがラッキーゾーンな気がしてきた。

– 率直に言えば、現時点でおそらく僕はこのデバイスの可能性をまだ完全に掴んでおらず、CompとODの設定の組み合わせ次第でいくらでも可能性があるのだと思う。まだまだここから、いくらでも「理想のトーン」を追い込んでいけるという事だと思う。

– あとは、細かい点だけど、これはトゥルーバイパスだと思う。電源つないでなくてもバイパスで音が出たし、あと、インとアウトを間違えてつないだ時もオフで音が出たからね(笑)。あともうひとつ言うと、アダプタ駆動オンリーで、電池駆動はできないみたい。

– 裏面の蓋を開けたら基盤におもいっきり「ARIA」って書いてあったけど、怖いのでそれ以上は中は見てません。分解とかはしてません。だからオペアンプに何が載ってるかとか、確認してないです。

 

 

と、まあ、ぱっと要点を最低限だけ箇条書きにしようと思ったら、なんかこれで全部解説終わっちゃったじゃないの。

ま、いいか。

要点を箇条書きにしただけのつもりなんだけど、情報量多いね。
インターネット向きじゃないですよ。
これでも「ほんの一部」しか伝えてないわけだから、いかにインターネットで本当に大事なことなんて伝えられないかってことだ。
音作りは人生そのものだ、っていう文脈から説明するなら、人生を描いた大河小説を一本書かなくちゃいけないんだと思う。それで初めて「前提、経緯、視点、所感」を説明できる。

 

使い方が難しい点はあるけれど、素晴らしいペダルだと思います。Keeley Red Nectar。
少なくとも僕は好きだし、すごく未来への可能性を感じる。

家にある、他のスーパー高性能なTS系のペダルたちと弾き比べているけれど、「やっぱりこれがいいな」みたいになっているよ。Red Nectar。味もあるし、ナチュラルなのがいいんだよね。きっと当分の間は、家弾きのメインはこれになるだろう。
ライブやレコーディングで使うかどうかは、まだわからないけれど、でも可能性は感じるなあ。

あと、不思議な話だけど、このRed Nectarを手に入れて、やっと古いモデルであるRed Dirtを現場にもっと持ち出そうという気になったね。おかしな心理だけどね。

 

もうひとつ個人的な所感をメモしておくのであれば、ひとつ印象的だったのは、このRed Nectar、歪み方のニュアンスが、僕が10年来メインで愛用しているShoalsと非常に似ているんだよね。これはちょっと不思議だった。だから思ったね、ひょっとしてこのShoalsも、実はゲルマニウムダイオードを使っているんじゃないかって。場合によってはシリコンとゲルマニウムを組み合わせる事も出来るわけでしょう?
さらにこれは、ひょっとして非対称歪みだったんじゃないか、とも思ったんだ。僕はSD-1が苦手なこともあって、「非対称歪みは苦手」という先入観があるんだけど、実際には対称歪み(symmetric)と非対称歪み(asymmetric)を聴き分けるのは難しいし、ずっと「TSの発展系」だと思ってメインで使ってきたShoalsが実は非対称でした、なんて言ったら笑っちゃう話だね。わかんないけどね。詳しい人なら、中を覗けばわかるのかもしれないけど・・・

Shoalsはキャラクターも強いし、結構ローファイなところがあるので、家で弾くと「なんだこれは」って思う事があるんだけど、現場では結果が出てるし、「やっぱりこれだと自分の世界が表現できる」って感じなんだよね。
でも、さらに先も模索したいからね。

 

比較という話で言えば、赤いオーバードライブつながりで、僕はMaxonのOD808X extremeも何度かレコーディングで使用してきたけど、あのペダル(808X赤)は方向性は好きだったけど、いくつか不満があった。
このRed Nectarは、よく考えるとそのMaxon 808X赤とキャラクターは結構近い。クリアで明るい音、コンプ感の少ないナチュラルなキャラクター、TS系ベースだけど広めのレンジ。
でも、808X赤は低音が足りないのと、音のコシが足りないのが不満だった。だからこそ、音の方向性は好きだけど、メインで使うには至らなかった。
このRed Nectarはその弱点を克服している、ちょっとした上位互換のように僕は感じている。Red NectarはHIGHモードにすれば低音は十分すぎるほど出るし、音のコシに関してはコンプを組み合わせればいくらでも出るからね。そういえば昔、「808X赤」の後段にコンプを置いて使った事があったな・・・あれと同じことだね、Red Nectarは。

 

ペンシルベニアからMidwest、Heartlandをずっと旅して、長いドライブの果てにたどり着いたSalt Lake Cityで手に入れたアイテムという事もあって、このRed Nectarのサウンドは僕にとって、なんだかその旅路で見たアメリカのハートランドの広大な大地を連想させるものとなっている・・・

ちょっとしたロマンだけど、そのロマンをサウンドに昇華できるかどうか。
でもエレクトリックギターの本質は、そういったイマジネーションの中にあるからね。
そしてまた、ヘヴィメタルの本質もそこにある。

さて、どうかな。使いこなしていけるだろうか。

 

インターネットを通じて日本まで出荷してくれるところがあるかどうかはわからない。Reverbとかにも出品されてるみたいだけど、ちょっと高い気がするな。そこまでお金出して買う価値があるかと言われると、ちょっとわからないよ。
なんでもそうだけど、そこは「縁」次第だろうね。

でも僕は価値があると思った。
要はオーバードライブとコンプを組み合わせればいいんでしょう、って言う事も出来るんだけど、これはODのキャラクターやデバイス全体が、「OD+Comp」で使う用途に最適化されている気がする。

 

今のところ不満はないかな。
最初は「音はナチュラルだけどTS系オーバードライブにしては押し出しが弱いな」って思っていたけれど、DRIVEを上げる運用でいいって気付いて、さらにCompを積極的に使うセッティングを試したら、ぜんぜんそんなことないって思ったね。むしろ普通のオーバードライブで作れる領域をはるかに超えてる。

小さな不満があるとすれば、コンプのピックアップセレクターを切り替えるのに小さな工具とかが要るから、それがぱっと切り替えできたら現場で便利なのに、っていうくらいかな。

これはひょっとすると本当に、これまで使った中で最高のオーバードライブかもしれないって思えてきたよ。

たぶんこれは、Robert Keeleyさんからの、TS系オーバードライブのひとつの最終回答なんじゃないかな。それはOD単体じゃなくて、Comp+ODっていう身も蓋もない形の回答なんだけれど。それは決して、マーケットの消費者が喜ぶタイプの回答ではないかもしれないけれど、ぶっちゃけたところ現実的な「ひとつの最良の形」の提案なんだと思う。

 

 

てなわけで、もし興味があれば、アメリカに行った際に試してみてください。

さあー、せっかく良いものを手に入れたし、ばりばり弾くぞー。

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